銀座 その弐(旧木挽町)
スローリー余話
街の”なりたち”#7
現在の銀座一丁目から八丁目の住居表示になったのは昭和の東京五輪後にあった町名変更によるものです。関東大震災以前は「木挽町」だった「銀座東」(歌舞伎座や新橋演舞場のあるあたり)と「元数寄屋町」(東急PLAZAあたり)や「山下町」「山城町」(銀座コリドー街あたり)などの「銀座西」が1965(昭和40)年に統合され現在の表記になりました。当時は”大銀座の誕生”と言われ1968(昭和43)年には「明治百年」を記念して「大銀座まつり」もはじまり1999年まで続いたのです。
しかし(行政的な)町名変更後も「木挽町」や「尾張町」などの呼称は、特に地元ならではの矜持や郷愁もあり引き継がれ、歌舞伎座や新橋演舞場があった「木挽町」は芝居を観に行くことを「木挽町に行ってくる」などと言われていたそうです。
そして今でも歌舞伎座と新橋演舞場の楽屋への「出前」や演者への「差し入れ」に重宝される美味しいものが、この街(旧木挽町)にはあるのです。
(2023年10月発売『東京Slowly² vol.2』より)
世代や国籍を超えて
愛される美味しさ
銀座四丁目
喫茶YOU
大阪万博が開かれた1970(昭和45)年創業。当初は喫茶とサンドウィッチのお店としてスタートしたがチェーン店のコーヒーショップが勃興した2000年頃から『オムライス』や『ナポリタン』などのお食事のメニューを始めたという。一番人気はプルプルのたまごが象徴的な『オムライス』。オムレツは脂肪分の異なる生クリームを使いコクのある風味を演出。これを熟練の技で一気に混ぜて焼き上げるとフワフワの仕上がりに。ケチャップライスはベーコンと玉葱、そしてブラックペッパーで軽めにすることによって絶妙なバランスとなり、さらに国産トマトのサッパリとしたケチャップが加わることで優しい味わいで飽きのこない美味しさになっている。
歌舞伎座の隣という立地から、お芝居関係の常連さんや観劇に来られたお客さまが多くまるで「劇場の喫茶室」のような様で高齢のお客様が多かったという。しかし最近はSNSで『オムライス』や『クリームソーダ』などの画像が拡散して、開店前から若い女性たちの行列が絶えない。その人気はもちろん海外にも広がり国籍を問わず多くの顧客が『オムライス』や『オムレツサンド』などの名物料理を愉しんでいる。「この5年くらいで、すっかりお客様の年齢構成が変わりました」と話す店長の鈴木さん。「昔からの常連さんが今日は並ばずに入れてラッキー」という方もいるという。世代や国籍に関係なく愛される、まさにこの美味しさは皆のものだ。
喫茶 YOU
〒104-0061 東京都中央区銀座4-13-17
03-6226-0482
営業時間:月-金11:00-16:00(L.O.)土11:00-15:30(L.O.)
定休日:日祝
手作りゆえの“売切御免”
銀座三丁目
チョウシ屋
多くの芸能人に人気のお惣菜とサンドイッチの有名店『チョウシ屋』は、この界隈を「京橋区木挽町」といった1927(昭和2)年の創業した精肉店。当時、コロッケは家庭料理として普及していた時代にじゃがいもと挽肉を使った『ポテトコロッケ』をお肉屋さんのお惣菜として販売し一躍人気に。現在も創業以来のレシピを忠実に守って作られている。『ちょうし屋』のコロッケは、揚げたてはもちろんのこと時間が経っても美味しい逸品だ。毎日早朝からじゃがいもを蒸し手作りされるコロッケは忘れかけていた記憶を呼び戻す。お惣菜としても人気だが、食パンもしくはコッペパンを選べる『コロッケパン』は近隣で働く人のみならず場所柄、楽屋への差し入れなどにも使われる人気商品だ。最近テレビ番組で絶賛された『ハムカツパン』とともに銀座土産として買い求める顧客も多い。お店は三代目の若旦那と二代目の女将さんのツーオペレーション。閉店は午後6時だが、ほぼ毎日閉店前には完売する食品ロスとは無縁の老舗。「事前に電話で予約する」その手間も厭わない美味しさだ。
チョウシ屋
〒104-0061 東京都中央区銀座3-11-6
03-3541-2982
営業時間:火-金11:00-14:00 16:00-18:00
(売り切れ次第終了)
定休日:土・日・祝・月