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読書感想文: GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた

最近ネットの記事や仕事関連の本のつまみ食いが多かったのですが、久しぶりに本を読んだので!

著者の方や監修の方のプロフィール、内容のサマリはこちらを参照すると良いと思います。


この本の面白いところは、GitLab所属ではない人が、GitLabの所属の方の監修を得て書いた本であるということです。
7割くらい「ああ、日本に来るような規模のアメリカ系のソフトウェアの会社って割とどこもこうだよね」という、アメリカ系ソフトウェア会社に入社したときのトリセツみたいな内容になっています。

私はグローバルなアメリカ系のソフトウェア会社に10年程度いるのですが、正直この界隈に浸かりすぎていて、こういう内容は出せないんです。
内容が当たり前すぎて、新しく同僚が入ったとしても「どこがわからないか教えて?」と言ってしまいがちですが、この本では日本の会社と考え方がどう違うのかが丁寧に解説されています。

外資系企業に転職を考えている日本在住のITエンジニアの方は一回読んだ方がいい。こういう文化の中で自分がやっていけそうか、やっていけそうにないと思ったのはどんなところか、どんなサポートがあれば乗り越えられそうかを考えたり、面接時の人事だったり所属の上長と議論ができれば、馴染むまでに苦労が減るかもしれません。

共感したことその1: リモートとオフィスのハイブリッドはフルリモートより難しい

実体験として、これはガチです。アメリカ系ソフトウェア会社2社目で体験しました。

当時オフィスのリノベーションがあったのですが、見事にシックハウス症候群になりまして、しばらく出社ができず基本リモートとさせてもらいました。

ミーティングがあると参加者のほとんどはオフィスの会議室に集まっており、たまたま外出先から接続せざるを得なかった人や、私のようにリモートが基本の人たちだけZoomで接続していました。

そうすると会議は会議室だけで進行するんですよ。
画面は共有されないし、声も聞こえづらく、何度言っても改善されないので諦めモードです。あとで議事録を読み返すのですが、文字起こしされていない情報も含めて会議室ではやり取りされているので、キャッチアップが十分ではない。

結果仕事にミスが増えるんです。

その数ヶ月後にコロナ禍になったわけですが、全員が情報の共有がリモート前提で行うため、仕事がスムーズになりました。

共感したことその2: ハイコンテキスト文化とローコンテキスト文化

似たような話がここにまとめられています。

ダンジョン飯のシュローは日本のようなハイコンテキスト文化を代表しています。

  • 空気読む、行間をよむ

  • 察する

  • 暗黙のルールに従う

だから相手であるライオスもこっちの顔色を読んでくれるだろう、という前提で行動し、読んでくれないライオスに対してフラストレーションを持つわけです。

対してライオスはアメリカのようなローコンテキスト文化を代表していて、

  • 言語化

  • 表現されていないものは存在しないもの

なのでシュローが言葉で説明していない思いはそもそも気が付いていないので、「本当はあのとき嫌だった」と言われると「なんでそのときに言わなかったんだ!」と感じるんです。

GitLabやその他グローバルなアメリカ系ソフトウェア会社は基本的にローコンテキスト文化を前提としているんですよ。

ハイコンテキスト文化っていうのは当たり前が同じ人たちが、同じ当たり前の上で行動することを前提とする文化なので、当たり前や文化が違う人たちが混じると成立しにくいんですよね。
ですのでそもそもグローバルな会社はローコンテキスト文化を前提としないと成立しないんだと私は思っています。

ここで注意したいのが、ローコンテキスト文化は思いやりがないってこととは違います。
どちらの文化にも思いやりは必要で、その上でどこまで丁寧に言語化すべきか、というものだと理解いただくと良いと思います。

言語化はトレーニングが必要

ここでもう一つ石を投げ入れるのですが、言語化って訓練が必要ですよね。思い出したのがこの本です。

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』、および感想文からリンクした『子どもにキレちゃう夫をなんとかしたい!』は、言語化能力はトレーニングが必要であること、また言語化しきれないものは存在しないものとしてスルーされてしまうことが表現されています。
これもとてもいい本ですので、『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた』と併せて読んでいただくと良いと思います。

いろんな会社とお仕事をさせていただく機会があるのですが、JTCの中にはごく稀に、「自分たちはお客様だから要望を説明していなくとも察して持ってくるべきだ!」という方々がいらっしゃいます。

そういう方々は、何が必要か、なぜ必要かを聞いても説明ができず答えてくれないので、こちらが何かを出してみて、反応を見ながら欲しいものを探り当てていくようなアプローチでお付き合いせざるを得ないことがあります。

言っていたものと最終的に満足したものは全く違ったよね、ということもあります。

こういうところはこのコミュニケーションパターンが、担当者と上司の間でもそのまま踏襲されていたりすることが多いので、なるほど会社全体が超ハイコンテキスト文化なんだな、と思っています。

そういう企業に所属している方が、いきなりグローバルなアメリカ系ソフトウェア会社への転職は難しいと思います。自分が感じた違和感がなんなのか、それがなぜ問題なのかが説明できないのはお互いにとって致命的だからです。

言語化というスキルの難しいところは、言語化能力が高いか低いかというだけではないところです。言語化能力があるエリアで高くとも、別のエリアではめちゃくちゃ低いということもある通り、対象エリアに対する興味の高さとも関連があります。
そういう意味では言語化のトレーニングというものは一生続くものかもしれませんね。


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