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姉弟日記

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とある姉弟の日常を描くショートストーリーをまとめました。
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2024年3月の記事一覧

姉弟日記について

とある姉弟の日常を描くショートストーリー。 ■ 登場人物 □ 姉 いつも笑顔で、何でも卒なくこなす少女。 ひよこが好きでグッズなどを集めている。 お姉さんだからと弟の世話を焼きがち。 □ 弟 おとなしくて物知りな少年。 愛読書は図鑑で、星が好き。人見知り。 いたずらで姉にちょっかいを出しがち。 □ 父親 優しくて、少し頼りないお父さん。 □ 母親 優しくて、病気がちなお母さん。 ■ 日記の種類 □ 白い日記 ほのぼのとした日常。 □ 黒い日記 信じるかはあなた次第

姉弟日記 『冷雨』

どこかの異分岐の世界。 ある大義を成すために組織された部隊。 その日の訓練を終えた少年が、 基地の通路を歩いている。 今日も、結果は散々だった。 これでは落ちこぼれと罵られても仕方がない。 窓から見える空は雨雲に覆われ、 さらに気を滅入らせる。 ふと、屋外で空を見上げる少女が目に入る。 あれは──姉さんだ。 雨の中で一体何をしているのかと、 外へ出て姉の元へと近付く。 人の気配に気付いていないのか、 少女は天を仰ぎ続けている。 そんな姉の背中を見つめながら、 少年

姉弟日記 『ホワイトデー』

都心に建つショッピグモール。 少女はコソコソと物陰に隠れながら、 “とある人物“を尾行していた。 その標的は──少女の弟。 探偵ドラマを観て会得した尾行術で、 誰からも不審に思われることなく追跡する。 彼は洋菓子の専門店へと入っていき、 そして静かに品々を見定め始めた。 今日は、ホワイトデーなのだ。 弟はバレンタインのお返しを選ぼうと、 慣れない買い物に一人で来たらしい。 少女はモヤモヤとした気持ちを抱く。 何故なら──渡す相手が分からないから。 弟はその日の

姉弟日記 『バレンタイン』

パキパキ、カラカラ。 折られた板チョコの欠片が、 ガラスボウルに溜まっていく。 幼い少女が、踏み台の上に立ちながら、 広々としたキッチンでチョコ作りをしている。 今日は、バレンタインデー。 少女はチョコをひと欠片つまみ、 口へと放って、その美味しさに微笑む。 さすがはスーパーの棚から厳選した板チョコだ。 すぐ隣で冷蔵庫が開く音。 そこにいたのは、少女の弟だ。 少女は咄嗟に腕を下ろして、 くすぐり攻撃に備えて脇腹をガードする。 ──だが、彼はジュースを取り出すだ

姉弟日記 『猫の日』

とある姉弟がまだ幼い頃。 休日に家族で、親戚の家へ遊びに行った。 家で出迎えてくれたのは、 親戚の一家と、一匹の猫。 少女は猫へ「こんにちは」と微笑むが、 その一匹は挨拶を無視して逃げてしまう。 ──毎年のように繰り返された光景。 少女がこの家に来た一番の目的は、 今年こそ猫と友達になるためだった。 親戚一家への挨拶を終わらせ、 大人達がお茶を飲み始めたら。 お待ちかねの、子供の時間の始まりだ。 さっそく家中をくまなく探し、 猫を見つけだすと少女は── 「にゃー

姉弟日記 『初詣』

とある姉弟がまだ幼い頃のこと。 雪の積もった日に、家族で出かけた初詣。 二人は何をお願いするのかな? という両親からの問いに、 少女は微笑みながらこう答える。 「今年もみんなが幸せでありますように!」 片や少年はくだらなさそうに、 「俺は別に」とだけ。 彼は神様なんていないと思っていたし、 姉みたいに幸福を願いたい人など 数える程しかいなかった。 賽銭箱の前に並んだ一家は、 作法を順番に確認しながら、 礼をして手を合わせる。 「……………………」 少年は頭の中で