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「孤舟」by 渡辺淳一
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大手広告代理店で上席常務執行役員の主人公は、大阪の子会社の社長への転出を打診されたが、それを拒否して60歳で定年退職したとこからの物語でる。
ここまで亭主関白な人間もまだいるのかと思ったが、夫婦の関係や定年後の時間の潰し方について、自分も含めた同世代の人間にはいろいろ考えさせられる内容ではないかと思った。
他人からみれば会社では出世し羨ましいと思うが、本人はまだまだ上を目指せたという後悔があり、定年後も後を引いていることから、人間の欲というのは切りがないものだとつくづく感じる。
妻の邪魔にならないようにできるだけ独立し、同時に自分のやりたいことや生きがいを見つけることの重要性を改めて考えさせられた。
主人公は、デートクラブで若い女性とのデートを楽しむという冒険をしたが、この程度で止めておいて良かったと思う。小説「終わった人」の主人公のように、セカンドライフで働き始めた会社の社長を引き受け、そして個人保証をした結果、1千万円近くの個人資産をなくすという無謀なチャレンジをせずに、まだ常識的だった。
自分としては、この主人公を反面教師として、それなりに面白く読めた。
評価は、4.5/5です。