〈季節の短歌〉なみうつきもち 秋・函館
春夏秋冬、それぞれ異なる街の風景を詠んだ連作短歌をお届けします。
季節と街に波打つ気持ちを、31音の響きに込めて。
(著者/人子一人)
「港町の幻」収録短歌一覧
エンジンの熱に波打つアスファルト 滑走路まで海は続いて
ラッピング市電が錆びたレール駆け函館どつく前まで揺れる
海風は八幡坂を駆け上がり鐘を鳴らせば鳩が飛び立つ
墓地前の開けた海に降りそそぎ僕らを隔つ長い秋雨
俘虜の見た海とカフェから君の見る海が同じであるということ
函館の夜景にくびれ作り出す底の知れない海の妖しさ
海畏れ真白い漁り火を灯す丑三つ時の漁船は遠く
枯草に風立つ刹那 廃船はいつかの漁の幻を見る
短歌・写真:人子一人(ひとこ・ひとり)
2000年、東京都生まれ。日本経済新聞、毎日新聞歌壇などに掲載。連作に「新宿海底」(SLOW WAVES issue01)、「遠泳」(SLOW WAVES issue02)。
「なみうつきもち」は今回で最後です。一年間お読みいただき、ありがとうございました。
WEBに4回載せただけでは終わりません。今後どんな形になっていくか、今後SNSでお知らせしていきます。どうかお楽しみに!
SLOW WAVES 海の文芸誌
https://lit.link/namiuchigiwapublishing
初回アップ日:2024年12月4日(水)
責任編集:今枝孝之