統合失調症でSNSのアカウントを全部失った話 | 急性期
前の記事で統合失調症を発症した時のことについて書いた。
今回は、その後自宅で過ごした期間を振り返る。その頃は、無理をし続けた結果限界を迎え、家に引きこもって療養していた。ようやく自宅で休み始めたものの、そこから症状は悪化する一方だった。
( ※ 症状が酷くなっていった時の話なので、人によっては重いと感じる内容かもしれません。ご注意ください。また、この記事は個人の主観によるもので、医学的な知識に基づくものではありません)
1、 聴覚過敏
前回の記事で、前兆として音に対して敏感になったことをあげた。その後ありとあらゆる音が気になるようになった。聴覚過敏といっても、元からそうなのではなくて、症状として音に対して過敏になっている状態のこと。
外の通行人の足音や話し声、家の中で木が軋むような音(家鳴り)、何か機械のようなカチッという音がやたら大きく聞こえるようになった。外の人の足音が耳元で聞こえたし、風呂場にいても外で鳴る救急車のサイレンの音が聞こえるくらいだった。妄想もだいぶ酷くなりはじめていたから、水道管の音や近隣住民の立てる物音が何かの暗号になっていて、それで会話しているんじゃないかと本気で思っていた。
音の聞こえ具合は、テレビの音量を上げすぎた時のように、聴覚の音量が勝手に上げられている感じ。色んな雑音を全部拾ってしまうので、微かなカチッという音もしょっちゅう聞こえるから、その音で喋り声が録音されているんじゃないかと考えたりして、怯えていた。一晩中雷雨の日があって、その晩は一睡もできなかった。
音に対する過敏性は、現在はだいぶ改善したもののまだ若干残っている。
2、 妄想に追い込まれてSNSアカウントを失う
妄想はどんどん加速していった。今だから妄想だったとわかるけれど、当時はそうとしか思えないと感じていたから、なにもかも本当に怖かった。
監視カメラで家の中の様子を病院の医師に監視されているのではないかというところから始まり、風呂の中やトイレの中も見られているんじゃないかと思い始めた(監視カメラなんて見当たらないのに)。そこから、自分の姿が全世界に中継されているのではないかとか、自分の考えていることが他の人に筒抜けなのではないか、とか。まさに統合失調症っぽい妄想が出てくるが、当時は統合失調症の症状について全く知識がなく、病気であると言う自覚もなかった。
テレビを見れば、生中継のアナウンサーと私の目が合って、険しい顔をされたように感じたし、最終的には自分のせいで世の中に何かしら悪い影響を与えているんじゃないかと思い始めた。外を飛んでいる鳥たちも何か私に恨みがあって大きな声で鳴いているんじゃないかとか、環境問題にさえ妄想が及び始める。もはやファンタジック。外から聞こえる鳥や虫の鳴き声も録音で、降っている雨も舞台装置なんじゃないかと本気で疑ったこともある。
そして最終的には、大好きなキャラクターの作者にも好きで配信を見ていた配信者にも、自分の存在を知られていて恨まれているんじゃないかと思うようになった。そして、外に出て歩くだけでも周りの人にイライラされているような気がして怖くなり、外に1人で出かけられなくなった。論理的にはありえないし、自分の頭がおかしいんじゃないか?と思ったりもしたが、やはりそう思えてしまうし、辻褄が合ってしまうのである。とにかく、自分自身の人生の出来事すら他の人に知られていると思っていたため、生きていること自体が恥ずかしくて、自分自身の罪を問われているように感じていた。何の罪だかはわからない。
そのため、自分自身が発信したものを全て消したいという衝動に駆られ、SNSアカウントを次々と消していった。同時にSNSアカウントが不正ログインされて乗っ取られているんじゃないかとか、自分のiPhoneがハッキングされて中身を見られているのではないかといった妄想によって、何度もパスワードを設定し直した(実際は自分自身のログイン記録を、他人によるものと勘違いしただけ)。その時の脳内は混乱を極めており、当時の自分が書いたメモは被害妄想を羅列したものでメモの役割を果たしていなかった。
そうして、ありとあらゆるパスワードがわからなくなり、SNSアカウントを全て失うに至った。当時の感覚では、消したくてたまらなかったので消した、という感じ。
その中でAppleIDのパスワードがわからなくなってしまい、それまでやり込んでいたソシャゲのアカウントにもログインできなくなってしまった。それまでのデータも失いかけ、後になって後悔して絶望した(回復した後、なんとか復旧できたのが不幸中の幸い)。
妄想によって、自分で自分を追い込んだようなものである。周囲の友人からしたら、突然自分を責めるような内容の言葉を書き残して消息を絶ったのだから、かなり危ない状況に見えたと思う。後から、あの時は心配をかけてしまって申し訳なかったなと思った。
それまでSNSで繋がっていた友達のアカウントはほとんどわからなくなってしまったが、その後少し回復した頃に手紙を送ったりして数人と再び繋がることはできた。元々友達が多いタイプではないが、友達・知り合いとの繋がりを大部分失ったのはそれなりにショック。現時点でも、SNSで繋がっている友達はごく少数。
3、 脳内で自分の考える声が聞こえる
自分がおかしくなっているんじゃないかと思ったのは、考え事のスピード感が速くなって、しかもそれが止まらなかったこと。次から次へと考え事が移り変わるし、その考えている自分の声や独り言が、ずっと脳内で流暢に響いていた。
他にも、過去に他の人に言われた嫌な言葉がふと脳内で聞こえるように思い出したり(「姿勢が悪い」とか)、考えたくない言葉を勝手に何度も考えてしまったりと考え事が止まらなかった。この脳内の考えを読み上げるような声がするというのは、おかしいんじゃないかとだんだん思い始めた。
そんな中、家族との会話の中で統合失調症という言葉が出てきて、自分でも色々と調べ始めた。しかしまだ病識はなく、自分が統合失調症だとはあまり思っていなかった。でも調べる中で、自分の考えていることが頭の中で聞こえてくるという幻聴の症状(思想化声・考想化声)が存在することを知った。
もしかして今の状態はこれなんじゃ…と考えたりはしたけれど、やはり自分が病気だとはあまり思えずにいた。
4、 極限状態
自分がおかしいのではないか、いやそんなはずはないと葛藤しながら、それまで紙に書いていた考え事の記録を書くのをやめた。考えていることが読み取られるのだから、書いても書かなくても変わらないと思ったからである。脳内の自分の声はやまない上に、夜も家族に見張られているのではと思って眠らなかったし、体も心も限界を超えていたと思う。
この時期は、ずっと頭の中にもやがかかっていて、PCがオーバーヒートしたように頭がパンクしているみたいだった。何か考えようとしてもカメラのピントが合わないみたいにうまくいかない。ちなみに体感温度もかなりバグっていて、真夏の猛暑の最中だったのに、エアコンや扇風機の風が寒く感じていた。それらはほとんどつけずにその夏を過ごした。外に出た時に、ちょうどいい暖かさだなと感じるくらいには体感温度がおかしくなっていた。
夜は眠らず(寝ても2、3時間くらいだったか?記憶が曖昧)、昼はベッドの上で同じ姿勢のまま一点を見つめて時間が経っていった。家族に言われてたまに水を飲んだくらいで、自分もどうやって意識を保っていたのかよくわからない。本当はこの時に入院治療をした方が良かったのだろうと今では思う。それでも、妄想に怯え1人で外出する事すらできなかったので、それまで通っていたメンタルクリニックに通院することすら苦痛だった。そういう状態だったので、このまま家に閉じこもりたいけれど、ずっとそうするわけにもいかないし…と、どうすればいいのかわからなかった。
5、 入院へ
それくらい病識がなく、自分に相当重い症状が出ていることを自覚できていない状態だった。そのまま家族同伴で通院を重ねる中、ラツーダという薬を処方された。その後、だんだん外出時の人の表情が怒っているのではなくただ真顔なだけで、普通だと思えるようになってきた。
まだ、内心では自分の考えが読み取られているんじゃないかと思いながら通院をしていたが、その頃から少し冷静になり始めたと思う。
そして、主治医から精神病院に入院して療養することを勧められた。自分に入院する必要性があるとは思えなかったけれど、先生も家族も入院に関して話を進めて行くので、そこまで言うなら必要なんだろうと思って渋々入院することに決めた。
続く。