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5-7月音楽記録


1.“Aftersun(motion picture soundtrack)” Oliver Coates

 aftersunのサウンドトラック。この伸びやかな音は弦楽器なのかな。静かに鳴り始めた音がそれが増幅してまた消え入っていく、それが繰り返される。意識の深い闇の中から何かが迫っては、また闇の中に消えていく。暗い波の中にいるよう。聴覚も視覚も、水に覆われてしまうみたいに、今いる場所や意識から離れていく感覚がある。感情をゾワっと撫でるような、メロディ(と言って良いのか)が繰り返される。どこかからというよりも、終わりに向かっていることを意識させる。悲しくて切なくて、でもその悲しさは光によって生まれた強い影のようなもので、その光の暖かさも遠くに感じるような悲しさ。

 余談なんだけど、例えば自分が手に入れようとしている幸せがあって、でもそんなの自分には一生訪れないと絶望して悲しくなる。でもこういう映画を見て、自分の中に感情が生まれる。こうやって音楽を聴き返す時間にも。そうだよそっち側にも大切なものがあるじゃないか、自分がこうやって今感じている気持ちが人生で何よりも大事なものだろうって。一時的なものなのだけど。

2.“Motion Picture Soundtrack” Radiohead

[前置き]
 カネコアヤノのライブ終わりに会場で流れててシャザムした。トムヨークの声だしレディへの曲ってのはわかるけど、なんて曲だっけこれってシャザムしながら聴いてたんだけど、KID Aの実質的に最後のトラックということ。しかしいざ判明しても全然印象に無かった曲。KID Aって途中正直やかましさで心を乱されるような印象もあって、よくよく考えると最後まで聴き切った記憶がない。このトラックも正直全然記憶になかった。
 もう一つ聴くようになったきっかけがあって、それが同時期に見てた「Radiohead on shuffle be like」という(ネタ)動画。Radioheadの曲に対して、それが流れてきたら人はどんな気持ちになってしまうか、っていうのを曲に合った映像を同時に流すことで表現してる動画。他のアーティストでも色々作られてるんだけどこれが一番完成度が高い、特に最後の曲が。それがこの “motion picture soundtrack” という曲。そういう諸々のことがあって、腰を据えて聴いてみたら良すぎて聴きすぎた。


 間伸びするオルガンの音は最初の音から何か諦めのような空気を感じさせる。演奏の後ろで、カチャカチャと、ノイズが入っているのが聞こえる。それによって想像されるのは、乾いた空気、がらんどうのような空間、虚な部屋。トムヨークの声は、綺麗に伸びているのに、同時に脆さを感じるのはノイズの混じった虚な音像だからか。 “stop sending ~”のところでノイズ含めて音が綺麗に無くなり、夢見心地に奏でられるハープの音とともに、ノイズのない飽和した音世界が広がる。幸福感さえ広がっていく、意識が宙に浮いていくみたいな心地よさ。だけど同時にオルガンの音も重く響いている、沈んでいく。その夢の中でも、諦めは同じように漂っている。ただ、現実とは違って、光が見える、どこに向かっていくのか。 “i think youre crazy ~” のところで女性のコーラスのような、シンセの悲しい音に、救いのようなものを感じる。最後、音の飽和感が消える、浮遊感から一転、落下していく。曲の始まりのような解像度でオルガンが響く。 “i will see you in the next life” 言葉以上に諦めを感じる。美しすぎる。

3.“Evening news” cero

 ceroの今年出たアルバムで特に好きだった曲。他の曲もライブで聴いて最高だったんだけど、この曲は音源で流し終わった後に、何度も何度も繰り返し再生してしまう。
 派手な演出はない。あたたかいタッチのピアノのアルペジオの伴奏と、時折息を吹きかけるような、浮かんでは消えていくコーラス。曲全体で抑揚は少ない。だから、その小さい抑揚の波を感じ取りながら聴く。いつの間にかその小さい波を待っている自分がいる、その小さい波で心が大きく揺らされる。アウトロで、歌メロがピアノが奏でられるとこ、本当に光が降ってくるみたい。実際ライブで聴いた時に、マジで光を感じてしまった。

4.“2017”Gia Margaret

 アンビエント、ポストミニマル作品。曲が始まると、遠くから近づいてくる電子音と細かなコーラスワーク、音像は密な感じ。そこにノイズが入ってくると、同時に密な感じはなくなる。穏やかなピアノの音が入ってくる、後ろではフィールドレコーディングによるどこか公園のような場所の、子ども達の声が遠くに聞こえる、とてもオーガニックな雰囲気。そこに伸びるような低い電子音が入ってくると、またその公園から離れていく心地、内側に進んでいくみたい。でもその電子音もその後に入ってくるビートも、あくまで曲の持つ一つの世界に寄り添っているような優しい音像を持っていて。特にどんな音が鳴っているかを意識しないでぼーっと聴いていた。
 アンビエント作品として本を読むときや何を聴いていいのかわからない時に、今年よく聴いていた。


5.“眠れない”カネコアヤノ

 “タオルケット~”のひとりでにから。この曲は弾き語りの方が断然好きで。このアルバム、実は全然聴けてなくて気分と眠れないだけシングルでめっちゃ聴いた。(気分はバンドバージョンが好き)

 サビの「眠れない無理に寝ない~明日の愛を想像する」のところが好きすぎる。カネコアヤノの言葉って桁違いに入ってくるのなんでなんだろな。そんで、「明日の愛を想像する」ってところ超好きなのに、具体的なイメージ実は湧いていない。でも、抽象的なまま、イメージを持たないまま、自分の中で深く感じているものがある。なんやねんって感じだけど祝日の「飽きないな 若気の至りか~」のところもわかってない、わかってないけど大好きなフレーズ、これ以上ないって思ってる。こういう抽象的なフレーズが、ただ抽象的なそれっぽい歌詞で終わってない。本当に貴重な人。



6. “Bodys” Car Seat Headrest

 こんなにもワクワクして、テンションが上がってしまい、曲が進む度に音量を上げてしまう曲に出会ったのはいつぶりか。直球にかっこよくて、自分が音楽を知る中で感じたあのロックの衝動を感じずにはいられない。聴いていると思いっきり頭を振ってしまう。
 イントロのギターからもう特別、ワクワクが抑えきれない。これでもかってくらいわかりやすいサビ。層の厚い飽和したギターはどんどんコードを上げていって、激しい四つ打ちのドラムと一緒にぐんぐん加速していく。体に力が入って叫び出したくなる。2回目のサビではコーラスが入るんだけど“dont you realise our bodys could fall apart at any seconds”というのを、男友達みたいな印象のバンドメンバー達が叫んでるのがたまらない。このフレーズを歌いたくて歌ってるようなの。こういう曲を聴くとパワーポップ最高!!!!!ってなっちゃうよ


その他

7. “Eyes Set 4 Good” String Machine


8. “TOWN-0 PHASE-5” 平沢進


9. “I Can See For Miles” The Who


文字を書くのが辛い。だけどこうやってやらないとめっちゃ良いと思った音楽をいつか思い出さなくなっちゃいそうでそれちょっと怖いよな。

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