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股関節内転筋を効果的に鍛える

はじめに

股関節内転筋、特に長内転筋の機能不全がおこると
鼠径部痛や運動制限の原因となります

また、歩行や走行、動作時の股関節の安定にも
内転筋は重要です

そのため
最適な内転筋強化運動を
選択したいところです

今回は、Delmoreらによる
「長内転筋の活動レベル:股関節運動における筋電図学的分析」
を参考に
様々な股関節運動における
長内転筋の活性化レベルについて
解説していきます

この研究結果を踏まえ
より効果的なプログラムの立案に
役立てていきましょう

長内転筋の活性化に最適な運動は?

Delmoreらは
一般的な6つの股関節内転運動における
長内転筋の筋活動レベルを筋電図を用いて測定し
その活性化レベルの違いを比較検討しました

対象となった運動は

・側臥位股関節内転
・ボールスクイーズ
・回旋スクワット
・スイスボール上での立位股関節内転
・相撲スクワット
・サイドランジ

の6つです

この研究の結果
側臥位股関節内転運動が
他のどの運動よりも
高い長内転筋の筋活動レベルを示すことが
明らかになりました

続いてボールスクイーズが
2番目に高い活性化レベルを示し
回旋スクワット、相撲スクワット、スイスボール上での立位股関節内転、サイドランジ
よりも有意に高い値を示しました

なぜ側臥位股関節内転やボールスクイーズが優れているのか?

側臥位股関節内転運動
長内転筋を効果的に分離し
他の股関節筋の
代償的な活動を抑えることができるため
高い活性化レベルを示すと考えられています

側臥位では
骨盤が安定するため
長内転筋は他の筋肉の助けを借りずに
股関節内転動作を行うことができます

一方、他の運動では
複数の関節や筋肉が関与するため
長内転筋への負荷が
分散してしまう可能性があります

ボールスクイーズ
側臥位股関節内転運動に次いで
高い長内転筋の活性化レベルを示しました

これは、Delahuntらによる
先行研究とも一致しており
ボールスクイーズが
股関節内転筋の活性化に有効であることを
支持する結果となっています

Delahuntらは
股関節内転筋スクイーズテストにおいて
股関節屈曲角度が
筋活動き与える影響について調査しました

その結果
45°の股関節屈曲位で実施した際に
他の角度(0°や90°)と比較して
有意に高い値が得られました

彼らは
45°の股関節屈曲位が有効である理由として
以下の3点を挙げています

筋活動の高さ:
45°の股関節屈曲位において、内転筋群はより効率的に収縮し、大きな力を発揮できるため、筋活動が高くなると考えられます。

長内転筋の機能的役割
長内転筋は、股関節屈曲角度に応じて、股関節屈筋または股関節伸筋の補助として働くことが知られています。45°の肢位では、長内転筋は股関節屈筋として働き、内転筋群全体の活動を高めている可能性があります。

機能的な肢位
45°の股関節屈曲位は、走行中の立脚初期における股関節角度とほぼ一致し、動的な体重支持活動における鼠径部への負荷を再現しています。つまり、この肢位はスポーツ動作に関連性の高い、内転筋群の機能に適した肢位であると考えられます。

これらの理由から
ボールスクイーズは
股関節内転筋
特に長内転筋に有効な運動であると考えられます

どのように運動選択するかのポイント

Delmoreらの研究では
運動が複雑になり
股関節以外の関節や筋肉が関与するほど
長内転筋の活性化レベルは
低下する傾向が見られました

これは、運動が複雑になるにつれて
多くの関節運動を制御するために
より多くの筋肉が動員されるためだと考えられます

結果として
長内転筋以外の筋肉の活動が増加し
相対的に長内転筋への負荷が減少してしまう
と考えられます

例えば
立位での運動では
股関節の動きに加えて
体幹や膝関節の安定性も必要となるため
多くの筋肉が協調して働く必要があります

一方、側臥位股関節内転のように
動作が単関節運動に限定される運動では
長内転筋がより集中的に使用されます

このことから
介入の初期段階では
側臥位股関節内転やボールスクイーズのように
長内転筋を効果的に
集中的に活性化できる運動を選択し

経過に合わせて
立位での運動など
より機能的な運動へと
移行していくことがいいかと思います

おわりに

臨床現場では
クライアントの状態や運動の目的などを総合的に判断し
最適な運動を選択していくことが重要です

クライアントにあった
内転筋の運動選択にぜひお役にいただければ何よりです

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