「もったいない」から、肥満児は生まれる
「もったいない」精神が人を太らせるのではないかという説がある。俺が提唱している。
太っている人は、食べ物を残さない。もったいないから、出されたものは全部食べるし、鍋の汁はもちろん雑炊にして最後の一滴まで有効活用する。
無駄が大嫌いなのだ。
ご飯はできたてが美味しいから、冷める前に全部食べる。冷めてしまっては、せっかくの「できたての瞬間」がもったいない。
しかし、これでは一日3回しか来ないご飯の時間が、すぐに終わってしまう。もったいない。だから、おかわりをする。そして、デザートやお菓子を食べる。
旅行に行ったら、限られた時間で名物を食べ尽くさなくてはならない。せっかく旅費をかけて、有給を消化して来ているのだから、最大限に有効活用しなくてはいけない。だから3食満腹食べる。お土産のお菓子もたくさん買い込む。
バイキングに行けば、全種類を食べたい。地元野菜の特製カレーも、自分で茹でるラーメンも、特別おいしい訳でもないのに、食べないと何か損してる気がする。
言い方を変えれば、太っている人は、ケチなのかもしれない。
「せっかくお金を払ってるんだから」、「滅多に来られないから」、「どうせ捨てるだけだから」……
金持ちはケチが多いと聞いたことがある。ケチだからこそ金持ちになれるのだと。
金持ちには太ってる人も多い。これは偶然じゃない気がする。
先日、この「ケチは太る」説を裏付ける重要な事象が、駅前の大戸屋で確認された。
俺が一人で、かあさん煮定食を食べていると、隣に、小4くらいの肥満児を連れた3人家族が座った。俺からは肥満児しか見えなかったが、たぶん両親もぽっちゃりしていた。
家族は店員を呼んで何やら注文した。店員が確認を取る。
「〇〇定食の方、ご飯のサイズが、普通盛り、大盛り、無料でお選びいただけます」
すると少年は、「無料で」と即答した。
3択だと勘違いしたのだ。
どんなサイズかも分からないのに、とりあえず「無料」というワードに、ほとんど反射的に口が動いた。そんな感じだった。
このぽっちゃり少年の言動が、日本国民がどんどん肥えていく現象をすべて説明している気がした。
きっと彼は、家でも「もったいない」、「せっかくだから」と言われ続けているのだろう。
この日も、店員の質問の意味を理解する前に、問答無用で「無料」という架空のオプションを選んでしまった。理由は、せっかく無料があるなら、それを選ばないと、もったいないから。
このような太るための教育を受けた子供たちが、またその子供たちに太り方を教え、日本はどんどん肥満大国になっていく……。
と、あれこれ考えてしまっているのは、妻の残したラーメンを汁まで飲んでしまい、満腹が邪魔して眠れないからだ。