【web3週報⑪】PMFはトークン発行前に達成すべきか?
こんにちは
Skyland Venturesの愛川です。一橋大学の3年生です。
毎週web3の気になったプロジェクトを紹介しています。
前回の記事:
最近、私の上司にあたるよんくろうさんがこんなツイートをしていました。
この記事は、「PMFはトークン発行前に達成すべきか?」という内容のもので、Cryptoに投資しているVCとして、とても興味深いテーマです。
このnoteでは、記事の日本語要約を載せたのちに、このテーマについての愛川の意見を書こうと思います。
元記事の日本語訳
元の記事:
プロダクト・マーケット・フィットはトークン発行の前に達成すべきか?
アメリカの実業家エリック・リースによると、プロダクト・マーケット・フィット(PMF)とは、「スタートアップが最終的に自社の製品に共鳴する広範な顧客層を見つけた瞬間」のことを指します。
Web2とWeb3のスタートアップには違いがありますが、PMFに関する古典的な知恵は暗号通貨の世界にも当てはまります:PMFを見つけるか、死ぬかです。
ここで疑問が生じます:プロダクト・マーケット・フィットはトークン発行の前に達成すべきでしょうか?
簡単に答えると、それはあなたの製品がPMFを見つけるためにどれだけトークンを必要とするかによります。製品がトークン利用のスペクトラムのどこに位置するかによって、トークンを導入するのに最適なタイミングが決まります。
この記事では、PMF達成前にトークンを発行することの問題点と、それが適切な数少ないケースについて探ります。
PMF達成前にトークンを発行することの問題点
正直に言えば、提供する製品に不可欠な機能を果たしていないトークンが多数存在します。
トークンに依存せずに機能する暗号資産製品は、トークン発行前にPMFを確保するよう努めるべきです。なぜなら、これらのプロジェクトの分散的な性質により、発行後の調整が非常に困難になるからです。例えば、ガバナンストークンはプロジェクトのエコシステムの中核を成すかもしれませんが、製品の中核ではありません。
トークンを早すぎるタイミングで導入すると、インセンティブを歪め、ユーザーの行動に影響を与え、特定の製品要素を固定化することで、PMFを見つけるプロセスを妨げる可能性があります。さらに、PMFを達成するために必要な場合でも、発行後にトークンの経済モデルを変更することは多くの場合困難です。また、トークンのインセンティブは当初ユーザーを引き付けるかもしれませんが、長期的なユーザー維持を保証したり、発行前に解決すべき根本的な製品の問題に対処したりすることはできません。
PMF達成前にトークンを発行することが適切な場合
トークン設計が中核にある暗号資産製品(これらは少数です)の場合、トークンは製品の機能に実際に必要であり、PMFを見つける前に発行しなければなりません。
PMFを見つけるためにトークンが不可欠な例には、ビットコイン、イーサリアム、ソラナ、バイナンスチェーンなど、マイナーやバリデーターから経済的セキュリティを得るレイヤー1や、HeliumやDimoなど、ネットワークの供給側を立ち上げるためにトークン発行に必然的に依存するDePinネットワークが含まれます。
それほど一般的ではありませんが、ネットワーク内のインセンティブを適切に調整するためにトークンを必要とする特定のDeFiネットワークも存在します(ガバナンスは除く)。これらの製品のトークンネットワークは、スケールとインセンティブの調整を達成するために運用される必要があります。
PMF達成前にトークンを発行することが適切でない場合
多くの製品がトークンを持っていますが、実際にトークンに依存して運営されている暗号資産は少数です。トークンの最も一般的な使用法は、効果的に顧客獲得を立ち上げること(または最終的に出口流動性のため)です。これが効果的に機能している最良の例は、おそらくBlurでしょう。彼らは、当時主要なNFTマーケットプレイスだったOpenSeaをバンパイアアタックするために、ネイティブトークンの形でインセンティブを活用することができました。
トークンは顧客獲得の立ち上げに効果的である可能性がありますが、製品が真のPMFを持っていない場合、それらのインセンティブキャンペーンが終了すると、必然的に活動の大幅な低下が見られます(2024年の主要なエアドロップをすべて参照してください)。
逆に、すでに機能している製品にインセンティブを追加して顧客獲得を促進する(そして多くの場合、ガバナンスを分散化する)場合、成長を加速させる利点が得られます。
例えば、Compoundを考えてみましょう。彼らはガバナンスのためのネイティブトークンを持っていますが、そのトークンは中核の製品提供(分散型貸付)に不可欠ではありません。Compoundは、トークンを導入する前に大きな製品のトラクションを得ていました。
同様に、Uniswapは、トークンを発行する前にプロトコルのバージョン2で分散型取引の大部分のシェアを獲得しました。彼らは、自身のトークンを通じてインセンティブを合わせることで、SushiSwapからのバンパイアアタックを効果的に撃退しました。
最近では、Polymarketが、価格が変動する不安定なネイティブトークンではなく、USDCを使用して現実世界のイベント結果に賭けることができる分散型予測市場で、大きなPMFを見出しました。
要約すると、あなたの製品が本当にトークンを必要としない限り、トークンを発行する前にPMFに向かって十分に進んでいるべきです。そうでない場合、トークンが成長を促進するのではなく、成長を遅らせるリスクがあります。
愛川の解説
軽く内容についての解説を入れます。
PMFはスタートアップにおいてとても大事な概念であり、ニーズがあるプロダクトが作れていて、商品を買いたい!というたくさんのお客さんが見つけられている状態を指します。
トークン発行はweb2で言うところの株式市場への上場にあたります。これをPMF前/後どちらにするべきか?という議論で、記事の筆者としてはレイヤー1やDePinのプロジェクトはPMF前にトークン発行をしても良いが、基本はPMF後の方が良いよね、というものでした。
愛川の意見
概ね、記事の意見は正しいと思います。でも議論が生まれたほうが面白いので、一つ別視点からの意見を述べてみようと思います。
資本主義的な立場から見ると、PMF前でもトークン上場はしてもよいと思います。なぜなら、市場によって財の価格は決められ、良いプロジェクトが生き残るからです。
スタートアップ/VC業界での最も大きな課題の一つが、未上場企業のバリュエーションを適切に付けることができないという問題だと思っています。
起業家はバリュエーションを高くつける傾向にありますし、VC側からのその指摘はポジショントークに聞こえて無視され、結果的にExitが難しくなる/上場できても株価が落ちてしまう、ということが起きています。(愛川はファイナンス教育の機会の拡充によりこのようなケースを減らしたいと思っています。)
トークン価格は市場からの信号として機能し、プロジェクトの進捗や潜在性を反映するため、市場からの評価を受けられる機会を早くに持つことは大切だと思います。
つまり、結論としてはある程度チェックがされたうえでのトークン上場は積極的に推し進めることが良く、理由としてはマーケットによって悪いプロジェクトは淘汰され、良いプロジェクトは残るからです。
「PMFはトークン発行前に達成すべきか?」について、色んな人の意見が聞いてみたいです。
最後に
CRYPTOLAND HUNTERSというTelegramのコミュニティがあります。
250人以上のメンバーが参加している大きめのクリプトコミュニティです。
web3に興味がある人であれば、初心者も玄人も皆歓迎です。以下のリンクから入れます。
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ありがとうございました。
参考にさせていただいたリンクです。
Should product-market fit come before launching a token? (coinlist.co)