ワインコルクの正体
こんにちは。フィンランドで森の研究・仕事をしています、Ryo(@Slowland)です。
ワインの蓋として僕たちが目にする「コルク」の作り方を知っていますか?
その作り方は、実にシンプルで意外かもしれません。
発泡スチロールに似ていて、なんだか合成樹脂素材っぽい。
削るとパラパラにもなるから、木屑をのりで固めてるのかな?
なんて思う人もいるかもしれません。
でも実は、その素材自体はなんの加工もしていなくて、
「コルク」はもうすでに木の中にあるんです。
コルク栓ができるまで
コルクの作り方を見ていきましょう。
まず、(1)木の樹皮を剥がします。
"木" と言っても、どの木でも良いわけではありません。
「コルクガシ」と呼ばれるこの木は地中海性気候の元で育つため、ポルトガル・スペインを中心に地中海に面したヨーロッパ・アフリカの国で生育し、太陽光をたっぷりと浴びて分厚い樹皮を身につけます。
これらの地域では、農業などと同じでもちろんコルクガシを商用に "栽培" しているので、収穫の時期に下の写真のように、一気にコルクガシの樹皮を剥がし取っていきます。
あとは、(2)剥がした樹皮を工場でコルクの形にくり抜きます。
樹皮の弾性を増すための「高温蒸気処理」が間に挟まりますが、
基本的には「木から取って、くり抜く」だけ。
これで完成。
樹皮丸ごと利用
ここまでの「コルク栓」くり抜き作業が終わると、切り抜けなかった部分が残りますが、この残材も余すことなく利用されています。
メッセージボードとして使うコルクボードや、コースターなど、
インテリア用途での利用をみなさんも目にするのでは。
これらは一度粉砕してから成型加工を行います。
木に由来しているので、コルク素材は部屋に暖かみを演出します。
他にも、そのおしゃれ感を取り入れて
「ハイヒールのヒール部分」
その弾力性を利用して
「野球の硬式球の芯」
「バトミントンシャトルの先端」
など "地中海に生えた木の皮" はあらゆる所で役に立っているんですね。
200年生きてCO2を吸い続ける
コルクはかなりハイレベルなエコ素材。
コルクガシの木は、なんと150~250年生きます。
樹齢約25年で1度目の樹皮の剥ぎ取りが行われ、
トカゲのシッポのようにその後も樹皮は生まれ変わり続けて、
約10年スパンで、この剥ぎ取りが繰り返されます。
その生涯を通してコルクガシの木は12回以上、この仕事をやってのけるといいます。
"長期間生きて樹皮が生育し続ける" ということは、
つまり "木として主要なCO2の吸収源であり続ける" ということです。
木も人間と同じで、いわゆる "成長期" にモリモリCO2を食べます。
空気中のCO2を吸って、Cを体(木)につけて、要らないO2を出す。
伐採でこの「カーボンサイクル」を回す場合と違って、
樹皮だけ剥ぎ取るコルクガシの場合、
ものすごく簡単に表現するなら、
成長期を100年以上延長しているようなものなのです。
今度ワインを飲む時は、ポルトガルのコルクガシ農家さん達に想いを馳せてみてください。
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