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熊野で切迫早産になった話

自分になじむ土地

人は誰でも、ここなら住めるという土地があると思う。
積極的に住みたい!というよりは、
ここに住むことは自然にできると感じる場所。

切迫早産で入院

第二子を妊娠していた夏
臨月に差し掛かる頃に
和歌山県の新宮あたりに旅行することになった。
その辺りが出身の友達がいて、
家族ぐるみで旅行に行くことになったのだ。

私は臨月に差し掛かる時期なので
さすがに旅行はやめておこうかと思ったたけれど、
まぁ大丈夫だろうということになり
夏の暑い時期に夫と2歳の長男と共に和歌山へ旅立った。

熊野あたりの海は泳げる場所だとしても
「海だぁ!いえーい!」
みたいな気持ちにはならず
神を感じるというか、荘厳な雰囲気がある。
ナンパが似合わない海。少しこわいような。

和歌山の太地町は時々くじら漁業のことが
ニュースなどで取り上げられるので、
問題視している人もいるかもしれない。

私はくじらやイルカが大好きなので、
太地町のくじら博物館でイルカやくじらと
触れ合うのも大好きでそれも楽しみだった。

くじらのいる海で一緒に泳げるという海水浴場へ行った。
友人家族と一緒にその海へ行き
さすがに泳ぐことはできないので
遠くのほうで泳いでいる夫と長男を眺めていると
真夏の太陽のせいか、臨月の大きいお腹のせいか
くらくらとしてきた。

その時。
股に「なんか出た」違和感を感じ
いやな予感がしつつ、ふらふらとトイレへ。
トイレで見てみると
けっこう多めに出血している。

まずい。

妊娠中に出血する=赤ちゃんがあぶない

とりあえず必死でもと来た場所に戻り
夫たちが陸に上がってきた途端
薄れゆく意識。
「あぁ、これって熱中症なのかなぁ…」
と朦朧とした意識の中で考えつつ
夫が意外とうろたえているのを
「めずらしいな」と思いながら
救急車に乗せられた。

地元の病院の産婦人科に救急で運ばれ、診察。
けっこう出血しているし、
お腹もかなり張っているということで
緊急入院することになった。

旅行中にまさかの入院。
診断は切迫早産。

旅行中なので、何の用意もない。
本当に非常事態だった。

家族や友人に助けてもらい、入院が開始され
なんとか早く退院できるようベッドでひたすら寝る日々。

でも、私は思った。
窓の外には熊野の山々が見え、看護師さんたちは気さくで優しいし、
アイス枕をタオルで手作りしたカバーに入れて、毎日交換してくれる。
動かなくて済むように、病院関係者のお子さんが使っていたであろう
ちびまる子ちゃんの水筒に毎日お茶をいれてくれる。

小さな、でも患者が少しでも快適に過ごせるよう工夫してくれる。
なんだかとっても居心地がいいのだ。

「わたし、ここなら住めるな」
と思った。

これが窓から都会のビルしか見えない、灰色の空しか見えない病院だったら
切迫早産という心配で押し潰されていたかもしれない。

でも、ここは窓から山々が見えて、表面的ではない
人間の本質を見るような人々がいる。

「いつか熊野に住みたい」
と思った。

その後、無事に退院し、本来の出産予定の地へ向かうこともできた。
本当に周りの方に感謝しかない体験だった。


この土地なら住める。
そう思える場所は意外と少ない。
そう思える土地は、何かしら縁のある土地なのだろう。

私の場合はドイツと熊野でそう感じた。

これらの共通点は…

那智(ナチ)、か。


お後がよろしいようで!

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