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しゃべるピアノ

私の父は家の一角で、革職人として財布等の小物店を構えている。
いっぽう私は、こんな風にしたためられても、発話がロクに出来なくて不登校になった14歳だ。

私の登校を両親が諦めてから、家の古ぼけたピアノで四六時中遊んでいる。

ヨルシカの曲を真似るうちに、自然に旋律が浮かび手が動くようになった。
いつしかピアノは、私の心に共鳴し、気持ちを代弁する存在になった。

父の店は、ある日を境に客が殺到するようになり、東京のメディアが取材に来たりもした。有名人が父の革財布が愛用品とSNSで公言したからだ。

父の作品が注目されて嬉しい。ただ、行き交う人達の喧騒が怖かった。私はピアノで叫んだ。暫くして、熱りが覚め来客が平常に戻り、私は安堵を奏でた。

そんな折、お隣さんが母にこう言ったらしい。

「お宅の人出に戸惑っていた時、お嬢さんのピアノが心に寄り添うようで心強かったの。」

私は上手に話せないけど、私のピアノは雄弁で、人と心を通わせるんだ。

以上で410文字です。これが3作目です。今回も楽しかったです。






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