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神田須田町界隈

スローリー余話
街の”なりたち”#12

江戸時代には徳川将軍が上野寛永寺に参拝する御成道が近く、さらに明治時代には新宿から延伸した中央線が開通し「万世橋駅」もあった『神田須田町』は、1971(昭和46)まで都電「須田町駅」もありかつては交通の要所だったのです。現在はさいたま市にある「鉄道博物館」も2006(平成18)年まで「交通博物館」としてこの街にありました。

1937(昭和7)年竣工の『いせ源』の母屋は千代田区景観まちづくり重要物件に指定されている

さらに奇跡的に東京大空襲の戦災を免れた街として有名で、弊誌(2023年7月発売『東京Slowly² vol.1』)でも紹介した『あんこう鍋 いせ源』や鳥すきやきの専門店『ぼたん』は昭和初期に建築された趣ある木造建築で老舗の美味しさを提供しています。最近ではNHK朝の連続ドラマ小説『虎に翼』に登場する甘味処「竹もと」のモデルとなった『竹むら』もありますが、この街には”是非たぐって”いただきたい蕎麦があります。
(以下、2023年7月発売『東京Slowly² vol.1』より)

“美味しかった、また来るよ”
この一言が六代目の魂を揺さぶる

神田須田町
神田まつや

『神田まつや』は開店前から行列が絶えない人気店。気取らず飾らず流行に流されることなく、蕎麦屋としての気品を保ち、メニューにはカレー南蛮もあれば冷やしたぬき、丼など様々な品がある。この店には、日常に欠かせない美味しさが詰まっている。黄昏時、常温の日本酒とともに『板わさ』や『焼き鳥』を味わい、最後は『もりそば』で締めくくるという日常が楽しめた。コロナ禍によって一時それが失われてしまった。しかし、日常を取り戻しつつある今、この一枚を食べることがどれほど贅沢なことかを再認識する。

名物『焼鳥』

夫婦と思われるほろ酔いのお客さんが、「美味しかった、また来るよ」と言って満足気な笑顔でお店を出て行った。そのことを六代目の小高孝之さんに伝えると、元々近所の常連さんで、コロナ禍になり北海道に引っ越したお客さんだったという。小高さんは、「引っ越してもまた来てくれるなんて本当に嬉しいですよ」と感謝の気持ちを述べた。『神田まつや』のつゆは抜群に美味しく、そばの品質も製粉所の協力を得て良い物を日々追求している。素材が変わった今と昔を比較しても、同じレシピでは「まつや」の美味しさは表現できない。それでも、「神田まつや」の味を引き継ぎ、「美味しさ」に情熱を持って取り組む四代目の真摯な姿勢は、この店の象徴である。
昨年は4年ぶりの神田祭り。そして街に賑わいが戻った今『神田まつや』は満席が当たり前。しかし、普段なら敬遠しがちな行列も苦にならない。「美味しかった、また来るよ」この一言を伝えるために。

神田まつや
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町1-13
tel: 03-3251-1556
営業時間:月~金11:00〜20:30(L.O.20:00) 土・祝 11:00~19:30(L.O.19:00)
定休日:日曜

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