社会的選択対応・関数について
メカニズムデザインの補足記事です。
次回からの記事の前提知識となります。前提が抜け落ちてると、理解するのに苦労してしまいます。なので僕は「議論の前に前提確認」をよくしてます。いつもではないですが。
参考文献にあるメカニズムデザインの本では社会選択対応・関数が出てくるのですが、聴き慣れてないとたぶん「ふーん」という感じです。
端的に言えば、社会における集合的な目標を表す対応・関数のことです。
社会選択理論
関連するのは社会選択理論と呼ばれる分野です。
社会選択理論は、個人の選好から出発して集団的な決定を下す実際の過程と、そのルールや方法を扱うものである。
簡単な説明
ざっくりとした説明をしていきます。
3つの選択肢A, B, Cから1つを選びたいとします。
3人が各々A, B, Cに対して選好(好み、Preference)を持っているとします。
このとき、
各人の選好をもとにして、
どのような方法を用いて集計するか?(どうやってまとめるの?)
を考えます。
例えば、上の例で3人が全員Aが一番望ましいと考えているのであれば、社会的にもAを選ぶのが良さそうですね。
3人中2人がAを望ましいと考え、1人がBが望ましいと考えてる場合、社会的には何を選ぶのが良いのでしょうか?
よく使われる多数決のルールであれば、Aが選ばれるでしょう。
しかし、他にも選び方のルールは考えられますし、その選び方によっては、選ばれる選択肢が変わるかもしれません。
さて、各人がもつ選好から社会として望ましいものを選び出そうとしています。選び方のルールを、社会的選択対応・関数と呼ぶことにしましょう。
対応というのは、選び出されたものが複数となってもよいときに使います。何か選択肢を選ぶというときに、複数選ばれても結局選べてないじゃないか、ということになりかねないので、関数に絞ってしまってもよいです。
余談ですが、この社会的選択関数として、「いくつかの性質を満たすべき」として「民主主義的な制約をつけよう」、となるんですがその制約が4つほどあり、それらを満たすような関数は存在しない、とアローが言ってるわけです。不可能性定理って呼ばれてます。
余談でした。細かな議論はこれ以上しません。
社会的選択関数と書いてあるときは、集合としての選択をするためのルールだと思ってください。
各人の選好が与えられたときに何かを決めるルールであるということ。
数学の用語で言えば、定義域が各人の選好の集合の直積になり、それらをもとに、何かしらの結果を1つ定める関数である。ということです。
メカニズムデザインとの関係
少し前の記事でインセンティブの話をしたと思います。
社会的選択関数が「各人の選好が与えられたとき」の話ですが、
どうやって各人の選好がわかるのでしょうか?
また、仮に口頭で「これが好き!」と言ってもらったとします。
そこで、各人が本当に自分の選好を正直にいうのでしょうか?虚偽の選好をいうことはないのでしょうか?
これを考えるのがまさにメカニズムデザインの分野です。
社会的選択関数は各人の選好から何らかの社会的に望ましい結果を出します。この意味で、社会的な目的・目標といえます。
しかし、この場合に各人のインセンティブを考慮しないと、その望ましい結果を達成できないことがあります。
そこで、メカニズム(制度)という手段を用いて、インセンティブを考慮した上で、社会的に望ましい結果を達成しようとします。
なんとなくわかってもらえたでしょうか。細かい点には目を瞑ってくださいませ。
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参考文献
では、また、別記事でお会いしましょう。