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『異世界でも本屋のバイトだが、アマゾネスのせいで潰れそうだ』最終回
角人のヌード写真集は角の部分にモザイクが掛かっている。
雹(ひょう)の降ることが多い星が故郷の角人は、その進化の過程で頭頂部を守るために皮膚が固くなり「角化」したと言われている。
優秀な戦士である彼らは、この世界で一大勢力を築いた。この世界で「勝ち組」となった彼らはどんどん子を産み育てていった。そうして世代が進むごとに芽生えたのが「角を見せるのは恥ずかしい」という感覚だった。
角人の男も女も、風呂に入るとき以外は頭を布で覆っている。角を見られるのは性器を見られるよりも恥ずかしいらしい。
ニーナもそうだ。白いタンクトップはピチピチで、胸の谷間がこれでもかと強調されている。タータンチェックのミニスカートは短すぎて、歩くたびにパンツが見えている。一緒に歩いている僕は目のやり場に困る。
「今日は改まって話って何?」ここはルシオの古地。遠くに海を見下ろせる高台。僕の左横に立つニーナは17歳。でも目鼻立ちがはっきりしているせいか、もっと大人に見える。
「ダンジョンに昨日店長と行ってきたんだけど、俺には無理みたいだ。入れなくて引き返した」
強い風が吹いたので、彼女はスカートではなく頭に巻いた赤いバンダナを手で抑えた。あぁ、パンツ丸見えじゃないかチクショウ!
「角人のキミからしたら、情けないだろ? でもね、俺は決心したんだ。ダンジョンには潜れないけど、本屋として生きていく覚悟が出来た。店長も幾つかのジャンルの担当を任せてくれるって」
無言でニーナは僕の手を握ってきた。その頭が僕の左肩にくっついてきた。
…どうしよう、そのバンダナの中が見たくなっている自分がいる。
「見たいの?」上目づかいでニーナが小さな声を出した。
紫色の夕焼けが沈んでゆく。
僕は小さく頷いた。 (了)