『異世界でも本屋のバイトだが、アマゾネスのせいで潰れそうだ』第7回
≪難易度の高い問い合わせ≫
転生前、日本人大学生だった僕は郊外型の書店で働いていた。そこでも悩まされていたのが「うろ覚えの老人の問い合わせ」。
こっちに来てからは、あぁあんなのは可愛いもんだったなと思える。
この世界でポピュラーな住人---人間、ドワーフ、エルフ、ノーム、ホビット、オーク。それぞれ向けの雑誌が刊行されている。それどころか少数派である足長人、手長人、角人(つのびと)、有翼人、半魚人などなど。彼ら向けにも専門誌が発行されているのだ! もはや全部を覚えるのは至難の業。店長ですら分からない時も多々ある。
「パートナートーク? 聞いたことねぇな。どんなジャンルの雑誌だって?」
「さぁそれが、仲間を探すための情報誌みたいなものだって言ってます」
「戦士系か魔法系かで選んでもらわないと…つうか、まずは酒場に行けよ!」文句をブツブツ言いながらも、店長は問屋が出している『雑誌目録』を調べ始めた。
「ぱ、ぱ、『パートナートーク』なんてのは載ってねぇな。『パートナーセレクト』ってのが昔あったけど休刊したしな。問い合わせしたのはどんな人?」
「それが、化粧のやたらと濃い、人間のお婆ちゃんなんです」
「お婆ちゃん? その歳になってもダンジョンに潜るんかい! 本当か? ちょっと確認して来い!」
僕は仕方なく店内を探した。「あれ?」ラメ入りの紫のカーデガンとヒョウ柄のモンペという、かなり特徴的な服装だ。見つからないわけがない。既に諦めて出ていってしまったのだろうか。
しばらくして事務所から店長が出てきた。片手に分厚い『直販雑誌(書店には置き切れない、よりマニアックな雑誌類)』の目録を持ち、鬼のような形相だ。
「ふざけやがって…夫婦交換、スワッピングの専門誌じゃねえか、エロババア!!!」
仲間を探す情報誌。あのお婆ちゃんは間違っていなかった。勝手に冒険仲間だと思い込んだこっちが悪いだけなのだ。
しかし、聞くか普通。この世界の、女性のグイグイ来る感じが未だに馴染めない。
こうして今日も、ありふれた1日が始まった。