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会いたい人『福も来た』(パンとスープと猫日和シリーズ)

何度も同じ本や、同じシリーズを読む時に思うこと。それは「あの人に会いたい」だったりして。

例えば森博嗣のS&Mシリーズは「犀川先生に会いたい」と思って開く。萌絵ちゃんと仲良くしてると「よしよし」と頷き、無神経な言行に「おいコラ!」と突っこみつつ笑う。本人けっこう繊細なくせにデリカシーがない犀川先生が好きだ。

この「パンとスープとネコ日和」のシリーズもみんなに会いたくて開いてる気がする。みんな好ましいけど特にしまちゃんが好き!本当にかわいいし、友達になりたい。

そんなわけで『福も来た―パンとスープとネコ日和―』読みました~!
ついでに『優しい言葉』『婚約迷走中』も読んだよ!読み始めたらあっという間だった!


主人公であるアキコさんの日常を隣で眺めるように進んでいくこのシリーズは、大きなトラブルやどんでん返しな展開は全然ない。とても穏やかにも思える「日常」の風景。
そんな中で、身体に染みていくような……野菜と出汁の旨味をしっかり感じる、身体に優しい食事を取った後みたいな気持ち良さがあって……たまらんのですよ!


にのまえ結構田舎に住んでるので、ご近所には普通に農家さんがいる。新鮮な野菜は手に入りやすい方だし、地元の素材にこだわったお店もチラホラあって。
にのまえ都会に住んだこともあるから、シナシナなほうれん草とか表面干からびた大根が平然と並んでるスーパーも知ってる。

都会に住んで、田舎の食材の贅沢さを痛感したね。
キチンと育った新鮮な野菜はとっても美味しいし、力になる。お腹いっぱい食べても身体が軽くなっていくみたいな、スッキリした感じでとても気持ちがいい。

最近は冷凍の技術も上がって美味しさは保てるようになっている気がするけど、あの「あぁ、生きてる……」と思えるような心地よい満腹感は、新鮮な食材ならではの良さなのだろうなぁ。
もちろん、それを引き立たせる料理人の技術もあってこそ、です!

そんな「心も身体も満足」って感じの食事をいただいた後のような気持ちになれる、パンとスープとネコ日和。すごい好き。

でもこれは、にのまえが「心も身体も満足する食事」を知ってるから、アキコさんのお店のご飯をリアルに感じることが出来たのだと思ったのね。
そういった経験というか、概念というか。その下地がない人にとってこのお話は少しファンタジーみたいに感じるのかなって。ダンジョン飯みたいな、ああいうグルメパロディ物のような。

それはそれで面白そうだなって。

にのまえはもう知っちゃってるから、出来ないじゃない「知らない体験」っていうのはさ。
でも知らない人は知れるチャンスがあるのよ、そういうお店探して食べてみて「あぁアキコさんが大事にしてて、お客さんが求めてたご飯はこういう事だったのか」って。
それってすごく特別な体験。
いいな、それって。そういうのってとても素敵。

小説の素晴しさはそうやって「知らないこと」を身近に感じて、そのうち本当に体験した時「これだったのか!」ってさらに価値が上乗せされることだと思うの。

だからボクはハワイに行きたいし、ローマに行きたいし、軍艦島に行きたい。本の中で何回も訪れているから。
そこの空気を吸って初めて「これだったのか!」ってなりたい。

でも今は一刻も早く新鮮な素材を丁寧に料理する、美味しいご飯屋さんに行きたい。
美味しいって幸せだよね。
本当に、そう思う。


このシリーズは生きていくこととご飯の素敵さと、言葉や対話の素晴しさを描いていると思うのね。
言葉だけで伝わらない「表情」「佇まい」の「伝わる」力も対話には付き物だし。それらの大切さも何度も書いてある。
しまちゃんが素敵なのはそういう部分なんだよなぁ。

そして何より、豊かな生活には猫の存在が大きく関わってる。
みんな色々あって、大変で、そんな中で猫が寄り添って生きていてくれる。それがものすごく救いになったりして。いやぁ猫って偉大よ、本当。

じんわりほっこり、美味しいスープみたいなこのシリーズが大好きです!!

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