寒い寒い冬の日に、こころの森に旅をする。
わたしの中には
誰も知らない静寂がある。
そこは森のようで、季節は春の終わり。
木々や草花の声も静寂の中で響き、
鳥たちの囀りも羽ばたきの音も吸い込まれていく。
静寂の中に立つわたしの左手には
真っ白い卵がひとつある。
卵は、つい最近、
こころの中で見つけた。
卵に耳をあてると
静かな中に鼓動が聴こえる。
わたしから生まれる私が居る。
いつか生まれる私は、卵の内側を叩くのだろう。
その音は静けさの中で初めて生まれる音かもしれない。
叩いて叩いて
ヒビが入って
割れるとき、
静けさは、一瞬破られる。
それは、新しい静寂の合図であり、
生まれ出た私は、更に深い森へと入っていくのだ。
もう何度も何度も繰り返してきた。
その度に、それは懐かしいものだと思い出す。
寒い寒い冬の日にこころの森に旅したお話し。
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