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STAGE5  「セカンドオピニオン」

前回のお話


登場人物

k (もしくは私)
投稿主。株式会社のまとめ役的なポジション。
飲み会の日に体調が悪くなり、病院に行ったところ心臓の前に約10cmの腫瘍(胸腺腫)が見つかる。

相方
kの友達、そしてkの会社の代表取締役。
頭を使う前に手や口が出るタイプ。

メガネ先生 
kの診察を担当している外科医の先生。


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少し唖然としていると、メガネ先生は続けます。

「我々のチームスローガンは『自分の家族にする手術を』を掲げています。
何がその人にとって一番いい選択なのかを常に考えております。
今、kさんの事は看護師や教授含めこの第二外科の全員が知っています。

『うちで受け持つ事になったら全員褌(ふんどし)の紐を締め直すぞ!』

と我々もカンファレンスで話をしています。それだけ我々も難しい大手術です。だからこそ、我々も全力持って対応させていただきます。
そして僕自身、手術には参加こそしませんが発見から今まで担当させていただいたからには全力で対応したいと考えてます。」

メガネ先生は真っ直ぐ私を見つめながら答えてくれました。
この話を聞いて、「ここの病院は真剣に向き合ってくれるだろうな」
とは感じることができました。
その後、メガネ先生と相談した結果、手術日の関係もあるので入院の予約はしておく事に。中旬の12日からの入院予約をしておく事となりました。

あとは私がどうするかなのですが、セカンドオピニオンをするにしても病院からの招待状?紹介?を受理された後、そこから予約→診察の流れです。
その紹介もいっぺんに出す事が出来ないので、一番返事が早そうながんセンターに話をするようにしました。
そこから他2病院に随時聞いていく感じです。


メガネ先生の話の後、私は入院の予約を取る手続きを進めるため入院受付係の方に足を進めました。

「十中八九癌です。」

一人で順番待ちしている時に、先程言われたこの一言が頭の中には残っておりました。
今までは見向きもしなかったであろう「がんと診断されたあなたへ」のようなポスターも目に止まります。 私の後ろの席には大学生くらいの女の子とその人の母親らしき人が座っていました。女の子はがっくりと肩を落としており、お母さんは何か励まそうにも何を言えばいいのかわからない。そのような雰囲気に私は思えました。

「この後ろの子もガンなのだろうか?」

何気ないそんな日常の光景も、その時は全てが「がん」という物に付随した考えになっていたのを覚えています。

待っている20分くらいの間でしょうか。。。様々な事を考えてました。

「このまま病に侵されるんだろうか。」
「まあ、好きに生きた人生だったかなー。」
「抗がん剤とかきついんかなー。きついんだろうなー。。」
「これで彼女とかいたら泣いてくれるのかねー。まあ俺には関係ない話や笑」

そんなこんなで色々考えていたら、少し前に保険屋と話しした事を思い出しました。

「kさん、障害保険と入院保険には加入されてますね!どうです?絶対悪い保険じゃないので新たに保険契約してくれませんか?」

結果、私は入りませんでした。
というか入れませんでした。

実は私、大人になってとあるきっかけがあり精神科で診断をもらった事があります。
結果、ADHDの診断です。
俗にいう『大人になってわかった発達障害』ってやつです。何度か精神科の方には通ったのですが、その時処方された薬が強く、日中眠気がすごくなったのでやめました。その後は精神科に通うことはなかったのですが、

精神科で診断がついたら保険に入る事自体が厳しくなります

うつ病なんかも然りです。
過去数年以内に、精神科の受診や診断がおりた人は保険の加入条件から弾かれてしまうのです。
我々がん患者も、完治から数年経たないと保険に入れませんよね?それと一緒です。いや、保険屋曰く
「精神科の診断は保険会社が一番嫌がる項目。診断ついたら金融で言うならブラックに乗るのと同意義。」
らしいです。

もし、これを読んだ方で精神科を受けようとしてる方。
診断がつく前に入れる保険は入りましょう。そして担当の保険屋さんと話を煮詰めて精神科受診に行ってください。。


話しは少し外れましたが、ふとこの事を思い出した私はある不安が過りました。

「待てよ、、、、そういえば、、、、、、」

私の保険の考え方は
「かけた分の保険は取り返す」
「可能性の低い保険には入らない」
と考えてました。上記で入ろうとした保険も精神障害になった時の金額が良く、ワンチャン当たれば元どころじゃない金額がおりたからです。
この時まだ36。がん保険はまだまだ先の話とほったらかしにしてました。


「がん保険入ってねえじゃねーーーーか!もったいなーーー!」

憂鬱な気分から一転、怒りに似た感情と理不尽さや喪失感といった感情が頭を巡りに巡りました。笑 いや、普通はそれどころじゃないとツッコミ入れたくなりますw w w  

この時の感情は、、、

「前乗りで飛行機乗って県外のライブ見に行ったら、ライブは先週でもう終わってた」
「新車でアルファード買って、車両保険に入る前に車上荒らしで車が盗まれた」

ような感覚です笑

そうこうしてたら受付に呼ばれ、がん申告された時とは別の感情に支配されながら淡々と受付を済ませました。



病院を出た私はとりあえず会社に戻り報告を。

たぶん癌で間違いない事。手術ではなく検査手術をした後に今後の方針を決める事。 中旬に入院をする事。放射線や抗がん剤を使うかもしれない事。そして、相当難しい手術になるだろうとの事。。。

「そんな状況なのに手術日伸ばすんか?大丈夫なんか?あの病院。。。」

開口一番に相方から言われました。確かに私も予想外の一言だったのですが、メガネ先生との一連のやり取りを話したら「お前がいいならいいけど、自分の命に関わる事なんやから、お前はまだ貪欲に言っていいと思うぞ」と返しをされた後、少し話をして相方との話は終わりました。

軽く書類の確認作業だったり今後の仕事の流れを確認した後は、私自身でも次の病院の手配を進めるべく電話等で色々調べました。
何せあと生検手術まで二週間くらいしか時間がありません。調べるだけ調べて、段取りだけ今の病院に取り付けてもらおうと当時は考えてました。

ですが、セカンドオピニオンはそう甘くはありませんでした。。
まず第一候補の○大病院。病院に電話繋いで話をすると
「病院からの紹介状を受け取って、そこから早くても二週間くらいはお時間いただきます。」
との。さらに
「最短でこのくらいの期間ですが、今は患者さんが多い為もっとお待ちになるかもしれません。」
この話を聞き、手術前の○大病院でのセカンドオピニオンは諦めなければいけませんでした。そこからさらに○大病院の電話担当看護師と話したのですが、『セカンドオピニオンはあくまでも意見を提示して参考にしてもらう』だけであるとのこと。 

これは勘違いされてる方も多いのではないでしょうか?

セカンドオピニオンは「こういう方法もあるよ」と別病院が打診するだけで、その別病院では治療しません。

そして、

保険適応外

です。要は
“別の病院の意見聞きたければ自分で金を出して聞きにいけ”
というスタンスです。
そして、仮にセカンドオピニオンで話しを聞いたところがメインの病院より設備や治療法が整っていたとしても、別病院で治療はできません。あくまでも最初に紹介状を書いたメインの病院で治療することになるのです。

“じゃあ別病院で治療受けたいならどうすればいいの?”

その場合、新たに別病院に1から診察と検査に行かなくてはいけません。
そして、このような大きな病院の場合は紹介状がないと診察はしてくれないはずです。なので、病院を変えたい場合は紹介状からやり直しです。
結論、

「最初の病院が嫌なら次が見つかるまで病気は放置し我慢しろ。」

というのが日本の保険医療の制度です。
いわゆる病院ガチャみたいなものです。最初に行った病院がどのようなところかで大きく変わってきます。
私は運が良かったのでしょう。かかりつけ医から紹介された所の一発目で胸腺腫の治療が出来る病院に当たったのですから。。


全ての話を聞いて、ここでのセカンドオピニオンは断念することにしました。生検手術を延期してまで他の話を聞きに行こうとは思えませんでした。
△△病院も似たような感じで、そうこうしてたら病院側からがんセンターはダメだったとの報告の連絡が来ました。

そうして私は治療方針の意思決定を伝えに後日病院に向かいました。


「先生、ここで決めます。よろしくお願いします」

「kさんわかりました。私も含め我々一同全力を尽くします!一緒に頑張りましょう!」

メガネ先生は頷きそう返事しました。



今回はここまでです。

今までは診察や会話がメインでした。
次からは検査入院(生検手術)の事を書いていく予定です。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

よければ、次回書いたやつも読んでくれたら嬉しいです。

K


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