#85 花巻のクリスチャン【宮沢賢治とエミリィ・ディキンスン その23】
(続き)
○ 花巻のクリスチャン
宮沢賢治の家の周辺には、島栄蔵や中村陸郎など、花巻のクリスチャン達も住んでいました。賢治はそれらのクリスチャンとも親しく、島からはキリスト教関係の本や内村鑑三の「聖書之研究」などを借りていたとも言われています。また、羅須地人協会で賢治との交流があった女性・高瀬露もまた、クリスチャンでした。
これまで見てきたように、賢治の周囲には、アメリカへ留学した人物や、留学後に国内外で活躍した人物、キリスト教を信仰し指導的な立場であった人々も多くいました。幅広い興味を持ち続けていた賢治が、そのような環境の中で、アメリカやキリスト教を身近なものとして興味や理解を深めていった可能性も高いと思われます。仏教、特に法華経が、賢治に対して与えた影響については様々な研究がなされていますが、それらと比べると、アメリカやキリスト教、そしてそれらに関わる人々から賢治が受けた影響についての研究は多くありません。
身近なクリスチャンである斎藤宗次郎が、花巻の人々に迫害された姿を見ているため、町の名士だった宮澤家の人々にとって、キリスト教はデリケートな存在だったと予想されます。賢治の浄土真宗から日蓮宗への改宗が大騒動となった事を考えても、賢治にとっても、キリスト教はデリケートなテーマであったように思われます。
賢治とキリスト教やアメリカの関係があまり考察されてこなかった理由は様々あると思われますが、大変に興味深いテーマではないでしょうか。
(続く)
2023(令和5)年10月24日(火)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?