※この卒業文集原稿は、とある兵器遺棄場から発掘された文献です。※
2785年
3年1組 UK-5628
夢を持つことは無駄だ、と教官に言われたのを思い出します。夢を見るためには、今雑念を捨てて戦う義務を果たすべきであり、その先に夢を見る権利があると、教え込まれました。
何となく嫌だと思ってましたが、友達が異星物のレーザーで焼き殺されるのを見た時から、【吐瀉物汚れにより判読不能】いました。
それでも僕は夢を見たい。卒業の門出には口に出させて欲しいと思うのです。【以降、涙の跡(●)が散見。その分原稿用紙のマス目を飛ばして書いていると思われる。】
僕には欲しいものが沢山あります。それを持つことが夢です。
●僕が欲しいのは、まず名前です。昔は、沢山の良い名前があって●、個性を表現したり、渾名をつけたりしていると古い本で読みました。良いなあ●と思って●います。
あとは家族です。●僕には●いやみんなも家族がいま●せん。兵士製造工場が、親でしょうか。後は、教官です。命を生み出してくれて●感謝していますし、訓練をして●頂いて感謝しています。
でも、古い本で読んだ●父親と母親の描写、きょうだいという●存在は、あこがれます。
その古い本は焼かれて、教官に●夢を見るなと焼き捨てて●頂きました●が、【何かを書いたらしいが3行程黒く塗り潰してある】とてもありがたかったです。
そんな僕は、胸を張って、この高校を卒業します。
異星物との戦いに、出てゆきます。
高校まで育てて下さったのは運の良いことです。その幸運を噛み締め、上級戦闘員として戦場に出ます。
この星のために、お世話になった製造工場と教官のために、人類の生存のために、何より【3文字分塗り潰されている】のために、一生懸命銃を持って戦います。
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【掠れた文字で欄外に書かれている】
戦いたくない。死にたくない。
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