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ケーキ食べてジム行って映画観れば元気になれるって思ってた
本書は、現代社会におけるストレスとの向き合い方、そして誤解されがちなストレス解消法の真実を、精神科医の視点から解説した書籍です。読者にストレスの正しい知識を身につけ、自分に合ったストレス解消法を見つける手助けをすることを目的としています。
そもそもストレスって何?
「ストレス」は、辞書では「様々な外部刺激が負担として働くとき、心身に生じる機能変化」と定義されています。 これは、ストレスの原因となる外部刺激そのものではなく、刺激によって心身に起こる変化を指します。 例えば、「苦手な人と話すこと」自体がストレスなのではなく、「苦手な人と話すこと」によって気持ちが変化することがストレスなのです。
ストレスの原因となるものは「ストレス因」と呼ばれ、心理的なものだけでなく、寒さ暑さ、騒音、空腹、感染など物理的なものも含まれます。 これらのストレス因によって、体の恒常性が乱されるとストレスが生まれます。 恒常性とは、どんな環境でも体を一定の状態に保つ機能のことで、体温、脈拍、血圧などがその例として挙げられます。
なぜストレスは溜まるのか?
■ストレスが溜まる3つの条件
ストレスが溜まるかどうかは、「ストレスの程度」、「ストレスの回数」、「ストレスの持続時間」の3つの要素によって決まります。
ストレスの程度: ストレスの強さ。強いストレスほど蓄積しやすく、心身への影響も大きくなります。
ストレスの回数: ストレスを受ける頻度。 軽いストレスでも、繰り返されると蓄積しやすくなります。
ストレスの持続時間: ストレスが続く長さ。 長期的なストレス(慢性ストレス)は、心身に大きな影響を与えます。
■ストレスを溜めやすい人と溜めにくい人
ストレスを溜めやすいかどうかは、「性格」と「環境」によって影響を受けます。
性格: 楽天的、大雑把な性格の人はストレスを溜めにくい傾向があります。 反対に、繊細で完璧主義な性格の人はストレスを溜めやすい傾向があります。
環境: 現在の置かれている環境だけでなく、過去の経験も影響します。
ストレスを受けやすい性格の人でも、ストレスのサインに気づき、定期的に解消することで、大きな問題を防ぐことができます。 逆に、ストレスを受けにくい性格の人は、ストレスに気づきにくいため、注意が必要です。
■ストレスのサイン
ストレスが溜まっている時のサインは、生活の中に現れます。
•睡眠の変化:不眠、悪夢、歯ぎしり、寝相が悪くなる、過眠
•食事の変化:食欲不振、過食
■ストレスを「予防」する重要性
ストレスを解消することよりも、ストレスを溜めないように予防することが重要です。
ダイエットや風邪の予防と同じように、元の状態に戻すよりも、そもそもその状態にならないようにするほうが簡単です。 ストレスが溜まってから解消するのは、困難な場合が多いです。
■ストレスを溜めない習慣
ストレスを溜めないためには、無理のない範囲で生活習慣を改善することが大切です。
•「やらないこと」を決める:
- 暴飲暴食、夜更かし、浪費などのマイナスになる習慣を改善する。
- 完全にやめるのではなく、頻度を減らすなど、無理のない目標設定をする。
•「やりたくないこと」への意識を変える:
-「やりたくないこと」が、自分の成長に繋がると考える。
- ストレスに感じるのではなく、前向きな経験と捉える。
■物理的ストレスと心理的ストレスへの対処法
物理的なストレス:
激しい光や音、寒さや暑さなど、体の恒常性を乱す外的刺激。
→対策: ストレスの原因となる環境を改善する、または環境を変える。心理的なストレス:
人間関係のトラブル、仕事や学業のプレッシャーなど、心に負担をかけるもの。
→対策:
1. 予測を立てる: 起こりうるストレスを想定しておくことで、心の準備をする。
2.健康的な生活を送る: ストレス耐性を高めるために、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がける。
正しいストレス解消法 ~考え方編~
下記のような行動は、一見ストレス解消に繋がるように見えても、実は逆効果になる可能性があります。本書はそれぞれの対策も紹介しています。
無理に楽しいことをする: 悲しい時や落ち込んでいる時に、無理に楽しいことをしても、気持ちを切り替えられないばかりか、余計に気分が落ち込む可能性があります。
→対策: マイナス感情に浸ることも必要です。 悲しいときは思い切り泣いたり、泣ける映画を観たりすることで、ストレスを軽減できます。 怒りやイライラを感じているときは、その感情を別の対象に向け、発散させてみましょう。 例えば、ボクシングや格闘ゲームなどが効果的です。忙しくして充実感を得る: 常に忙しくしていると、疲れを感じにくくなることもありますが、心と体に限界が来ることもあります。
→対策: 適度に休息を取り、心身を回復させる時間を確保しましょう。 一流のアスリートでさえ、オフシーズンを設けて休息を取っています。 忙しい時ほど、意識的に休息を取ることが重要です。楽しい記憶を思い出す: 過去の楽しかった記憶を思い出すことは、現状との比較によって、ネガティブな感情を増幅させる可能性があります。
→対策: 過去の楽しかった記憶に執着するのではなく、「今、何ができるか」に目を向けましょう。 散歩、音楽鑑賞、誰かと話すなど、今できることに集中することで、ストレスを軽減できます。人に嫌われないよう振る舞う: 人に嫌われることを恐れて、自分の意見を主張しないと、ストレスが溜まる一方です。
→対策: 周りの意見に耳を傾けつつ、自分の意見もしっかりと主張することが大切です。 「嫌われる勇気」よりも「主張する勇気」を持ちましょう。感情を出さない: 感情を抑圧することは、精神的な負担を増大させる可能性があります。
→対策: 感情を適切に表現することは、ストレス解消に繋がります。 笑いたいときは笑う、泣きたいときは泣く、怒りたいときは怒る、といったように、感情を自然に表現しましょう。 ただし、感情に振り回されず、適切な行動をとることが重要です。嫌なことを忘れる: 嫌なことを無理に忘れようとすると、かえってその記憶が強くなることがあります。
→対策: 嫌なことを忘れようと努力するのではなく、別のことを考える、別の行動に集中することで、意識をそらしましょう。何でもポジティブに考える: ポジティブ思考は、目標達成や失敗からの学びを妨げる可能性があります。
→対策: ポジティブ思考は、適切な場面で使うことが重要です。 失敗から目を背けず、反省し、次に活かすことが大切です。愚痴を言わない: 愚痴を言わないことで、気持ちを吐き出す機会を失い、ストレスが溜まる可能性があります。
→対策: 気持ちを吐き出すことは、ストレス解消に有効です。 しかし、愚痴はほどほどにしましょう。 愚痴を言い過ぎると、ネガティブな感情が増幅し、周りの人にも負担をかける可能性があります。〇〇だったらどうするか、と考える: メンタルが落ち込んでいるときに、他人の考え方を参考にしても、効果は期待できません。
→対策: 他人と比べるのではなく、自分自身の思考を修正することが大切です。 ショックな出来事や腹の立つことがあっても、「まあ、こんなこともあるよな」「相手にも何か理由があるのかも」などと考え方を変えることで、ストレスを軽減できます。何もせずぼーっとする: ぼーっとしていると、脳は休まらず、かえって疲れが溜まる可能性があります。
→対策: ぼーっとするよりも、何かに集中することで、脳を休ませることができます。 散歩、軽い作業、瞑想など、集中できることを行いましょう。人と比較しない: 人と比較することは、ネガティブな感情を生みやすいですが、見方を変えれば、モチベーション向上に繋がることもあります。
→対策: 人と比較する場合は、「都合よく比べる」ことが大切です。 周りの人の良い面を見て、自分も頑張ろうと思えるように、意識的に情報を選びましょう。
正しいストレス解消法 ~行動編~
■親しい人との繋がりを大切にする
人は社会的な生き物なので、周りの人との関わりなしに生きていくのは難しいです。 そして、人間関係はストレスの原因になることもあれば、逆にストレスを軽減してくれることもあります。
ストレスを溜めないためには、親しい人との繋がりを大切にすることが重要です。
信頼できる人に相談することで、気持ちを整理し、客観的な視点を得ることができます。
親しい人と過ごすことで、安心感や幸福感を得ることができます。
孤独感を解消し、ストレスを軽減することができます。
幅広い人と交流することも大切ですが、心を許せる親しい友人や家族との時間を積極的に作ることを意識しましょう。
■気持ちを書き出す
気持ちを書き出すことは、感情を客観視し、ストレスを軽減する効果があります。気持ちを書き出す際に、重要なポイントは下記の通りです。
感情と思考をセットで書き出す。感情だけでなく、その感情に至った思考を書き出すことで、感情を客観的に捉え直すことができます。
具体的に書き出す。「悲しい」「つらい」だけでなく、具体的に何が悲しかったのか、何がつらかったのかを書き出すことで、感情の整理がはかりやすくなります。
定期的に見返す。書き出した内容を定期的に見返すことで、自分の思考パターンや感情の変化に気づくことができます。
■信頼できる人に相談する
一人で悩みを抱え込まずに、信頼できる人に相談することも、ストレス解消に有効な方法です。相談相手を選ぶ際に注意すべき点は下記です。
話を遮らない人
気持ちを否定しない人
主観的なアドバイスをしない人
決めつけて話さない人
上記のような人に相談しても、気持ちが楽にならないばかりか、余計にストレスを感じてしまう可能性があります。 「あなたはどうしたいのか」を尊重してくれる人に相談しましょう。
■睡眠の質とリズムを大切にする
睡眠は、ストレスを解消し、心身を回復させるために不可欠です。 睡眠の質とリズムを改善するためのポイントは下記です。
毎日同じ時間に起床する: 睡眠時間よりも、起床時間を一定にすることが重要です。
寝る前にカフェインやアルコールを避ける
寝る前にリラックスする時間を作る
寝室を快適な環境にする
室温・湿度を調整する
光や音を遮断する
適度な運動をする: ただし、寝る直前の激しい運動は避けましょう。
■楽しいときにお酒を飲む
お酒は、適量であればリラックス効果や気分転換の効果があります。しかし、過度な飲酒は、かえってストレスを増大させる可能性があります。 ストレス解消のために大量に飲酒するのは避け、楽しいときにお酒を楽しむようにしましょう。
■つらいときはSNSから離れる
SNSは、情報収集やコミュニケーションツールとして便利な一方、ストレスの原因になることもあります。 ストレスを感じているときは、SNSから距離を置くことも大切です。 特に、ネガティブな情報や意見を見聞きすると、気持ちが落ち込んでしまう可能性があります。
■ご褒美として買い物をする
衝動買いは、一時的なストレス解消にはなりますが、後悔や経済的な負担に繋がる可能性があります。 買い物をストレス解消に活用する場合は、目標達成のご褒美として買い物をするようにしましょう。
■「適度な運動」を習慣にする
適度な運動は、ストレスホルモンの分泌を抑制し、気分を改善する効果があります。 ストレス解消のために運動する場合は下記の点を意識しましょう。
無理のない運動を選ぶ: ウォーキング、ジョギング、ヨガ、ストレッチなど、自分に合った運動を見つけましょう。
継続できる頻度と時間で運動する: 毎日数分でも良いので、習慣化することが大切です。
運動後は十分な休息を取る
過度な運動は、かえってストレスを増大させる可能性があるので注意が必要です。
■後悔しない範囲で甘いものを食べる
甘いものは、一時的にストレスを軽減する効果がありますが、過剰摂取は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。ストレス解消のために甘いものを食べる場合は、下記の点を意識しましょう。
「今日は気にせず食べる!」と決めて楽しむ: 罪悪感を感じながら食べることは、かえってストレスになります。
摂取量をコントロールする: 食べ過ぎないように注意しましょう。
■依存しないものに没頭する
趣味や娯楽に没頭することは、ストレス解消に有効ですが、依存性のあるものには注意が必要です。 ストレス解消のために何かに没頭する場合は、下記の点を確認しましょう。
依存性がないか: オンラインゲームやSNSなどは、依存性が高いため注意が必要です。
日常生活に影響がないか: 趣味や娯楽に時間を使いすぎて、日常生活に支障が出ないように注意しましょう。
■普段どおり楽しめるときに旅行する
旅行は、気分転換やリフレッシュに効果的ですが、うつ状態がひどいときは避けるようにしましょう。 うつ状態のときは、旅行を楽しむことができず、かえってストレスを感じてしまう可能性があります。
■自分の特性と相談して新しいことを決める
新しいことを始めることは、刺激になり、ストレス解消に繋がることもありますが、誰にでも向いているわけではありません。
新しいことを始める場合は、自分の性格や状況をよく考慮し、無理のない範囲で始めるようにしましょう。
■飲む量と時間帯に注意してコーヒーを飲む
コーヒーに含まれるカフェインは、集中力や気分を高める効果がありますが、過剰摂取は不眠や不安の原因になります。
コーヒーを飲む場合は、下記の点を意識しましょう。
摂取量をコントロールする: 1日3〜5杯程度を目安にしましょう。
寝る前にコーヒーを飲まない: カフェインが睡眠を妨げないように、就寝時間の5時間前までにコーヒーを飲むのをやめましょう。
■体が休まることをする
マッサージは、肉体的疲労の回復に効果的ですが、精神的疲労にはあまり効果がない場合があります。 ストレスで疲れている場合は、マッサージだけでなく、下記のような方法も試してみましょう。
十分な睡眠を取る
栄養バランスの良い食事を摂る
リラックスできる活動をする:瞑想、ヨガ、音楽鑑賞、読書、散歩
■動画や映画は目的を持って観る
動画や映画は、娯楽として楽しむだけでなく、ストレス解消にも役立ちます。動画や映画を観る際は、目的意識を持つことが大切です。
どんな気持ちになりたいか: リラックスしたい、気分転換したい、感動したいなど、目的を明確にすることで、動画を選びやすくなります。
時間を決め、ダラダラと観過ぎない: 時間を無駄にしないように、視聴時間を決めておきましょう。
■外出を生活習慣に取り込む
外出は、太陽光を浴びることで体内時計をリセットし、セロトニンの分泌を促進する効果があります。 また、軽い運動にもなり、気分転換にもなります。外出を習慣にするために下記のような工夫をしてみましょう。
毎日、決まった時間に外出する。例えば、通勤時間や昼休みなどを活用しましょう。
外出と他の行動を組み合わせる。ゴミ出し、買い物、散歩などを習慣に組み込みましょう。
楽しいと思える外出の目的を作る: カフェに行く、ウィンドウショッピングをする、公園を散歩するなど、自分が楽しめる外出を見つけましょう。
ストレス解消に効果的な行動は人それぞれです。 本書で紹介した方法を参考に、自分に合ったストレス解消法を見つけ、実践してみてください。