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大企業、ベンチャーを経て、介護業界で起業  直井社長が目指す「やさしい街づくり」とは?


和が家カンパニーズの直井誠社長

大手人材会社リクルートに入社され、数字を追い求める生活を送っていた直井社長。そんな社長がなぜ、数字至上主義とは逆の「やさしい社会」を目指す起業家となり、福祉の世界に飛び込むことになったのでしょうか。現役大学生が現地に赴き直井社長を取材しました。

介護業界への違和感


まずはリクルート時代のお話を聞かせてください。
直井社長:リクルート時代は教育関係の部署に属してました。営業や販促部隊として、毎日終電ギリギリまで働いてとにかく数字を追いかける働き方をしていました。会社から求められる数字を達成することやクライ アントに役に立つ提案する事が自分の使命であるという認識で頑張っていました。
その後、友人と教育 ベンチャー企業も立上げたりもしました。20 代~30 代のうちにガンガン働いたことや目標に向けてあき らめず仕事したことで、「仕事の基礎体力」がつき、結果として独立した今の仕事でも非常に役に立って います。

介護の仕事に興味を持ったきっかけは?
直井社長:
一人親である母親が病気になったこと、それから障害を持つ兄がいたことが福祉に興味を持ったきっかけでした。親と仕事のどちらを優先するかという二択を迫られた時に、自分は親兄弟を大切にしたい と思ったんです。それから今の仕事を辞めて福祉の世界に飛び込んでみようと思いました。

実際の介護業界はいかがでしたか?
直井社長:
しかし、実際に介護施設で働いてみて、本当に自分がしたいと思えるケアとは異なる現実を目の当たりにしました。本来、ご利用者の事を第一に考えてケアをするのが当たり前だと思ったのですが、介護業界 では人間関係の軋轢に悩んだり、数字を最優先したようなケアが行われていました。この現状に疑問を 抱き、自分がしたいケアが出来る施設を立ち上げようと思いました。

介護の世界に携わってみて、今や今後の高齢化社会をどう見ていますか?
直井社長:
日本は今、「超少子超高齢化社会」の一途をたどってます。世界一高齢者が早く進んでます。超高齢化社会の中で問題となっているのが単身高齢者が非常に多くなっている事です。単身高齢者、つ まり「独居住まい」の方が年々増えてます。独居になることで人は「孤立」し、「孤独」になります。こ の孤独の状態が長く続く事で、要介護状態や認知症等になりやすくなります。
そして今現在の周囲の街 は既に「孤独タウン」になってます。高齢化率は 32%を既に超えてます。更にコロナ禍が 3 年ほどあり、 世の中の孤独に拍車をかけました。そんな閉じ籠り大時代に突入しているのが現実です。


日本の福祉の問題点を語る直井社長


和が家グループではどのように高齢化社会を支援したいと思ってますか?
直井社長:
この「孤独状態」の高齢者が再度「人との繋がり」を再獲得して、健康寿命や社会参加寿命を伸ばして、イキイキと生きられる世の中づくりを私達は支援したいと思ってます。「平均寿命」が大切なのではなく、 「健康寿命」であり、更に「社会参加寿命」が大切です。生きているだけではなく、「みんなで支え合っ て笑い合い生きる事が楽しい社会」「お互い許し合い認め合える地域」。そんな共生社会を思い描きながら支援をしたいと思ってます。

和が家グループの目標は、「2030 年の超高齢化社会の地域をケアする集団づくり」です。介護施設があ ることと「ケア」が存在している事は別物です。ただ高齢者を預かるという考えだけでなく、「ケア」を 大切にする場作りであり、地域のケア人材やケアの思想を育成したいと考えています。特に和が家グル ープでは、「認知症ケア」や「共生社会づくり」をテーマに掲げており、地域で多様なケアの実践をして いるところです。詳細は、HP をご覧下さい。

様々な活動をする中で大変だったことはありますか?
直井社長:
ひかりサロン蓮田を始めようとする時に、まずはスーパーの空きスペースを借りるのに苦労しました。高齢者施設をスーパーの中に入れる壁というのが存在し、様々なスーパーと交渉し、ようやく今の場所 (東武ストア蓮田マイン店さん)に決まりました。
又、当初は同じ 2 階のフロアにあるジムに通う女性客や生鮮食品売場のお客様に冷たい目で見られた こともよくありました。「何で杖ついたり、片麻痺がある方が買物しているの?」のような視線です(苦 笑)。でも、年月が経つに連れて、ジムに通う方々の理解を得られ、話しかけてくれたり、スーパーの店 員さんが配慮してくれたりと、「介護福祉の社会化」を推進することで、お互いが認め合える「やさしい 社会」が実現されつつあるなと実感します。
数年の時間はかかりましたが、市民の皆さんが目の前にいる要介護高齢者や障がい者を毎日のように 垣間見る事で、将来の「自分事」として捉えてくれるようになってくれたんだなと。それこそ「共生社会 の見える化」です。福祉現場をスーパーという日常社会に入れた事でそれが共存する意識に昇華できた んだと思います。

現場体験レポート

インタビューの中で、直井社長が運営する「和が家グループ」の3つの施設に実際にお伺いさせていただきました。

ショッピングリハビリ 「ひかりサロン蓮田」
買い物終わりのご利用者の方とお話をしました。「何を買ったんですか?」と聞いたら、「お昼ご飯を買って家で食べるの」と笑顔で話をしてくれました。みんなで仲良く紅葉の壁紙づくりをしていたり、利用 者が持ってきてくれた季節のお花が飾ってあったりで、季節感を感じられるサロンの雰囲気がとても心地よかったです。

昭和の回想デイ「和が家の古民家デイいぶき」
農家の方から借り受けた古民家デイサービスを改修したそうです。庭には大きな桜の木の下にある団欒できるスペースがあります。古民家の中では、時間がゆっくりと流れていて、利用者の方が各々与えら れた役割をこなしながら自由に生活していました。おばあちゃん家に来たような安心感があり、何も知 らない私が利用者の方と緊張せずお話が出来るほどみんなを包み込んでくれる雰囲気が素敵でした。都 会の喧騒に疲れたらまた遊びに来たいと思える空間でした。
こちらのデイでは、下記のスケッターHPから職場体験(お手伝い体験)ができますので、ぜひ応募してみてください。

地域共生型デイ「和が家のくらしとシゴトバデイ うるひら」
私がお伺いした日からデイを利用された方とお話することが出来ました。「お昼は何を食べたんですか?」と聞いたら、「それが忘れちゃうのよね」と仰っておられ、私自身、認知症の方と接したのが初め ての機会だったので、そのやりとりに少し戸惑いました。また、少しだけ悲しい気持ちになったのが正直 な感想でした。いつ身近な人が認知症になって自分が介護する立場になるかわからないので、施設の方とお話するこ とで、その現実を知れたことも学びになりました。

こちらの施設も自然豊かで子供と一緒に遊べるスペースもあり、社会との共生が体現されていました。 利用者の皆さんと一緒に「しその実」を取り出す作業を行い、優しく教えてくれてとても嬉しかったで す。また時間がある時に作業したいなと思いました。



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