心の拠り所。健さん逝去から10年~手帳の佇まい43
俳優高倉健さんの逝去から
この11月10日で10年が経つ。
ファン歴48年。小学生の頃からだ。
映画の中の健さん、
伝説として語り継がれる健さんの生き方に憧憬を抱き続けてきた。
健さんは亡くなる数年前、
「NHKプロフェッショナル」に出演、
その際に(遺作となった)映画「あなたへ」の台本を披露した。
その台本は、
茶色の革のジップ式のカバーに
入れられていた。
そのカバーの内側のポケットに、
数本のラインマーカーが備えている。
台本には数ヵ所の付箋が貼ってあり、
几帳面に丁寧に読み込んだ跡が判る。
そこに健さんの仕事への姿勢があった。
また、その台本を開いた場所に、
ある写真が貼ってあった。
東日本大震災の発生直後に、
その被災地で、歯を食いしばって
両手にペットボトルの水を持ち、
運ぶこんでいる少年の姿が映っている。
健さんはその少年の生命力、
運命に立ち向かう力に感銘したという。
この写真から自分も勇気を貰えると。
また、その台本には、
歌人の会津八一の詩
「あめつちに われひとりいて
たつごとき このさびしさを
きみは ほほえむ」
が貼られていた。
健さんにとっての、この台本は
僕らにとっての、手帳かもしれない。
僕は健さんの映画や著書、
関連する書籍から、
沢山の勇気と希望と生きる喜びを
授かってきた。
逝去から10年を機に、一昨日から
我がデイリーユースの手帳を、
健さんの台本にあやかり
茶色の革の手帳に変えた。
それはAshfordのドローイング。
十数年前、銀座伊東屋さんで購入したもの。当時、伊東屋さんは旧ビルで、
システム手帳売り場は、3階か4階のフロアの一番奥にあり、突き当たりの一面全面の棚に、ズラリと名品が並んでいた。
僕は店員さんに好みをお伝えし、
お薦めはどれですかと尋ねると、
彼女は言った
「お客さまならば、
このアシュフォードですかね。
ぬめ革を使って頑丈で、
かつ美しいです。
職人さんが丹念に造り上げたのです。」
タンニンなめしのぬめ革に
幾重にも色を染め上げた逸品。
確かに彼女の仰る通りで、
圧倒的な存在感。
僕は即決し、ネーム入れをお願いした。
僕も健さんのように
心の拠り所の言葉や写真を
システム手帳に入れている。
システム手帳は素晴らしい。
一年で終わりではないからだ。
ずっと、その言葉や写真を入れ、
ときに足したり、
一部の変えたり出来る。
革の経年変化を楽しめる。
幾多もの思い出の手触り。
誰にでも
心の拠り所にしたいことはある。
僕にとって、そのひとつが
健さんの存在だった。
健さん亡き後も魂は残る。
「往く道は精進にして
忍びて終わり悔いなし」
僕のアシュフォードの手帳には
高倉健さんの言葉集のリフィルが
常にある。
今日もお読みくださり
ありがとうございました。
沢山の有意義な思い出づくり、
祈念しております。