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男鹿「わたしたちのまちづくりサミット」訪問記(後編)
人口減少が著しい秋田にさまざまなプレイヤーが集結し、まちづくりに関する各地域のチャレンジを発信・共有していくことを目的にした「わたしたちのまちづくりサミット -BEYOND LOCAL-」が2023年3月13日に開催されました。本noteでは、サミットの前に行われた稲とアガベ株式会社代表の岡住修兵氏によるフィールドツアー「稲とアガベ男鹿まち歩き」をレポートしてます。
「わたまちサミット」の様子は前編の記事からどうぞ
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稲とアガベの醸造所見学からスタート。
クラフト サケの醸造工程を見学
フィールドツアーの1か所目の訪問先は、旧男鹿駅舎をリノベーションして作られた稲とアガベの醸造所。
参加者一行は靴を履き替えて、醸造所の中へ。大きなタンクに圧倒されながら、岡住氏からクラフトサケの開発の背景や醸造工程について説明を受けていきます。
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「僕たちは2021年に創業し『その他の醸造酒』をクラフトサケという新しいジャンルの名をつけて製造・販売したりしています。『日本酒(清酒)』と『その他の醸造酒』の違いは、日本酒の定義は米と米麹と水を発酵させて漉(こ)したものと定義されていて、そこから漉す工程を抜けばどぶろく、そこに果実やアガベシロップなどを加えると、『その他の醸造酒』になります。」
「清酒をつくる免許は、既存の酒蔵を買収するなどしないと取得できず、新規参入が難しい状況。そこで僕たちをはじめ、同じような酒造りをしている若手酒蔵と一緒に『クラフトサケブリュワリー協会』を2021年に発足しました。いま日本酒経済特区にするプロジェクトも進行しており、男鹿が新しい日本酒が生まれる場所になってほしいと思っています。」
酒づくりの特徴は「米を磨かず腕を磨くこと」。
「稲とアガベの酒造りのポリシーは米は磨かず腕を磨くこと。日本酒では、米を磨いて雑味につながる米の外側のタンパク質を除くことが一般的ですが、磨くとどうしても酒粕などの副産物も生まれますし、何よりお米がもったいない。雑味となるタンパク質付着の原因は米栽培時の肥料のため、当社では完全無肥料・無農薬の自然栽培の米を使用したり、製造工程も工夫しています。一般的な日本酒では冷水で米を磨きますが、僕たちは浸水温度をもっと高い温度に設定して磨いています。」
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お酒は、その地域を伝えるメディア。
クラフトサケを通じて、男鹿を知ってもらいたい
岡住氏は、酒づくりを通じて「制約があることの重要性」を実感していると言います。
「『その他の醸造酒』での酒造りをするとか、米を必要以上に磨かないで美味しい酒を作るなど、制約がある酒づくりはとても難しいこともありますが、制限があったほうが不思議と新しいアイデアがどんどん生まれていくんです。
選択肢が複数あるとその中で選んでしまい、製品も画一的なものになってしまう。制限があると、限られた選択肢の中で自由な発想が出てきて風味にも地域の個性がでてくるような気がします。そうやって造ったお酒に美味しいと言ってくれる人が集まってきれ、新しい文化が生まれていくのだと思います」
「僕たちはお酒をメディアだと捉えています。ほら、ワインの産地で有名なブルゴーニュやアルザス、ボルドーって、現地に行っていなくても知っていたりしますよね。酒はその地域の冠を背負って世界中に旅立ってくれている存在だと思います。僕は稲とアガベのお酒を通じて男鹿のことを知ってもらいたいと思い、当社は「日本酒特区の新規創出」「男鹿酒シティ構想」「地域の未来を担う人材の創出」、この3つを目指し「男鹿の風土を醸す」ことを経営理念に活動しています」
僕たちの手で、閉まった店舗を1つ1つ開けてゆく
参加者一行は醸造所から出て、次の訪問先に向かうべく屋外へ。
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小雨が降る中醸造所から歩き出すと、岡住氏が軽やかに男鹿のまちについて説明を続けてくれます。
「醸造所前の空き店舗はこの夏にラーメン店としてオープンが決まっています。その向かいの店舗は、商品の冷蔵庫室として活用していて、その先の店舗も、先日購入したんですよ。当社がすごい勢いで男鹿の空き物件を購入するものだから、物件の紹介/仲介の連絡が頻繁に来るようになりました(笑)」
「なぜラーメン店なのかというと、元々この空き店舗はラーメン店だったから。だから、新しいかたちでもう一度復活させたいんですよね。僕たちが1つ1つ、シャッターを開けていきたいんです」
”発酵マヨ”など秋田の食ブランドをここから造る。
この春オープンの食品加工場へ。
醸造所から100m程度進んだ交差点の角に、この春正式オープンとなる食品加工場、SANABURI FACTORYがある。
「秋田県は他の東北地域と比べても加工場が少なく、その差は50倍とも言われています。というのは秋田県は農産物が豊かですから、加工しないでそのままの販売で成り立ってきたからなんです。でも今は違う。秋田県は良い農作物を知ってもらったり、いい製品に加工して付加価値つけてブランド化していく動きがまだ足りていないように感じます」
そこで生まれたのが、酒粕が主原料のマヨネーズ風の調味料「発酵マヨ」。卵黄などを使わず酒粕で代替した商品だ。今後は地域ブランドづくりに役立つフルーツバターも生産予定。
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ここから、栄町通りを歩く。
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数分歩くと、TOMOS CAFEがまさしく男鹿のまちに小さな明かりを灯していました。このカフェは2020年に男鹿の3名がはじめたもの。おいしいコーヒーをはじめ、フードメニューも楽しめる地域の憩いの場所なんだとか。
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TOMOSU CAFEの向かいには、角地に建つ木造2階建洋風旅館の指定重要文化財の森長旅館。この旅館は今後、宿泊施設にリノベーションされていくのだそう。
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ここからさらに数分歩いて、サミットの本会場付近に。
天候が悪かったので近くまでは行かなかったものの、クラフトサケ・ジンを核にした蒸溜所に生まれ変わる元鉄工所跡地を見ることもできました。
男鹿に新しい風が入り込む。
まちを創り出すのは地域内外の熱い共感者たち
ここから数分歩いて、サミットの本会場付近に。
天候が悪かったので近くまでは行かなかったものの、クラフトサケ・ジンを核にした蒸溜所に生まれ変わる元鉄工所跡地を見ることもできました。
フィールドワークの最後、男鹿駅前のまちを紹介し終えた後に岡住氏はこう話します。
「今の男鹿は空き店舗も目立ち、地域のみんなが交流したり、宿泊できる施設もまだ十分ではありません。でも、いま地域内外の仲間とともに、まちの開発がいたるところで進んでいます。ここから宿泊施設や新施設もたくさん増えていく予定ですから、ぜひ1年後にまた男鹿に来てください。景色の変化にきっと驚くと思います」
男鹿のまちづくりの担い手は元々の男鹿の住人や移住者だけではありません。
岡住氏の想いはもちろん男鹿の景色や人々に魅了され、得意分野×できるかたちで男鹿と繋がった人たち、いわゆる”関係人口”の仲間たちが目を輝かせながらまちづくりを推進。この男鹿モデルは地域創生のベンチマーク事例となることに間違いないでしょう。
積雪によって一面真っ白な冬の男鹿も美しいですが、新緑が芽吹いて、空の青色と緑に染まるこれからの男鹿も美しいことでしょう。
ある意味、進化以前の男鹿を知れる今だけ。躍動する男鹿に足を運んでみてみてください。
(Written by Maiko Atsumi)
参考文献: https://project.nikkeibp.co.jp/hitomachi/atcl/column/00009/040700031/
https://zyousai.sakura.ne.jp/mysite1/oga/morityou-ryokan.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000097044.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000097044.html
https://colocal.jp/topics/food-japan/taste/20230126_154512.html
北東北でイノベーションを起こす、 発酵のニュースターを訪ねて〜〈稲とアガベ醸造所〉編〜 | ブルータス| BRUTUS.jp
前編のレポートもぜひお楽しみください