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「有料級」セラピストのための姿勢の神経制御
「頑張って姿勢を正しているのに、すぐに元に戻ってしまう…」
そんなクライアントの声を聞くことはありますよね?
あなたがクライアントに対して
筋トレやストレッチだけを提供している
そういった場合は
姿勢制御が無意識下で行われていることを
理解していないから
というのが僕の意見です
意識的な努力だけでは
姿勢を根本的に改善することは難しいです
この記事では
姿勢制御の神経メカニズムを解説し
筋トレやストレッチだけでなく
姿勢を良くするための指導を
神経に基づいていくための
知識を提供していこうと
思います
姿勢制御の進化
姿勢制御には
① 体重支持のための筋張力
② バランス調節のための平衡機能
③ 頭位安定のための感覚統合
という3つの要素が不可欠です
これらの要素は
脊椎動物の進化とともに段階的に発達してきました
魚類は
水中生活のため
主に浮力によって体重を支えています
そのため
姿勢筋緊張はあまり発達していません
一方で
陸上生活をする爬虫類は
重力に抗うために姿勢筋緊張を発達させました
さらに
哺乳類では
多様な環境変化に対応するために
より高度な平衡機能を獲得しました
ヒトは
二足歩行という独自の移動様式を獲得したことで
姿勢制御システムはさらに進化しました
骨盤の構造変化や下肢筋群の発達により
直立姿勢を維持することが可能になったのです
この直立姿勢は
重心の真上に頭部が位置するため
地上生活において最も効率的な姿勢と言えます
ヒトの姿勢発達
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ヒトの姿勢発達は
進化の過程を辿るように
抗重力能力を獲得していきました
胎児のときには
羊水の中で
生後に必要な
基本的な運動パターンが発達します
出生後は
首のすわり、寝返り、お座り、ハイハイ、つかまり立ち
そして最終的に歩行へと
段階的に抗重力能力を高めていきます
この発達過程において
脊髄、脳幹、小脳、大脳皮質といった
神経系が重要な役割を果たします
脊髄は
基本的な運動パターンを生成する中枢であり
脳幹は
姿勢制御の中核を担っています
小脳は
運動の誤差を修正し
スムーズな動きを可能にします
大脳基底核は
学習した運動パターンを記憶し
自動的に実行し
スムーズな姿勢の切り替えや
習慣化に関わります
そして
大脳皮質は
意識的な運動や高度な認知機能を制御します
姿勢制御の神経機構
ヒトの姿勢制御は
脳幹と高次脳機能の
ネットワークによって実現されています
1. 脳幹レベルの制御
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脳幹には
姿勢制御に関わる重要な神経伝達経路が存在します
網様体脊髄路
全身の筋緊張を調整し、姿勢の安定性を保ちます前庭脊髄路:
内耳からの平衡感覚情報に基づき、抗重力筋を活性化し、バランスを維持します視蓋脊髄路:
視覚情報に基づき、眼球運動と頭頸部の動きを協調させ、視線を安定させます
これらの経路は
視覚、聴覚、平衡感覚、体性感覚など
様々な感覚情報を統合し
状況に応じて適切な姿勢制御を行っています
2. 高次脳機能による制御:
大脳皮質は
意識的な運動や認知機能を制御するだけでなく
姿勢制御にも深く関わっています
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頭頂側頭連合野:
体性感覚、視覚、平衡感覚などの情報を統合し
「身体図式」と呼ばれる
自己身体と空間の認知情報を生成します
これで周囲の環境や自身の体の状態を把握し
適切な姿勢をとることができます補足運動野・運動前野:
目的の動作に合わせた
姿勢制御プログラムを作成し
予期的な姿勢調節を可能にします小脳
運動の誤差を検出し
補正情報を生成することで
滑らかで正確な姿勢制御を可能にします基底核:
過去の経験や学習に基づいて
効率的な姿勢制御パターンを自動化します
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姿勢指導のポイント
クライアントの姿勢を効果的に改善するためには
神経系の働きを理解した上で指導を行うことが重要です
1. 脳幹レベルの姿勢制御機能を高める
姿勢制御の土台となるのは
脳幹の反射的なメカニズム
網様体脊髄路、前庭脊髄路、視蓋脊髄路
といった神経伝達経路を活性化することで
無意識下の姿勢制御機能を高めることができるのです
網様体脊髄路へのアプローチ
筋緊張のバランスを整え
姿勢の安定性を向上させるためには
全身の筋肉を満遍なく使う
エクササイズが効果的
ヨガ、ピラティス、太極拳のように
ゆっくりとした動きの中で
全身の筋肉を協調的に動かすことで
網様体脊髄路の活性化に
また
座位や立位での静的ストレッチのように
特定の筋肉の緊張を緩和することは
筋のバランスを整えることが重要です前庭脊髄路へのアプローチ:
平衡感覚を刺激することで
前庭脊髄路を活性化し
バランス能力の向上に繋げることができます
バランスボールやバランスマットなどの
不安定な足場を利用したエクササイズ
目隠しでのエクササイズ、
スラックラインなどは
内耳の平衡感覚器を刺激し
反射的な姿勢調整能力を高めます視蓋脊髄路へのアプローチ:
視覚情報を活用したエクササイズも
効果的です
例えば
目標物に視線を固定しながら歩く
動く目標物を追視する
といったトレーニングは
視覚情報と頭頸部の動きの協調性を高め
視蓋脊髄路の活性化を促します
これらのアプローチは
無意識的な姿勢制御機能を
高める土台作りとなります
脳幹レベルでの姿勢制御が
スムーズに行われるようになれば
意識的な努力を軽減し
より自然で楽な姿勢になります
2. 無意識の姿勢制御を意識化する
無意識の姿勢制御を意識化する:
クライアント自身が無意識のうちに
どのような姿勢をとっているのかを
認識させることが重要です
鏡や動画などを活用し
客観的に姿勢を確認させましょう多様な感覚情報を活用する:
視覚、聴覚、平衡感覚、体性感覚など
様々な感覚情報を刺激することで
姿勢制御システムの活性化を促します反復練習と習慣化:
正しい姿勢を維持するためには
反復練習が不可欠です
日常生活の中でも正しい姿勢を意識するよう指導し
習慣化を促しましょう
まとめ
姿勢制御は
脳と神経系が複雑に連携した
無意識的なシステムによって行われています
このシステムを理解し
適切な指導を行うことが
効果的な姿勢改善の上では重要と考えています
私の初の著書が発売されます
上記の内容のエクササイズの実例を
どのように組み立てるか
各姿勢不良に対して
具体的にどうするのか?
書き下ろしました
現在、予予約受付を開始しています!
予約が多ければ多いほど、本が多くの方の手に届きやすくなります。
皆さまから、ぜひ予約していただけると嬉しいです!