見出し画像

なぜあなたの翻訳は的を得ていないのか

仕事柄、ドキュメントの日英翻訳をやらなきゃいけないことが多いのですが、最近ちょっとした「コツ」が見えてきた気がします。かれこれ5~6年ぐらいアパレルとかIT業界で海外マーケットを相手に仕事をしてきましたし、多種多様なドキュメントを翻訳してきました。

あなたは社内の英語できる人に

「ごめん!この資料翻訳お願いしていい?明日のAMまでにできる?」

みたいなお願いをしたことはありませんか?僕はあれを受ける人です。当たり前にお願いされるけど、やってる本人は結構キツかったりします。なぜなら元の日本に抽象的なワードがたくさん使われていたり、主語がなかったり、日本語特有の文法表現だらけだったり、そもそも何が言いたいのかよくわからない文章もあるからです。

翻訳を受ける人も、翻訳を誰かにお願いする人にも覚えておいてほしいことを、本記事で説明します。

それは「翻訳は単なる言語の置き換えではない。文字面の翻訳に留まらず、本質を掘り返して別の言語に移植すること」なんですねぇ。

あくまで僕の経験の中で、という話です。もしご意見あれば教えていただけると嬉しいです。

主語や行間から言いたいことを掘り返す

日本語の文章は往々にして主語を省略し、抽象的な言葉で読み手の解釈に委ねがちです。仕事のドキュメントみたいな文面でも、上司との1on1みたいな口頭のコミュニケーションでも。

例えば、上司がドキュメントのタイトルを

「新規ビシネスプランの検討」

これをどう訳しますか?日本語なら「あぁ新規ビジネスのプランについて色々考えて、ディスカッションとかするのかな?」みたいな感じで、読み手が解釈して書き手の主張を理解しようとします。ちょっと曖昧なところがありますが、読み手が理解しようとしますし、表題としては十分だと思います。

しかし安直に英語で直訳すると"Consider a new business plan"となり、急に何を言っているかわからなくなります。「考えるだけでいいの?検討っていろんな案を出して比較したり、メリットデメリットを洗い出したりしたりしないの?」と読み手は混乱します。そもそも英語としてちょっと幼稚な感じがします。感覚の問題ですが。

だから書き手がこの文章で主張したい本質を掘り出して、正しく英語に移し替えなければなりません。

書いている人も本質に気がついていないこともある

もし「新規ビジネスプランの検討」を翻訳するなら、「何を検討するか」「どうやって検討するか」「新規ビジネスとは何か」「プランは具体的に何を指しているか」など、その文章の背後に隠れている詳細な情報を咀嚼しなければなりません。(この短い文章一つにここまで時間かけられないこともありますが)

例えば、ヒアリングした結果、実は新しい商品の話らしいと判明したらなら、"Map out a business plan for our new product"「新規プロダクトのビジネスプランを計画する」と言えるかもしれません。本来主張したいことが具体化されますし、英語表現としてプロフェッショナルだし、表現がグッと引き締まります。

得た情報すべてを翻訳に反映されることはなくても、背景を理解した上で翻訳する文言は具体性を帯びます。また、文字数などの制限で具体化できない場合でも、翻訳された英文に本来的な意味合いを持たせることができます。

自分で書いていないドキュメントを翻訳して「日本語の意味がわからない」と思ったら、ちょっと面倒と思われてもぐいぐい質問攻めした方がいいです。書いている本人も無意識に抽象的な言葉を使ってしまっていて、本当に言いたいことが言語化できていないケースもあるので、書き手が自身の主張を理解する手助けになるかもしれません。

翻訳は違う言語に置き換えるだけじゃなくて、本質を移植する仕事


僕の思う「いい翻訳」とは「ドキュメントの本質を掘り返して、その本質を別の言語に移し替える」です。実際翻訳していると文字面だけ翻訳しても、意味を成さないことが多いです。AIによる翻訳の精度も上がっていますが、コンテクストや本質を理解した上でのクオリティが高い翻訳ができれば、立派なスキルになるじゃないかと思っています。あるいは、この前提を理解した上で、翻訳を誰かにお願いするだけで、手を動かす人もサッと作業に取り掛かれるかもしれません。

翻訳を誰かにお願いするときはマジでいい感じの日本語と、具体的な説明を用意してあげてくださいね。マジで。

いいなと思ったら応援しよう!