信也さんの朝比奈玉露
日本三大玉露生産地である静岡県朝比奈にて、「朝比奈玉露」を生産している方へのインタビュー第四弾。
多くの方に朝比奈玉露のことを知ってもらい、どのような想いでお茶づくりをされているのかを伝える手伝いができれば嬉しいです。ぜひ、最後までご覧ください!
なお今回ご紹介する皆さんは、全て手摘みで収穫した茶葉を自分の工場で揉むことで、最高級の玉露をつくる生産者さんです。
生産者紹介
インタビュー第四弾は、前島 信也さんです。
18歳から玉露を作り、なんと57年間も経つ信也さん。品評会についてや、生産過程の詳しいお話などを色々と教えていただきました!
様々な品評会で受賞経験を持ち、朝比奈玉露の生産者さんの中で一番多くの品種を育てていらっしゃいます。また日本茶を6品種も育てている他にも、茶摘みの時期以外はしいたけや枝豆作りなど幅広く農業に携わられています。そんな長年の経験から、お茶に対する想いに限らず専門的なお話も聴くことができました。
信也さんのこだわり
57年間も玉露作りに携わっていると聞くと、大ベテランで自分なりのこだわりをいくつも持っているのかと思いました。
しかし、信也さんはこだわりがないのがこだわりだといいます。
この言葉の真意をみなさんはどう考えますか?奥深い言葉なだけに、考えさせられる一言でした。
信也さんによると、「全て玉露づくりがこだわりだから」です。当たり前のことを当たり前に生産しているからこそ、こだわりがないのがこだわりだと伝えてくださいました。とても腑に落ちる素敵な考え方を伺うことができました。
信也さんは、その後意識していることや気を配っていることを具体的に考えてお話してくれました。
化成配合の肥料は一切使わない(土の保水力や保肥力が損なわれるため)
蒸し(生葉を見たり香りで判断したりする)
形状(丁寧に茶葉を揉む)
肥料(農薬は少なく)
特に誰でも「蒸し」が一番難しいのではないか、とのこと。57年やっていても未だに難しいそうです。
信也さんにとって楽しいこと
作っていて楽しいことは、まずは高く売れること。そして、茶摘みの時期に摘み子さんが来てワイワイできることが楽しいとおっしゃっていました。
①高く売れる
玉露は、摘む時期が他のお茶と異なり年に一度きりであったり、覆いを掛ける手間がかかったりと高級茶ならではの一手間が多いです。作るのにとても苦労しても、玉露の認知度や消費量は少なく、そのため玉露の市場価格がその頑張りに見合っていないという問題があります。ペットボトル茶の浸透も相まって、茶葉の価格が全体的に下がってきています。
茶葉が高く売れるということは、自分のお茶に高く売れる価値があるということ。自分の玉露づくりやしてきたことが認められるということで、生産者の方にとって喜びややりがいにつながります。
②摘み子さんたちとワイワイ
朝比奈の玉露は、手摘みの割合がとても高いです。その分、人手が必要となるため一日20人ほどの摘み子さんが来るそう。一年に一度の茶摘みの時期は、とても忙しいですが摘み子さんとして来てくれる人たちと話したり一緒に作業できるのは賑やかで楽しい瞬間だそうです。
信也さんの想い
目指すはやはり、品評会で上位を取ることがモチベーションになると信也さんは言います。かつては、朝比奈玉露が品評会で常に賞を取っていた時期もありますがここ30年程は少しその流れが遠のいているそうです。品評会で賞を取れれば、日頃から助成などの支援してくれる行政へのお返しになる。そのためにも品評会に出し続けたいと信也さんはお話しくれました。
また、昔は玉露づくりが盛んに行われていた朝比奈ですが今は後継者もほとんどいないのが現状です。そんな朝比奈玉露を残していきたい、来てくれた人に作ってもらいたい。もし朝比奈玉露がなくなってしまったら、昔の先人に申し訳ない。 舌に合うか合わないかでなく、まずは玉露を飲んでもらいたいといいます。
煎茶や抹茶とは一味違う日本茶の玉露。飲んでからでないと、自分に合うかもわかりません。より多くの人が朝比奈玉露を知り、実際に飲み、広まっていくことを願います。
最後に
人生の大半で玉露と関わってきた信也さんからは、常に真っ直ぐお茶づくりに向き合い続けてきた印象を受けました。そして特に、品評会で入賞することが行政へのお返しになるとの言葉が心に残りました。朝比奈玉露の勢いが再び増せば、地元の方を始めとしてより一層関心を持ち、飲む人が増えることでしょう。
まずは飲んでくれる人を増やすこと、本インタビュー記事もそのお手伝いができていることを願います。ご一読ありがとうございます。