[日記] マテリアル
洋服において何を重視するのかというのは人ぞれぞれ。
デザインと素材を本来切り離して考えること自体がナンセンスであり、もちろんどちらも合わせて「洋服」なのだが個人的には素材というのは嘘をつかないと思っている。
良い素材というのは、どれだけシルエットが崩れてきてもなお魅力を放ち続ける。デザインをどれだけ取り繕っても3年、5年、10年と経てば、素材本来の力がその洋服の価値を大きく左右する気がしてならない。
自分が作ったパンツをここ数日履いている。
今のところ現段階でイメージ通りの仕上がりである。選んだ素材も申し分ない。そんなことをあれこれと考えていたら、ずいぶん前にとある建築家が私に言った言葉を思い出した。
「若手の時に作った建物を何十年と見続けるのが苦しくなる」
その言葉が今ではすごく理解できる。その時、できることを精一杯やっていても、この世に長く残るモノを生み出している以上、過去の自分の作品と対峙し続けなければいけない。いわば自分を自分で採点し続けることになる。
「満点の作品だけを作り続けられる人なんていない」というのは頭で分かっていても、穏やかな気持ちではいられないこともあるだろう。
建築ほどではないが、長く使って欲しい洋服を作っている以上、これから私にもそういうことが増えていくのだろう。
私が洋服を作る上で素材を重視しているのも未来の自分が後悔しないような予防線なのかもしれない。
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