トラックのPTO(パワーテイクオフ)とは?仕組みと種類、注意点
3級整備士の闇です!
第159回の今回はPTOについて書いていきたいと思います。
〈PTOとは?〉
トラックのPTO(パワーテイクオフ)とは、「Power Take Off」の頭文字を取ったものであり、トラックのエンジンから作業をするために必要ななる動力を取り出すための装置のことです。
エンジンの回転力を油圧の圧力に変えられるために、とても便利な装置なのがPTO。作業をする場合には、荷台を上げ下げして傾けたり、ミキサー車のようにドラム部分を回転させたりといった動作を行うことがありますが、その際には動力源が必要となります。これらに欠かせないのがPTOなのです。
トラックのエンジンというのは、普段は走行するために使用されるのですが、ミキサー車のドラムの回転、あるいは消防車の放水作業時などには、それよりも大きな動力が必要となります。PTO装置搭載のトラックだと、このような作業時にエンジンから動力を取り出すことができるため、動源力を生み出す役割を担っているのです。つまり、作業時にさまざまな機能を発揮するためには、必要不可欠な存在なのがPTOとなります。
乗用車や一般的なトラックにしか乗らないという方には、PTO搭載のトラックはあまり馴染みがないかもしれません。しかし、火災現場での消火活動に必須となる消防車などのように、高所作業時にクレーン車が必要な場合などには、PTO搭載のトラックは非常に役立ちますし、私たちはお世話になることが多いのです。
PTOについて正しく理解しておくことにより、さまざまなメリットを実感することができるのではないでしょうか。PTOが搭載されたトラックも世の中には決して少なくはないため、下記でそんなPTOが搭載されたトラックはどのようなものがあるのかを詳しくご紹介します。
〈PTOが搭載される主なトラック〉
・ユニック車
ユニック車とは、クレーンを装備しているトラックのことを言います。ユニック車というと名称を知らない方でも、おそらくクレーン車と言えばわかる方も多いでしょう。ユニックが商標登録されたことで、ユニック車と呼ばれることが多いですが、基本的にはクレーン車のことだと思っておいて良いです。そんなユニック車も、PTOが搭載されているトラックなのです。
トラックに装備されたクレーンを使うことで、重量物を荷台へと運んでトラックで運搬できるのがユニック車となります。使用用途がとても幅広く、ブームと言われる部分の長さが調節できるように作られているのがユニック車です。
最大で4段階まで伸びるタイプが多いのですが、5段階~6段階に伸びるタイプもあります。ユニック車は高所での作業時などにおいて伸び縮みできるという利点から、とても利便性が高く重宝されているのが特徴です。
・ダンプカー
ダンプカーも、PTOが搭載されたトラックとして知られています。土砂を荷台へ運搬する際にも、PTOが機能を発揮して動力を供給してくれます。PTOが搭載されたダンプカーは、建設現場において欠かせない大きな役割を果たしているのです。
PTOが搭載されているダンプカーの場合、最大で約30トンほどの土砂を荷台部分に積み込むことができます。一気に大量の土砂を運搬することが可能なことから、世界中で活躍しているのがPTO搭載のダンプカーとなります。PTOについてあまりよくわからないという方ならば、ダンプカーがパワフルに稼働するためにはPTOが必要だということを知っておいてください。
・ミキサー車
ミキサー車も、PTOが搭載されたトラックです。建設業界ではお馴染みのミキサー車は、生コンクリートの品質を落とさずに、品質を保ったまま工事現場まで運搬する際に使用される貨物自動車として有名です。ミキサー車のドラム部分を常に回転させるのに必要となるため、PTOはミキサー車にも必須です。PTOのおかげで、品質を落とすことなく遠方へと生コンクリートを運搬することができるのです。
〈PTOの仕組み〉
・スイッチ式
1つ目が「スイッチ式」です。スイッチをONにしてから動作に移るまでのスピードが早く、力の調整もしやすいために運用しやすいことから、いろいろな作業車で利用されているます。ただし、ダンプカーやミキサー車など架装により使い勝手が違います。電磁クラッチ式の場合だと、スイッチでONとOFFに切り替えられます。基本的には、ほとんどの車両で運転席にスイッチがあります。
・レバー式
起動方法2つ目は、「レバー式」です。レバー式の場合だと、操作時にクラッチ操作が必要な車両もあります。レバー式はクラッチの操作に慣れていないと動かなくなってしまうことも考えられます。
そのことから、そういった動かないというアクシデントを避けられるように、試運転を行って作業前に操作確認をしておくのが良いでしょう。また車両を買い替えた場合は操作方法にまだ不慣れな状態ですので、より慎重な操作が求められます。車種によってタイプが若干違うことから丁寧に運転できるようにしてください。
〈PTOの種類〉
・トランスミッションPTO
PTOの種類1つ目が、「トランスミッションPTO」です。
トランスミッションPTOの特徴は、名前からも想像できるとおり、トランスミッションに横付けされているタイプとなります。停車時にのみPTOが作動するのがトランスミッションPTOであり、PTOの種類で最も多いタイプとなっています。ダンプカーやクレーン車、高所作業車に搭載されているのがトランスミッションPTOです。
油圧シリンダーの働きにより、ダンプの荷台を上げ下げする際やユニックのブームを伸ばし吊り荷の積み降ろしといった高所作業時にとても役立ちます。トランスミッションPTOは取り付けるのも比較的容易ですし、コストパフォーマンスにも優れているのが魅力と言えます。
・フライホイールPTO
PTOの種類2つ目が、「フライホイールPTO」です。
フライホイールPTOの特徴は、エンジンに直接取り付けられたタイプであることです。停車時あるいは、走行時でもPTOを起動することが可能なのがフライホイールPTO。走行中でもドラムを回転しながら走行する必要があるミキサー車で用いられているのが、フライホイールPTOなのです。
停車時や走行時に関係なく、温度調整を必要とする冷蔵車や冷凍車にも、フライホイールPTOが使われることがあります。それら以外にも、散水車のように走行しながら動力を必要とする特殊架装においても使用されることも。散水車の場合、エンジンポンプ付きの架装もあるのですが、PTO式散水車だととてもシンプルな構造でメンテナンスしやすいのが魅力的です。
・フルパワーPTO
PTOの種類3つ目が、「フルパワーPTO」です。
フルパワーPTOの特徴は、エンジンとトランスミッションの間に取り付けられている点となります。別名で中挟みPTOとも言われ、名前のとおり大きな動力を生み出す力があります。そのために、停車時にはエンジンの動力を100%取り出すことができるのがフルパワーPTOのメリットです。
ダンプカー、バキュームカー、消防車といった大きな動力を必要とする車両に搭載されているのがフルパワーPTOです。利便性が高くニーズの多いフルパワーPTOなのですが、導入する際に非常に多額のコストがかかるのがネックとなるでしょう。それでも、パワフルな動力で需要のあるフルパワーPTOなので、なくてはならないものなのです。
〈PTOの注意点〉
PTOの注意点として、「PTOを入れたままトラックを走行させると壊れる」ということです。もし、ヒューマンエラーでPTOを入れたままトラックを走行させてしまうと、油圧を高めるための油圧装置が壊れてしまいます。
ユニックなどに使用されるトランスミッションPTOだと、走行時に油圧作動に必要な以上のエンジン動力が発生してしまうことから、想定以上の大きな圧力が油圧装置にかかってしまいます。その結果、油圧モーターあるいは、ポンプが壊れるのです。しかし、ミキサー車のように走行中も荷台のドラムを常に回転させ続けなければならない車両だと、そうはいきません。
ミキサー車のような車両の場合、フライホイールPTOを採用しているので安心。フライホイールPTOならば、走行しながらでもPTOを使うことが可能です。それでも、フライホイールPTO以外のPTOが搭載された車両で走行する場合には、PTOを切ってから走行しなければなりません。中には、AT車のトラックだと自動的にPTOが切れる仕組みを採用しているタイプもあるので、不安な方はそのような自動的に切れるタイプの車両にしてみてはいかがでしょうか。
PTOが最大限の機能を果たすためにも、日頃からの定期検査・メンテナンスは欠かせません。古くなるとさまざまな不具合が生じることも考えられますし、経年劣化で故障が心配という場合には買い替えも検討してみましょう。
今回はPTOについて話させていただきました。
ぜひまた見に来てください!
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