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腹筋トレーニングのまとめ~エビデンスに基づく介入~
腹筋トレーニング
頭を上げるシットアップは腰に悪いと
聞いたことがある・・・
では何がいいのか?プランク??
このようにクライアントに腹筋を処方するときに
どのように腹筋の運動を選べいいのか
どんな運動が効果があるのか
知っておきたいところです
そこで、今回は
セラピストやインストラクターさん向けに
腹筋トレーニングの効果を
最大限に引き出すためのエビデンスに基づいた
アプローチをどのようにするかを
探っていきました
Ultrasonography and Electromyography Activity of Abdominal Muscles in Different Abdominal Exercises: A Systematic Review
「超音波検査と筋電図による異なる腹筋運動における腹筋活動:システマティックレビュー」
に書かれている内容をもとに
クライアントに最適な腹筋トレーニングを
処方するためのポイントを解説していきます
腹筋の機能と運動の種類
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効果的にトレーニングするには腹筋群の
腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋
それぞれの機能と
筋肉に最適な運動の種類を
理解することからです
このレビューで取り上げられた研究では
超音波検査や筋電図を用いて
様々な腹筋運動における筋活動が評価されています
1.腹直筋 (Rectus Abdominis)
「機能」
体幹の屈曲
つまり、上体を前に曲げる動作の主要な役割を担います
脊柱の安定化にも貢献します
「最適な運動の種類」
クランチ: 腹直筋を効果的に収縮させることができます
上体を完全に起こすシットアップよりも
腰への負担が少ないため、おすすめです
リバースクランチ:下半身を持ち上げることで
腹直筋下部に刺激を集中させることができます
ケーブルクランチ: ウェイトスタックマシンや
レジスタンスバンドを用いて負荷をかけることで
より強い刺激を与えることができます
2.外腹斜筋 (External Obliques)
「機能」
体幹の側屈、回旋、脊柱の安定化
体幹を横に曲げたり
捻ったりする動作に関与します
「最適な運動の種類」
サイドベンド: ダンベルやメディシンボール
を持って体幹を横に曲げることで
外腹斜筋を鍛えることができます
ロシアンツイスト: 体幹を左右に捻ることで
外腹斜筋と内腹斜筋を
同時に鍛えることができます
バイシクルクランチ: 自転車を漕ぐような動作で
外腹斜筋と内腹斜筋に刺激を与えます
ウッドチョップ: ケーブルマシンや
レジスタンスバンドを用いて
体幹を斜めに動かすことで
外腹斜筋を効果的に鍛えることができます
3.内腹斜筋 (Internal Obliques)
「機能」
外腹斜筋と同様に
体幹の側屈、回旋、脊柱の安定化に関与します
外腹斜筋と協調して体幹の動きをコントロールします
「最適な運動の種類」
外腹斜筋のトレーニングと
同様のエクササイズが効果的です
特に、体幹を捻る動作を含む
ロシアンツイストやバイシクルクランチは
内腹斜筋にも強い刺激を与えます
リバースロシアンツイスト: 下半身を固定し
上半身を捻ることで
より内腹斜筋に負荷をかけることができます
パイククランチ:足を固定し
上半身を持ち上げて膝に近づけることで
腹直筋だけでなく
内腹斜筋も効果的に鍛えることができます
4.腹横筋 (Transverse Abdominis)
「機能」
腹腔内圧を高め
脊柱を安定させる役割を担う
インナーマッスルです
姿勢の維持や腰痛予防にも重要
「最適な運動の種類」
ドローイン:仰向けに寝て膝を立て
息を吐きながらお腹をへこませることで
腹横筋を意識的に収縮させることができます
プランク:静的な姿勢を維持することで、
腹横筋を含む体幹深層筋群を強化することができます
バードドッグ: 四つん這いになり
片腕と反対側の脚を伸ばすことで
体幹の安定性を高め
腹横筋を活性化させることができます
デッドバグ:仰向けに寝て腕と脚を天井に向けて伸ばし
反対側の腕と脚を交互に床に近づけることで
腹横筋を含む体幹全体を鍛えることができます
体幹を総合的に強化する方法
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これまで紹介したエクササイズに加え
体幹全体の強化には
複数の筋肉を同時に活性化できる
コアスタビリティ系エクササイズが重要です
プランクやブリッジエクササイズなどは
まさにこの体幹深層部の強化に最適です
さらに
体幹の回旋を加えたロシアンツイストや
バランスボールなどの
不安定な面を用いたエクササイズも効果的です
特定の筋肉だけでなく体幹全体を強化し
より機能的な動きにアプローチできます
トレーニングの効果を高めるための方法
紹介したエクササイズを
さらに効果的に行うための修正方法を
いくつかご紹介します
これらの修正を適用することで
トレーニング効果を最大化できます
不安定な環境
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バランスボールやバランスパッドなどの
不安定な面を使うことで
腹横筋をはじめとする
体幹筋群全体の動員を高め
安定性を強化します
感覚刺激の活用
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マルチセンサリーキューイングや
Ki-hap(息を吐き出す際の短い発声)は
腹筋全体の収縮力を高める可能性があります
ただし、Ki-hapの効果には一貫性がないため
更なる研究が必要と言われています
「マルチセンサリーキューイング」
複数の感覚 (視覚、聴覚、触覚など) を使って
運動学習やパフォーマンス向上を促進する指導法
・視覚的キュー:
ミラーの使用、ターゲットへの視線誘導、体の動きを示すジェスチャー
・聴覚的キュー:
リズムやテンポを示す音楽、動作のタイミングを伝える音声指示
励ましの言葉
・触覚的キュー:
トレーナーによる身体へのタッチ、テーピングによる触覚刺激
バランスパッドやボールなどの不安定な器具の使用
PNF (固有受容性神経筋促通法):
専門家の指導のもとで行うPNFは
外腹斜筋と内腹斜筋の活性化を促進し
厚さを増加させる効果が期待できます
「PNFパターンを用いた動的エクササイズの実施方法」
このエクササイズは、立位で行い
四肢を以下の4つのPNFパターンで動かします
LED1flex (Lower Extremity D1 Flexion - 下肢D1屈曲パターン)
股関節を屈曲、内転、外旋させながら
膝を曲げ、足首を背屈させる動き
足を斜め上に引き上げるイメージ
LED1ext (Lower Extremity D1 Extension - 下肢D1伸展パターン):
股関節を伸展、外転、内旋させながら
膝を伸ばし、足首を底屈させる動き
足を斜め後ろに伸ばすイメージ
UED1flex (Upper Extremity D1 Flexion - 上肢D1屈曲パターン)
肩関節を屈曲、内転、外旋させながら
肘を曲げる動き
腕を斜め上に引き上げるイメージ
UED1ext (Upper Extremity D1 Extension - 上肢D1伸展パターン):
肩関節を伸展、外転、内旋させながら
肘を伸ばす動き
腕を斜め後ろに伸ばすイメージ
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「具体的な手順」
1.開始姿勢
小さなランジ姿勢をとる
右足はLED1flex、左足はLED1ext、
右腕はUED1ext、左腕はUED1flexの状態に
右足は足裏全体が床につき
左足のつま先/中足骨頭部は床につけたまま
右足から70〜80cm後方右斜め方向に配置します
2.中間姿勢への移行:
開始姿勢から
四肢すべてをそれぞれのPNFパターンに従って
対角線上に動かし
中間姿勢に移行します
3.中間姿勢
右足で片足立ち(踵は上げた状態)になり
左足はLED1flex、右腕はUED1flex、
左腕はUED1extとなります
4.開始姿勢への復帰:
中間姿勢から
再び四肢をそれぞれのPNFパターンに従って
対角線上に動かし、開始姿勢に戻ります
これを1回として
上記の手順を繰り返します
※ポイント
エクササイズ中は、体幹を動かないように固定し
ニュートラルポジションを維持する
支持脚も安定させ
足が左右の後方斜め方向
で同じ位置に接地するように意識します
セット数と回数
論文では、6週間、週3回のトレーニングを実施しています
各セッション25~30分
セット間には30秒の休憩
最初の2週間は
1セット20回を2セット、1セット40回を3セット
3週目以降は
1セット20回と1セット40回をそれぞれ4セットずつ実施
振動
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振動刺激をブリッジエクササイズに組み合わせることで
内腹斜筋と腹横筋の厚さを増加させる効果が報告されています
他のトレーニングとの併用が推奨されています
まとめ
今回のnoteでは
超音波・筋電図研究に基づいた
効果的な腹筋トレーニングの処方を
具体的にどんなものがあり
どれが効果があるのか?
について解説してきました
これらの知見を使うには
以下の点に注意し運動を選んでいきましょう
段階的な導入:クライアントの状態を十分に評価し、基本的な運動から徐々に難度の高いものに
適切な負荷設定: 研究結果を参考にしつつ、個々のクライアントの能力に合わせて負荷を調整
継続的な評価: トレーニング効果を定期的に評価し、本人の内観など必要に応じてプログラムを修正することが重要
エビデンスに基づいて
クライアントに最適な運動を選ぶことで
より効果的なリハビリテーションやトレーニング指導が
可能となると思われます!
ぜひ参考にしてみてください
今回参考にした論文は⇓です