湯島天神下界隈
スローリー余話
街の”なりたち”#43
”学問の神様”として知られる菅原道真公を祀った”湯島の天神さま”こと『湯島天満宮』は458年に雄略天皇の頃に創建されその後、南北朝の時代1355(正平11)年に菅原道真公が合祀されたと言われています。江戸期以降は江戸・東京の天神信仰の中心となり、今日も初春の梅の季節には受験生など”学問成就”願う人々で賑わっています。
”天神下”あたりは昭和の中頃1960年前後まで東京でも指折りの花街としても有名でした。そんな”天神下”には鰻に真摯に向き合い探求を続ける若主人が営む名店があります。(以下、2023年7月発売『東京Slowly² vol.1』より)
“学問の神様”の近くで営む
三代目は“鰻を愛する探究者”
上野・湯島
うなぎ割烹 ゆしま小福
“学問の神様”として有名な湯島天神の男坂下。故5代目柳家小さん師匠が自らの丼を持って日参したという「ゆしま小福」。今年で創業78年。現在は三代目・小暮貴生さんが先代からの味を引き継いでいる。3年前、長年パートナーを組んでいた職人さんが引退したことを契機に、活鰻の割きから串打ち、蒸して焼きまでをご主人1人で担っている。「ひとりで全ての仕事をすることによって分かってきたことがあるんです」と語るご主人。一品一品料理ごと、蒸し時間や焼き方を変え、お客様に完璧な状態でお出しする努力を日々続けていると言う。
小学生の頃から店の手伝いをさせられていたご主人。「中学の時、忙しいさなか父がいきなり『焼いてみるか』と白焼きを焼かせてくれた。ものすごく熱かったのを覚えているあの時に3代目当主になろう」と子供心に思ったそうだ。鰻の仕入れ環境が年々厳しくなるなかで「初代 そして2代目と歴史をつないでくれたことにへの感謝と『小福』を大事にしてくれるお客さまに感謝して、毎日真剣勝負で丁寧な仕事をしたい」と語る。
その言葉通り、うなぎに箸をつけた瞬間にわかる肉厚の弾力、口に運べばふんわりととろける食感、そして鰻の味を引き立てすっきりとした甘辛のタレ、その全てにご主人の丁寧な仕事ぶりを堪能できた。つねに鰻に向き合い美味しさを探求する、3代目は妥協を許さない「探求者」のような孤高の職人だった。
東京都文京区湯島3-36-5
電話:03-3831-7983
営業時間:火~金11:30~14:00(L.O.13:30)
土11:30~14:30(L.O.14:00)
月~金17:00~21:00(L.O.19:30)
定休:日曜・祝日 祝日明けの昼