見出し画像

利用は数百円から!ノーコードで顧客管理システムを構築してみた話


顧客管理システム(CRM)は最終的にとんでもないコストになる

ネットビジネス系事業で働いていた時のこと。

詳細は言えないが、ネットで注文・決済→商品を配送するタイプのBtoC事業だ。数千~数万円の価格の商品を扱っており、顧客数は(見込み客も含めると)数万人規模。

特にWEB広告が集客の柱だと顧客数は爆発的に伸びていく。商材によるが、数万人はすぐ到達するイメージ。

それだけの数になると顧客管理が必要になってくるので、HubSpotなどの顧客管理システム(CRM)を導入することになる。するとどうなるか?


そう、システム利用料高すぎ問題である。

顧客管理システム(CRM)の料金体系は、登録している顧客数に比例して伸びていく。そして数万人の顧客数を抱えていると、10~20万円/月もの料金がかかることになり得る。

これは毎月値上がりする固定費のようなもので、売上に関係なく発生する。
特に低単価の商材だと、採算を合わせるのが非常に辛くなりがち。



ノーコードで顧客管理システム(CRM)を構築できないか?

多くの顧客管理システム(CRM)は非常に高機能だ。顧客データベースからメール配信、LP制作などの販促活動がオールインワンで実現できるようになっている。

しかし、すべての機能を活用している企業が果たしてどれだけいるのだろうか?LPはWordpress、ダッシュボードはLooker Studioなど個々の用途に合わせたツールを使い分けることが多いのではないかと思う。

するとこんな疑問が湧いてくる。「必要な機能だけをノーコードで組み合わせれば、もっとコストカットできるのでは?」


そのような動機でノーコード型CRMが爆誕した。システムの要件は以下の通り。

💡システム要件💡
・顧客データの集約
・顧客対応(メール, 電話)
・主要なKPI用ダッシュボード
・メール配信



ノーコード型CRMで出来ること

顧客情報の一元管理

顧客情報の一元管理|顧客情報・商品情報・注文履歴がまとまっている
顧客情報・商品情報・注文履歴がまとまっている

カスタマーサポートにおいては、顧客情報をすばやく参照し、1タップで連絡が取れる仕組みが重要だ。今回作成したアプリでは、年齢や性別だけでなく、アンケート結果などの定性情報をまとめて確認できる。

社用スマホにインストールすれば、そのまま電話やメールで連絡が取れるため、顧客対応がスムーズになるだろう。

各顧客にメールや電話、SMSを送ることで個別対応が可能
各顧客にメールや電話、SMSを送ることで個別対応が可能


通常は数千~数万人の顧客データを扱うことになるため、フィルター機能で電話番号やメールアドレスなどを検索して利用することになる。

よくある対応は、電話やメールで商品の追加注文や、キャンセルだ。そんなときはアプリにある顧客情報から注文を直接作成・変更することも可能だ。

顧客から新規注文やキャンセルが直接入ったら、手動で注文を入れることもできる
顧客から新規注文やキャンセルが直接入ったら、手動で注文を入れることもできる


データ分析とレポーティング

専用ダッシュボードで主要な数字をモニタリング
専用ダッシュボードで主要な数字をモニタリング

顧客データには分析が必要だ。特に商品別の売上や顧客属性(年齢や性別等)、購買行動(購買頻度や売れ筋商品等)などの情報はパッと見で分かるようにしておかなければならない。毎日確認すべき数字だからだ。

Looker Studioにデータを流し込むことで、自分が最も見やすい形のダッシュボードを作成している。いくつか例をご紹介すると…

粗利益や原価率

日々の売上や粗利をチェックできる。期間や商品でフィルタリングにも対応
日々の売上や粗利をチェックできる。期間や商品でフィルタリングにも対応

注文数や平均単価

注文数や平均単価も重要な指標
注文数や平均単価も重要な指標

客単価や平均購入回数

購入頻度や顧客属性の偏りを見つけ、マーケティングに活かすことができる
購入頻度や顧客属性の偏りを見つけ、マーケティングに活かすことができる

年齢性別などの属性情報だけでなく、所在地などもマッピングできる。
顧客管理システムを導入する最大の理由は、最も収益性の高い顧客群を特定すること。適当にデータを集めて、それっぽいダッシュボードを作成しても意味はない。

そのためには、カスタマーサポートや営業担当など、顧客の解像度が最も高い人からも情報を吸い上げる仕組みが必要だったりする。ただ本記事の主題からは外れるので、詳細は別の記事でお伝えしたいと思う。

ちなみに今回作成したダッシュボードはテンプレートとして公開している(テンプレートはコチラ)。自分用にカスタマイズしたい方は、画面右上のボタンから自分のGoogleアカウントにコピーしてみよう。



効率的なメールマーケティング

メール配信機能を連携させることで、客単価の向上に結びつけることができる
メール配信機能を連携させることで、客単価の向上に結びつけることができる

蓄積した顧客データをメール配信サービスと連携させることで、本格的なメールマーケティングを実現できるようにしている。リピート率や客単価を改善するためだ。

今回採用したのはMailerLiteというメール配信サービス。海外サイトや動画で調べるとほとんどのコンテンツで紹介されているサービスだ。

人気の理由は豊富な無料枠価格の安さ。無料枠でも1,000人まで登録でき、メール通数は2日に1配信できるくらいの配信枠が用意されている。


価格もGrowing Businessプラン(真ん中のプラン)の場合、登録者数5,000人でも¥5,400/月程度の料金で済む。登録者数50,000人になると¥40,000/月程度。

一方のHubSpotやLINE公式アカウントなどのサービスを利用すると、登録者数5,000人程度でも数万円のコストになってくる(プランによってはもっとかかる)。


MailerLiteに話を戻すと、割安ながらメールマーケティングに必要な機能をきちんと備えている。例えば…

  • 特定グループに配信できるセグメント配信

  • A/Bテスト配信

  • メルマガ配信

  • ECサイトとの連携(Shopify等)

  • 決済サービスとの連携(Stripe)

  • などなど…

サービス登録時など、メールを自動配信する必要性はどこかしらにあるので、キャンペーン情報などを送るためのメール配信サービスもついでにあった方がいい。



必要な機能を組み合わせることで柔軟な設計に

Appsheetから外部ツールへ連携することも容易
Appsheetから外部ツールへ連携することも容易

🤖必要なサービス群🤖
アプリUI:Appsheet
データベース:スプレッドシート
BIツール:Looker Studio
メール配信サービス:MailerLite
API連携:Google Apps Script

基本的にはGoogle workspaceのサービス群で構成されており、メール配信だけ外部サービスという構成になっている。

データの流れを追っていくと仕組みが分かりやすくなるので、順にお伝えすると、以下の通りとなる。

📱システムの仕組み📱
1. フォームから顧客情報を登録
2. スプレッドシートに格納
3. Appsheetでデータの閲覧・編集・削除などの操作
4. Looker Studioでデータの集計・可視化
5. MailerLiteでメール配信

ほとんどGoogleプロダクトなので、標準機能で連携可能であるが、MailerLiteだけはAPI連携が必要になる。

顧客データの新規追加をトリガーにして、API連携の処理が走るようになっており、処理はGoogle Apps Script(GAS)で書かれている。MailerLiteのAPIの仕様については公式ドキュメントを参照していただきたい。

コードを書くことに抵抗がある方は、ZapierやMakeなどの自動化ツールがおすすめ。ノーコードで実装することができる。

ちなみに最近のAIはすごい。AI検索エンジンであるFeloにGoogle Apps ScriptでAPI連携の処理を出力してもらったが、そもそも大した処理ではないとは言え、かなり正確なコードを返してくれた。


まとめると、Google workspaceを軸に必要な機能をAPIを通じて加えていけば、独自システムを構築することができる。



費用の大部分はメール配信サービスが占める

今回構築したノーコード型CRMにかかる費用は、Google workspaceとMailerliteのツール代ということになる。ECサイトや決済機能が必要になると思うので、これらの費用も加わることになる。詳細は以下の通り。

Google Workspace Business Starter:
担当者1人当たり¥680/月(年払いの場合)
Mailerlite:
ユーザー数に応じた従量課金(1,000人までなら基本無料、それ以降はユーザー数に応じて。登録ユーザー数が数千人なら月額数千円、数万人なら数万円程度)
その他:
ECサイトや決済サービスの利用料が上乗せされる。

Google製品の多くは無料で使えるが、Appsheetと外部サービスを連携させる場合には、有料プランに加入する必要がある。つまり結論、数百円~数万円という価格レンジとなる。



ノーコード型CRMのテンプレートを配布中

今回作成したアプリはテンプレートとして公開している。MailerLiteとの連携は自身で行っていただく必要があるものの、ゼロから作成するよりかは時短になるかと思う。ぜひコピーして自分に合ったアプリを構築してみて欲しい。



ノーコードで独自システムを構築してみよう

今回は顧客基盤の構築からマーケティング支援までの仕組みを構築した。顧客管理システム(CRM)導入のメリットは以下の通り。

  • 顧客情報の一元管理

  • 顧客との関係構築

  • マーケティング活動の効率化

  • データ分析とレポーティング

  • 顧客サポートの向上

投資対効果は顧客獲得単価やLTVによって変わるので、高額なツール代が費用対効果を圧迫しているなら、構築を検討してはいかがだろうか?



x(旧Twitter)ノーコードの活用事例最新のアップデート情報を発信中。単なる機能解説ではなく、ビジネスサイドから見た際のメリットや注意点も伝えている。DXや業務改善に興味のある方向けです
> @shunsaku_up <

いいなと思ったら応援しよう!