#12 憧れの芸術家②-トーマス・トウェイツ-
前回に引き続き、好きな芸術家(アーティスト)について書こうと思います。また、そこから私にとっての、理想の作家像を少しずつ考えてみたいと思います。
全4回で各作家さんの紹介のあとに、自身の感想やエピソードを添えて書いてみます。
今回は「トーマス・トウェイツ」さん。
・トーマス・トウェイツさんについて
私がトーマス・トウェイツさんについて知ったのは、大学で現代作家についての講義を受けていたときでした。誰もがなんとなく感じたり思っていること、ここでは動物なりたいなーという突発的かつ衝動的感情に対して、論理的に順序立てて向き合っているところが関心を引きました。誰もが一度は考えたり感じているのに、誰もまだ実行していないことをしてる!と。なので「人間をお休みしてヤギになった結果」というタイトルはすっと私の心に入ってきました。
またはじめは象になろうとしていたけども、途中シャーマンに会ってヤギになるところは笑えました。自分に合ったものというのは自分自身の頭の中で考えているだけでは分からなくて、案外全くの第三者のほうがその人にしっくりくる答えをみつけられるのかもしれないと思いました。それは、シャーマンとは少し違いますが、占い師というのが今も存在している所以なのかもしれません。
元々ブログで発信していた言葉が、本になったということもあり、文体が馴染みやすく読みやすかったです。またイグノーベル賞を受賞していることもあって、専門的な分野についての記述も多く、作家の頭のなかがとてもクリアーで賢く、絵描きタイプではないなとも思いました。私の勝手な偏見ですが、絵描きタイプの人は自分の世界観があって、なかなかその世界観抜きに考えたり見ることが、難しいからです。それに対してトーマス・トウェイツさんはヤギにたりたい!それだけを持って淡々と専門家から専門家へ渡って調査していく姿はとてもかっこよかったです。芸術家(アーティスト)もこういう事前調査というかリサーチがあるのとないのでは、鑑賞するときの作品に対しての気持ちの深さが全然違うなと改めて思いました。
事前調査、リサーチについていえば、私の大学で空間造形という研究室があって、その教授が、社会彫刻概念を生み出したヨーゼフ・ボイスが好きで、それについて講義をしていたのを思い出します。彫刻とよんでいるのですが、実際に木を彫刻するだけではなくて、パフォーマンスアートとして観ている人に訴えかけるというものでした。
「芸術」とは、社会的な高い目的に向かって創造性を発揮することであり、絵画や建築だけでなく、教育や政治、科学、哲学、経済学といった社会の構造を変えるさまざまな分野も「芸術」なのだ、と。またボイスは「社会秩序を彫刻のように形作ることが、私の、そして芸術の使命である」と述べていました。
その教授の授業で制作した作品が「rice」でした。どういう課題だったかは忘れてしまったのですが、それぞれが食べ物と向き合って、それを題材にして一つ作品をつくるというものでした。その後、その題材について参加した学生同士が意見を述べ合うという授業でした。そこでは教授が「作品は誰かへの贈り物だと思ったらいい」と言っていたことが印象的でした。
その言葉は、昔兄に言われた言葉と少し似ていました。「いまこの瞬間に、科学者が新しい細胞をみつけたり、医療従事者が人を助けているようなことを、描くことで、なにかできなくてはいけない」と。はじめのきっかけが自分のためだったとしても、いつかは自分がしてもらったことを、する立場になるんだと。科学と医療、アートが別のものではなくてそれらを横断して制作するのもひとつですが、音楽を聞いて励まさせるように、アートで人を前向きな気持ちにすることも大切だと。
トーマス・トウェイツさんの制作のした方というかリサーチの徹底ぶりは、私にとっての理想で、私自身とは制作のアプローチとは少し違うなあと思いました。私は、どちらかというと描いていって、そこから少しずつ自覚していくタイプで、はじめからコンセプトやテーマ、段取りを決めていくことは難しいな、と。でもトーマス・トウェイツさんのように日々ブログを書くことはできますので、トウェイツさんに負けない世界観で沢山制作して、少しずつ自分のことを書いて知っていけたらいいなと思っています。
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