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夏を刈る

毎年8月の処暑を過ぎたあたりで
地元の田んぼの稲が刈り取られる。
枯れ草の上で
猫が気持ちよさそうに横たわる。

稲が刈られると
夏が終わる。 
そんな気がする。

今年は我が家も
バケツ稲を育てている。
まだ刈り取っていないが、
来週には収穫時期を迎える。

夏の終わりには
台風がやってくる。
今回は歴代最大級の
台風10号(サンサン/柵柵)が
鹿児島、九州で猛威を奮っている。
関東平野はどうなるのだろうか。
それを見越してか、
大慌てで稲が刈り取られていた。

いろいろ、備えておく。
幸い米は、予備がある。
10月には新米が届くよう
予約しておいた。

母の74歳の誕生日。
まだ1週間ほど先なのだが
前倒しでゆっくりと和食レストランへ。
歳を重ねるたびに
実感が沸かないような
不思議なキモチだと母が言う。

何で、今ここにいるんだろう?
って思うのよ。

そう。
母は宮古島から関東へ
パスポートを使ってやってきた。

振り返れば、なんで?って思うけど、
その時はそれがベストだったんだよ。
そう父が言った。

私は
お母さんが宮古島にいたら
私はここにいなかったんだよ。
来てくれて良かったよ。
と伝えた。

母も
お父さんと会えて良かったって
思ってるよ
と話してくれた。

つい先日、
両親はクーラーで夏風邪をひいたらしく
かなり体力を消耗したらしい。
時を同じくして義理の両親も
同じく夏風邪で絶食状態だったそうだ。

連日の暑さが
台風で少し収まってくれている。

私達夫婦は
どうにか風邪をこじらすことなく
(若干の咳喘息を夫が患うも)
稲刈りと共に夏を一段落させた。

田んぼで寛ぐ猫たちも、
今年は暑さにかなり体力を奪われ
あちこちで液体のように伸びていた。
(幸い地域猫として面倒をみる人がいて
日々の健康もどうにか保たれている)

今年の夏は
道端で倒れそうな人に3人遭遇した。
訪問先でグッタリしてる人も多く、
働き手を含め自宅で事切れたひともいた。
災害級の暑さに、
母のコトバが私の中にも響く。

なんで今、ここにいるんだろう?
たまたま運良く生かされているに過ぎない。

ランチの帰りに、
近くに祖父母のお墓があると
様子を見に車で立ち寄った。
花は、なかった。
兄弟が来てないかを確認したかったようだが
この夏にお墓になんかお参りしたら
あの世に呼ばれちゃうよ!と私は苦笑した。

ここに、
私はいません。

今ここに、
私は生きてます。

台風の尻尾が
時々豪雨をもたらす。
両親を家まで送り届けたところで
ちょうど雨が降ってきた。

台風が
夏を刈り取っていくようだ。
ちょうど8月が終わる頃
優しい風にと共に
秋がやってくるのだろうか。



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