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煙に巻かれて

私はここ数年で、見えなくなってしまったのではないだろうか
自分が何をしてきたか、誰かの気持ちを振り返ったか

痛みが和らぐと楽になるけれど、何かを失った気になる
また同じ気持ちになれないのだろうか

分かった気になっていたのは、お互い様
割り切れないのも、お互い様

誰かに何かを出来る程の人間なのだろうか
施しを受けるばかりで、具体的な何かを返せているのだろうか
そもそも、受けるばかりの関係性は破綻しているのではないか

一度そこで自分に大丈夫だと言い聞かせるけれど

膨大な量の感情の波に溺れて
どうしようもなくなって、何も感じなくなったのだろうか

つらつらと問いかけてはみるものの、返事は何処からも来ない
無力なのは分かっている、分かっているけれど
私はそれを痛感したし、どうすることも出来ないと学んだ筈だったけれど
それとこれとは別物で

一つ失っただけで、自分が分からなくなる
私という存在は、居なくても成立する

もつれ合っている内はいいかもしれないが、解けた瞬間に消滅してしまうような
どこで間違えた?

ただただ暗い部屋で
小さな思い出を辿りながら
それらはもう死んでしまったのだと
自分に言い聞かせた
嗚咽するような、あの感情を
何と呼べばいいのだろうか
同時に私も死んでしまったのだと
分かってしまったときの惨めさは
時間と共に無くなるのだろうか

苦し紛れの言い訳を背負って
惨めな姿を晒しにいくことの愚かさ
ものは言いようだと
それを武器にどれだけ傷つけた?
でもそれさえも、きっと彼女にはどうでもいいことで
朝起きて歯を磨いているうちに忘れるような些細なことなのだろう

やめることを選べるような関係性は、欲しくなかった
価値観の相違が顕著に見えたときの切なさを処理し切れなかった
今更、友達でいるかどうかなんて確認するようなことでもないと
そう思っていたのに

ああ、待っているんだろうな
私がその価値観を知って次に取る行動を
二の足を踏むばかりで
矢張り私は誰かに何かを与える存在ではないのだろうな
そう逃げて、また殺す?


今日は違ったルートにしようと思ったんだ
楽しく話す帰り道で
ふと君の顔を見たら
燃え尽きたような夕陽が
笑顔の君と裏腹に僕を照らしたんだ

一瞬の時の錯覚に襲われて
その夕陽に誘われるままに
僕は走り出してしまった

走り出してしまっていたんだ

今でも聞こえる
後ろで呼び止める声が
僕は止まらなかった
止まれなかったんだ
君との違いを見つけてしまったから

僕はきっと間違ったルートを選んだんだ
楽しく話す帰り道は
君が僕を見ていたから
君が見ていた夕陽は
僕をどんな風に照らしていたの?

一瞬の時の錯覚に襲われず
その夕陽に誘われないまま
君は手を握ってくれていた

君は手を握っていてくれた

今でも聞こえる
笑顔で話す君の声が
僕は止まらなかった
止まれなかったんだ
君との違いを見つけてしまったせいで

そのまま転がり落ちる僕
燃え尽きたような夕陽が
僕と君を交互に照らしたよ

何も聞こえない
もう君の声が何も
僕は止まっていた
涙が止まらなかった
君と過ごした日々を胸に抱きしめて
君と過ごした日々を胸に抱きしめた

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