ハーマン・メルヴィル『バートルビー』について
ちょっとでも本や映画が好きだったら、ほとんどの人は心の支えとなっている作品があると思う。ぼくにとって、ハーマン・メルヴィルの『バートルビー』はそれである。道から少しでも外れて不安に思ったとき、『バートルビー』はいつも考える方向を示してくれる。
少し『バートルビー』の内容を説明すると、ウォール街の一角の法律事務所で雇われた「バートルビー」という名の青年の話である。最初は普通に仕事をしていたが、突然「しないほうがいいのですが」と言い何もしなくなり、最後は生命を失ってしまうのだ。