16時3月高2
チェックのスカートは膝上10㎝ブレザーは椅子にひっかけてお気に入りのカーディガンはだぼっと着る。どう振舞えば可愛いかはもうなんとなく習得済みだしちょうどいい色付きリップはポケットの中。帰り道たまにたい焼き屋さんに寄って駄弁ればもう私たちは紛れもなく女子高生。映えを意識しないあえて外したたい焼きあたりが芋っぽくて田舎っぽくて可愛いのだ。知ってる。
先輩たちが卒業していくけど進路の話はタブーで聞けない。まあ一人一人に聞くほど興味もない。でも結局みんなどこにいって何になるつもりなんだろ。
桜が意外とまだ咲かない。退屈。窓、校庭の砂ぱっさぱさ。
卒業式の準備で部活がない。夕日。暇。体育館、階段、汚れた赤い上履きが走り出す。緑色の敷物、こけそうになったら「だっせー」と高山に言われた。うるさ。
なんで私らがパイプ椅子並べなきゃいけないんだろか。先生たちは教育を多用しすぎ。それもはや雑用だから?って思うことたくさんあるわ。体育の時間の雑草抜きとか。あと用務員さんいるのに大掃除やらなきゃいけないのもよくわかんない。
渡り廊下だけが春らしい。日の光、すれ違うともだち、嫌いなあいつ、スカート短すぎて可愛くないよ。
帰りたい。でも帰ってもすることないから帰りたくない。今でいい。ずっと今ならいい。16時37分、ぬるい、何もない、何もしなくていい、放課後、もうテストもない。
「きったな」
は?階段に座ってたら高山にまた余計な事言われた。さっきからうるさいんだけど。
「はいはい」
「帰んないの」
「まだ」
「ふーん」
「…なに」
「いや別に」
じゃあ話しかけてくんなよ。つーかにやにやしてんのきも。
「あー。やっぱ帰る」
さっさと帰っとけばよかった。荷物取りに2組まで行くのめんどくさいな。
え、なに?高山が前に来た。
「あいつすげぇ反省してたから。…それだけ」
はーーーーーー。それが言いたかったんか。喧嘩、彼氏。昨日の夜、気まずい、あ、今日の倦怠感はそこから来てたのか!
心配してくれてるのはわかるんだけどそんな深刻そうな顔して言われたら俺心配してるからな感が出すぎて逆に心配されてない感じがするよ。さっきのにやにやはどこ行った?情緒不安定?
ん、ってだけ、分かったふりして教室まで走った。3階。来年からは2階になるのかあ。あーつかれた。
日誌は書き忘れたけど相方なんとかしといてくれ。寝坊してきて一人で朝礼やらされたから帰りは頼んでいいよね。一言しか喋ったことない斎藤君。ネクタイがいつも曲がってる。
外。さぼり。いっそ気持ちがいい。一人の時はたい焼き屋は寄らない。優等生ごっこしてまっすぐ帰る。帰ったらライン返さなきゃな、めんど。
明日のことすらわからないのにもっと将来を考えて選択しなきゃいけない一年後なんて全くわからない。夢を持ちましょう。あなたたちは何にでもなれます。うるさい。努力は必ず報われるなんて馬鹿な事もう口にしない、てか一度も口にしてことなんてない。口にする人はどんな人生送ってんだか0歳から今までの人生の解説してほしい。成功だけが美しいのなら大体の未来はゴミ。なんでもない、地味で何もないくせにイライラしたりうまくいかない毎日の面白がり方の方を教えてほしい。
ラインの一言変わってんな。
「ごめん」
…そういうところが嫌い。そこ変える気配りできんならさっさと私に直接言ってよ。なに?被害者アピ?さっさと別れ話しなきゃ。
18時。暗い。することない。白い天井、明日の授業なんだっけか。あ、体育グループ分けしなきゃじゃん。あとでかんがえよ。
…はぁーーー。電話すっか。仲直りしよ。
アイスを買います