ルヴァンカップ横浜Fマリノス戦~ベスト4進出

2022年8月10日 ルヴァンカップ準々決勝第2戦 横浜Fマリノス vs サンフレッチェ広島 ニッパツ三ツ沢球技場


 ジトーっという湿気を含んだ暑さはスタジアムへ向かう際に息を切らした。呼吸が乱れ、汗が噴き出る。それでも歩速を速めたのは時間に余裕がなかった為だ。スタジアムへ近づくとすでに手拍子が聴こえてきたのはキックオフが間近なのを知らせてくれた。

 アウェイ用のゲートを潜り最前列の席に着くと同時に始まる。なぜか笛の音がよく聴こえない。傾斜がなくGKと同じ目線の為に相手ゴールはわからないもののこちらのゴールはよく見える。なので鬼神のような動きでゴールに迫ってくるマリノスの脅威を肌で感じる。速い、鋭い、すざましい。マリノスの攻撃陣の迫力に圧倒されてしまうのだった。

 2点以上取らないと勝ち抜けのないマリノスはターンオーバーをしつつもストライカーのレオセアラを入れ、右サイドに水沼、ボランチに藤田を入れるという要所要所で要となる選手を入れている。だがターンオーバーをしてもマルコス・ジュニオールが出るという豪華ぶりである。それに対してサンフレッチェは連戦にも関わらず固定メンバーで臨んできた。そんな中で唯一右サイドに野上が入ったのは前の試合でゴールを導き出すプレーをしたのを評価されたのだろう。スキッベ監督は結果を出した選手はすぐに使ってくるのだった。

 一人止めてもまた一人がパスコースをつくりそこをマークしてもドリブルで剥がすという攻撃がサンフレッチェのゴール前で続いていく。引き分けでも勝ち抜けではあるもののこの強度の攻撃を堪えるのは至難である。なので奪った後は素早く攻めていく。守りに徹するつもりはない。そんな姿勢はいつしかマリノスの攻撃に重石を与えたのだった。

 高い位置でのボール奪取に走る。選手の肌が汗によって照明の反射を受けて光る。GKを含めたパス回しは取れるものではないが少なくともビルドアップの余裕は与えていない。それにより中盤での競り合いも有利にできマイボールにするとゴールに向かって一気に攻め立てる。満田がボックスに入ったとこで倒される。だがノーファール。この時は見えなかったものの後で録画を観れば完全にPKのシーンだったが流されてしまったのだった。

 それでも依然として高い位置からのプレスは続きCBに入ったとこでナスが身体を捩じ込んでボールをむしり取る。完全に空いたゴール前。間髪入れずシュート。叩き込んだ。ナスの先制点が決まったのだった。

 ドワーッと立ち上がったアウェイゴール裏。声が出せないのがもどかしい。得点力がないと言ってすっかりゴールへの期待を無くしてしまったナッシム・ベンカリファ。そのナスが決めたのはぼくらにとって意外でしかなく、全く計算外のゴールだった。そしてこれは勝ち抜けをする上であまりにも大きい得点なのだった。

 とはいえマリノスは3点くらい簡単に取れる攻撃力がある。まだ安心はできない。早い時間の得点は有利に進めるようでまるで安心感が得られない。それだけにやはり守りに入ることはできないのだった。

 左サイドからパスを繋ぐ。速いテンポで出してもそれ以上の反応でマリノスはカットしてしまう。が、更にナスがそこにチェックした為にボールは溢れ森島へ。ゴールに向かってドリブル、抜け出した。が、転けた。DFの足に引っかかってしまう。完全に遅れて入った為にカードが出るのは当然だった。だがそのカードの色がレッドだったことは驚愕だった。

 照明の具合で色が認識できなかったのか相手の退場に対して無反応だったものの前半の内から数的有利になった上にスコアも上回った。断然サンフレッチェの優位になったのだが、ここでマリノスは意気消沈するどころか逆に闘志に火がついてしまったかのようだった。怒涛の攻め上がりを見せゴールに迫ってくる。サイドから中央へ。前を止めるとカットイン。マンツーマンの守備が完全に遅れてしまう。どこからでも打ってくるような気配を出し一瞬たりとも気が抜けない。人数を掛けてブロックを敷くも簡単にパスを出されワンタッチでフリック。そこに抜け出したレオセアラ。ゴールの隅に転がしていったのだった。

 決められた。なんということ。あれだけ人数を置いてるのに簡単に切り裂いてしまう。しかも1人少ないにも関わらずそれをまるで感じさせない。改めてマリノスの攻撃力の凄まじさに呆然とするのだった。

 ゴールに近づけてはいけない。ボールへの寄せを速くして高い位置でのプレーをさせない。そんなプレスの連続は次第に流れを引き寄せ前を向ける。左右にボールを振り佐々木も最終ラインから上がり攻撃に加わるとスルーパスに柏走る。ゴール前へ横パス。逆サイドから上がった野上が押し込んだ。決まったと思った瞬間副審のフラッグが上がりぬか喜びとなるのだった。

 しかし、試合は再開しない。VARのチェック。長い時間が掛かり下った判定。オンサイド、ゴールである。勝ち越しを決めたのだった。

 もはやここまで来ると勝ちを意識した。後半を通じてほぼ一方的な展開。その間何度もゴール前まで侵入しシュートを放ったものの枠に入らない。満田は絶好のチャンスでパスを出してカットされてしまう。野津田のFKもボール2個分超えてしまう。交代で入ったヴィエイラもヘディングを同じとこに外す。皆が皆惜しいシーンを作りながらも決め切ることができない。あと1点決めることができれば完全に止めを刺すことができるのに誰もその止めを刺すことができないのだった。

 そしてこのままスコアは動かず試合を終える。ベスト4進出。カップ戦勝ち進むってなんて久しぶりのことなんだろう。仲間と落ち合い帰路に向けて横浜駅までの長い徒歩も苦痛に感じることはなく幸福感に浸っていた。

 でもまた中3日で柏戦なんだよな。

 仲間のその言葉ですぐに現実に戻されてしまう。なんとも忙しいスケジュールだ。勝ち進むと言うのはそういうこと。そんな忙しなさではあるが充実感が溢れているのだった。 

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