声を出すトレーニング③:日本語のシャドーイング
皆さんこんにちは。
手話通訳士の自習室、室長です。
この記事は「声を出すトレーニング」シリーズ最終回、
「日本語のシャドーイング」です。
日本語のシャドーイング
シャドーイングとは、聞いた言葉を、
文字を見ずにそのままマネして繰り返すことです。
準備
私は、スマホを使い、
Podcast(ポッドキャスト)というネットラジオアプリで
題材を探して聞いていました。
音声を聞きながら声を出すので、
自分の声が邪魔で聞き取れないことがあります。
イヤホンがあると便利です。
題材
くりかえし聞ける題材なら何でも良いです。
筆記試験で時事問題も出るので、
私は時事の話題を選んでいました。
時間は、あまり長いと集中力がもちません。
5分〜10分程度の短いもので練習しています。
長い題材を選んでも、途中で止めれば大丈夫ですが、
短い題材だと繰り返して聞きやすいです。
何人かのトークではなく、1人で話しているもので、
聞いていて気持ちいい題材を選ぶと良いと思います。
私が受験した年に使っていたのは、
Podcastの「荻上チキ Session22」という番組。
その中の「デイリーニュースセッション」という
ニュースを読み上げるコーナーを
シャドーイングしていました。
落ち着いた女性の声で、
少しゆっくり目のアナウンスが良かったです。
荻上チキのSession22
NHKニュースも5分程度でシャドーイングしやすいです。
NHKニュース
最近のPodcastを探していて、
素敵な番組をみつけました。
話題の話題
音楽、美術館、金魚、天気予報…など、
身の回りの話題について12〜3分で紹介しています。
ナレーションの男性の声がとてもすてきで、
スピードもゆっくりなので、
気持ちよく続けられます。
24話で完結してしまっているのが残念ですが、
これから全部シャドーイングしてみようかな、と
考えています。
シャドーイング
シャドーイングには、聞いてすぐ繰り返す
ふつうのシャドーイングと、
2〜3語待ってから後追いで繰り返す
デカラージシャドーイングがあります。
デカラージシャドーイングは、
聞き取り通訳の「聞き溜め」の練習に欠かせませんが、
かなり集中力を必要とする方法で、
もっと学習が進んだときに始めると良いと思います。
この時期のトレーニングは、ふつうのシャドーイング。
流れていた音声をそのまま繰り返します。
ふつうのシャドーイングは、
「ながらシャドーイング」ができます。
私は、家事やウォーキングをしながらやっていました。
ただ、聞く方に集中するので、車の運転中は危険です。
うまくいかない原因
シャドーイングは、
繰り返すだけなので簡単そうに思えますが、
やってみると意外に難しいです。
原因は大きく分けて3つ。
①ちゃんと聞き取れていない
②記憶できていない
③口が動かない
①ちゃんと聞き取れていない
②記憶できていない
話はだいたいわかるのに、
繰り返そうとすると単語が抜けるのは、
私たちが自然と聞き流しているからです。
ふだんの聞き方はそれで良いのですが、
通訳をする時は、聞き逃さない聞き方が大事です。
また、私たちは文字を読むことに慣れていますが、
耳からだけの情報を記憶する力は人によって違います。
文字がないと記憶に残りにくい方は意外と多いです。
耳からだけの情報に慣れることも大切です。
さらに、「知らない単語」は頭に入ってきにくいです。
新聞などでさまざまな分野の用語を知っておくことも
シャドーイング上達のカギです。
③口が動かない
頭には文章が入っているけど、
言おうと思うと止まってしまったり、
口が動かないこともあります。
音読に戻って練習してみて、つまづくようなら、
先に音読で口慣らしをすると良いかもしれません。
音読トレーニングの解説はこちら↓
とにかく慣れよう
はじめは自分のできなさに愕然としますが、
細く長く続けましょう。
シャドーイングを繰り返していると、
だんだん聞き方が変わってきます。
①ただ繰り返している段階
はじめは、ただ文章を追いかけて口に出すだけです。
後から「何の話だった?」と聞かれても
この段階ではまったく答えられません。
②内容を理解できる段階
だんだん慣れてくると、
口は動いているけれど、
頭はしっかり話を聞いていて、
内容をくっきり理解できるようになります。
聞いた後、話の内容はぼんやりと記憶に残っています。
③内容について考えることができる段階
もっと慣れると、
シャドーイングをしながらも、
内容について
「ほう、それは初めて聞いたな。」
「面白い話だな。」「私の意見とは違うな。」
などと考えることができるようになってきます。
聞いた後に、何の話だったか人に説明できます。
通訳に必要な「聞く力」
手話通訳に限らず、
言語通訳において必要な「聞く力」は、上記の③。
聞きながら、シャドーイングしながら、
自分の頭でも考えられる聞き方です。
通訳する時は、
起点言語(元の言語)を、
聞こえた順番で目標言語に置き換えるのではなく、
起点言語の内容をある程度のまとまりで理解した上で、
「目標言語の言い回し」に変えていく必要があります。
聞きながら自分の頭でも考える、という
脳の使い方をします。
手話通訳の、聞き取り通訳においては、
話を聞きながら内容をつかみ、
手話の言い回しに変換して表現します。
読み取り通訳においては、
ろう者の話を理解して
日本語の言い回しに変換して声に出します。
私は日本語が母語で、手話は第二言語にあたりますので、
日本語の方が得意です。
ですから、
聞き取り通訳の時は、
話を聞いて理解するところまでは自動的に行い、
「どのような表現をすればろう者に伝わるか」
に神経を注ぎます。
読み取り通訳の時は、
ろう者が話している内容を理解することに神経を注ぎ、
日本語を声に出すところは
意識せずに自動的にやっています。
手話通訳は基本的に同時通訳で、
理解することと表出することを同時にしています。
どちらもに神経を注いでいたら止まってしまうので、
得意な方を「自動化」する必要があります。
この「自動化力」が、
シャドーイングで身につく力だと思います。
気長にやっていきましょう
なんだか難しい書き方をしてしまいました。
皆さんを怖がらせてしまっていたらごめんなさい。
こんな風に言っている私も、まだ道半ばです。
語学は、完璧を求めていたら続きません。
失敗しながら続けていくことが上達のコツです。
数週間続けてみて、振り返ると、
少し上達していて嬉しい。
その繰り返しです。
一緒に頑張りすぎず、気長にやっていきましょう。
おすすめの手話動画チャンネル
本noteでは、1記事に1チャンネル、私がよく見ている手話動画チャンネルをご紹介します。
みみサポみやぎ
「みみサポみやぎ」は、宮城県聴覚障害者情報センターの愛称。毎週ろう者による手話動画が公開されています。
健康や生活に関わる情報がわかりやすく語られています。
「スフィア基準」や「サブスク」など、聞いたことはあるけど自分では説明が難しい用語を説明してくれていて、ろう者に伝える際もとても勉強になります。
手話通訳・字幕つきです。
学習の進度に合わせて、音声を切ったり字幕部分を隠して活用されると良いと思います。
公式LINE「手話の朝自習」
私が月〜土曜日に手話動画をご紹介している公式LINEでは、毎週水曜日にみみサポみやぎさんの手話動画をご紹介しています。
これまで「毎日手話トレーニング」という名前でしたが、私がトレーナーなわけではないので、イメージが合わないな…とずっと思っていて、このたび名称を変えました。
手話の朝自習↓
次回予告
先日第32回(令和3年度)試験の学科試験問題を解いてみました。学科試験の取り組み方などについてお話しします。
手話通訳士の自習室は、
手話通訳士を目指す皆さんを応援しています!