極光が踊り、大気が鳴る【北極圏犬ぞり旅3日目】
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犬たちの遠吠えで何度も目が覚めたが、朝起きた頃にはあまり疲れは残っていなかった。
「おはよう諸君!よく眠れたかい?」とダニエルが僕らのテントを覗いて声をかけてくる。
「最高とは言えないけど、疲れは取れたよ」と僕が答える。
「羨ましいな。俺は3時くらいにトイレで起きちまってからは寝れなかったよ」とタイラーも寝袋から顔を出してくる。
寝袋から出ようとすると、顔の周りの毛皮の部分やテント内部に結露した霜がパラパラと顔にかかる。眠気を一掃させる冷たさである。支給されたフェールラーベンの極地用最上位寝袋はとても暖かく、極地で寝泊まりしていることを忘れるほど。ただ一度寝袋から出て着替えようとすると、いかにテント内の気温が低いかがものの数秒で感じ取れる。
素早くベースレイヤーを替え、下にはフリースパンツとダウンオーバーオール、上にはフリースジャケット、ダウンジャケット、そしてアノラックパーカを着込む。動きにくいが、朝一番の活動には必要な装備だ。テントの撤収などで体を動かすうちに暖かくなるだろう。
隣のテントからガビとケイトも出てくる。
「寝心地はどうだった?」
「あんまり。足が冷えちゃって」とケイト。
「私も。寒くて少し気分が悪かったわ」ガビの顔色はあまり良くない。帯同しているドクターのもとに行くように勧め、彼らと僕らのテントの撤収作業を進める。昨晩埋めたペグをショベルで掘り返す。テントの中の結露をできるだけはたき落として収納袋に押し込む。テント内に掘った穴は犬たちやスノーモービルが引っかからないように埋めておく必要がある。
冷えてしまう前に食べなよ、とタイラーが僕の分の朝食をくれる。朝はまたフリーズドライのオートミールだ。お湯を入れてしっかり混ぜたはずだけど、地面においていたためか底の方はシャーベット状になっていた。あまり美味しくないが、極地での食事に文句は言えない。エネルギー補給と割り切って口に押し込む。
起床、トイレ、テント撤収、食事。普通の登山なら30分もあれば終わるものが、厳冬期の北極圏においては二時間ほどかかる。体もすぐ動かないし、水を沸かそうにも雪を溶かして水にするには気がくれそうなほどの時間がかかる。今日はまだ朝の犬の世話はケンネルのスタッフが対応してくれていたので楽だったが、今日の午後からは自分たちに加えて犬たちの食事の準備をすることになる。
「出発の準備は昨晩やったことをひっくり返してやればいい。犬たちをハーネスにつけて整列させ、固定ロープを外す。覚えてるでしょ?」
撤収をやっと終えた僕たちのもとに、アナが今日の行程を説明しにくる。「今日走るのは三時間弱。他のチームがスタートすると犬たちも興奮するから、周りに気をつけてね」
雪の上で丸くなって一晩を明かした犬たちは、温かい朝ごはんをたらふく食べて元気いっぱい。ハーネスをつけるのにも一苦労する。イネスは相当なかまってちゃんで、僕が近づくたびに腹を撫でろとひっくり返ったり立ち上がって顔を舐めてくる。銀の毛並みはどこまでも滑らかで、足が長く顔が小さい美人だ。今日も頼んだよ、としっかり撫でてやる。各チームが出発の準備を始めると、犬たちもその雰囲気を感じ取ったのか、各々に立ち上がって吠え叫ぶ。なかなか見応えのある光景だ。
10時過ぎにスタートである。最初のチームのマッシャーが先陣を切って新雪の中をかき分け、そのあとにメンバーたちが続いてく。湖の上の雪はふかふかで、犬たちも足を取られつつ懸命に進んでいく。
僕たちのチームは5チーム中三番目の出発で待機。アナがアンカーを蹴り上げたのを合図に僕たちもアンカーを回収するが、全力で前に駆け出そうとする犬たちを停めておくのに一苦労。ハードブレーキをしっかりと踏み込みつつ耐える。体温が上がり、ポーラ・パーカを脱いでビブスにレインジャケットの格好になる。汗をかいてはいけない、というのが厳冬期キャンプの鉄則だ。
アナが彼女自身の犬たちを整列させ、ゆっくりとブレーキを弱めて進み始める。今日は僕がアナのすぐ後ろにつき、そしてタイラー、ガビ、ケイトの順だ。「いってらっしゃい!良いライドを!」とマチルダとミーが手を振っている。僕もスウェーデン語でさよならを言う。ヘイ・ドー。
最初の湖を超え、森に入り、また湖に抜け、森を走る。ラップランドは氷河が幾万年という悠久の時間をかけて北欧の大地に作り上げた彫刻作品だ。キルナあたりのスウェーデン極北地域は非常に平坦で、湖と森がタペストリーをなす。ノルウェー国境に近づくにつれてスカンディナヴィア山脈に近づき、どんどん標高を上げていくルートだ。初日と二日目は凍結した湖水地帯を走り続ける。
絵に描いたような快晴である。まるでこの世には白と青しか存在しないかのようだ。防寒型のオーバーオールとレインジャケットのおかげで体の寒さは感じないが、風の吹き付ける湖の上を疾走する犬ぞりにじっと立っていると、足の指先や耳がじんじんと冷えてくる。薄手のニット帽のうえにフライトキャップをかぶる。仰々しいけれど温かい。
「様になってるよ!」
アナが定期的にうしろを振り返り、僕たちの様子を伺って叫ぶ。あまり声も届かないので、親指を立てて合図をする。僕の六匹の犬たちは先頭のモカとタピルを筆頭に、まるで何かの熱力学的機関でも組み込まれているかのように力強い。ブレーキを弱めるとぐんぐん加速し、すぐに前方にいるアナに追いついてしまう。ソフトブレーキに半分体重をかけながら操舵する。
途中、大きな上り坂を通過する。傾斜がきつく、犬たちは雪に足を取られつつ、重たそうにこちらを伺う。そっちも少しくらい助けてくれませんかね、と言わんばかりに。僕も精一杯後ろを蹴ってアシストをする。
登り切ったと思うと、すぐに下り坂のヘアピン・カーブだ。曲がりたい方向に体重をかけてハンドリングしつつ、下りでスピードを上げようとする犬をブレーキで押さえながら、体幹でスレッドが倒れないようにバランスを維持する。トレイルのすぐ横の雪壁にスレッドがつっかえてガリガリという大きな音がし、思わず息を呑む。
テクニカルなカーブを除けば、ほとんどがゆるやかな登り下り。前後のスレッドとの間隔を維持できるようにスピードを調整するくらいだ。アナがスレッドのポケットから水筒を取り出したのを見て「水を飲むのを忘れないように」と再三言われていることを思い出す。
極地において、人間の身体は体温を維持するためにものすごいエネルギーを消費する。寒くて喉が渇くことなんて忘れがちだが、気付かぬうちにどんどん水分は奪われていくのだ。朝に時間をかけて沸かした1Lの水を躊躇せずに一気飲みする。犬たちは走りながら、地面の雪を舐めている。なんてダイナミックな水分補給なのだろう。
ボトルを飲み干し、大きく呼吸をする。水が食道を通って胃に、そして体に染み込んでいくのが手に取るようにわかる。大丈夫、こんな環境でも自分の身体はしっかりと生きている。
脇目も降らずに走り続けるハスキーたちを見ていると、やはり彼らは職業的犬なのだと思わされる。ペットとして飼い慣らされ、人間の庇護がなければ生きられないような犬たちとは違い、あくまで血に刻まれたスレッド・ドッグとしての運命を全うするために走り続けるプロフェッショナルなのだ。何時間も休みなく走り続け、走りながら大も小もこなし(職人技である)、雪の上で寝る。そんなことして彼らは大丈夫なのだろうかとも思ったが、アナの「ビルド・ディファレント。作りが違うのよ」という言葉に全てが集約されているような気がした。
絡まったハーネスを解いたり、トイレ休憩などで数分停止したことを除けば、三時間ほど走り続けた。まだらに白樺の生えている森に差し掛かると、フェールラーベンの旗が立っている。二日目のキャンプ地だ。僕たちは最後尾で、到着していた4チームはすでに犬ぞりの固定まで終わっていた。アナがスレッドをアンカーで停めるなり、僕もスレッドを倒し、ロープとショベルを取り出して犬たちを整列させる。犬たちはもう終わり?と言わんばかりにケロッとしている。一匹ずつ丁寧にお礼を言って撫でる。
まだ日が高いうちに今日の行程は終わりである。時間は午後の一時過ぎ。イベントマネージャーのカールたちがやってくる。
「第二キャンプへようこそ。二時間半後にミーティングだ。それまでに昼ごはんと設営、犬の世話を片付けられると良いね」
なんか物足りないなとこの時は思っていたが、そんな戯言も言っていられないということに後ほど気づく。犬ぞりの旅で一番楽なのは、犬ぞりで走ること。問題はそれ以外なのである。
とりあえずお腹も空いたので、昼ごはんにする。トマトパスタのレーションを袋から取り出してパウチを開け、朝沸かしたお湯を魔法瓶から注ぐ。柄がとても長いスプーンは、フリーズドライの食事を快適にしてくれる。底からしっかり混ぜ、5分おく。その間、空になった魔法瓶に詰めるためのお湯を沸かす。魔法瓶と水筒はいつも満タンにしておくこと、というのも黄金ルールのひとつだ。
僕がガソリンストーブを点火しようとする。構造は簡単だ。圧力をかけたガソリンボトルをストーブに繋ぎ、噴射されるガソリンに点火するのである。ナイフでファイヤスティックを擦って火花を起こすが、なかなか火がつかない。見ると、ストーブの先端から何も噴出されていない。詰まっているのだろうか?タイラーと何度かボトルの圧力を出し入れしたり、ストーブ自体を温めてみたりするも、効果なし。
「仕方ないね。こっちのストーブで4人分なんとかしよう」とケイト。「とりあえずお湯を沸かして他の仕事も終わらせて、そして修理すれば良いよ」
チーム内にふたつ配られるストーブがひとつ動かないのはなかなかに致命的だ。まずはエネルギー補給ということでお湯の染みたトマトパスタをかき込む。悪くない味だ。
「ふたり、手を貸して。犬たちのご飯を準備したいの」とアナ。タイラーとケイトにテントの設営を任せ、僕とガビでアナについていく。白い大きな袋を二つ、そして燃料を取りに行き、スレッドから『犬用』と書かれたクーラーボックスと鉄のコンロを取り出す。
「いい?袋の中には3種類の凍ったドッグフードが入ってるから、まずそれを斧で程よい大きさに切り分ける。コンロのスポンジに燃料を染み込ませて火をつけ、その上でお湯を沸かす。そして、クーラーボックスに切り分けた冷凍フードとお湯を混ぜて、ドライフードと一緒に食べさせる。簡単でしょ?」
白い袋を開けると、中には直径10センチ、長さ50センチはある大きなソーセージ状のドッグフードがこれでもかと入っている。「プラスチックの包装が入らないように気をつけてね!」と声をかけ、アナはどこかにいってしまう。
「包装を剥がす作業と切り分ける作業に手分けしてやろう。どっちがいい?」とガビに聞く。
「斧作業は任せるわ。私がフードの包装を剥がして渡していく」
フードは3種類ある。緑の包装に包まれたものが一般的なドッグフードにあたり、透明の包装に入った肌色のソーセージは鶏肉の脂肪分を凝固させたもの。この2種類を混ぜて今晩と明日の朝のフードにする。もうひとつ、まだら模様のパッケージのものは犬のおやつなのだという。こちらも割っておく。
ガビが手際良く切り込みを入れ、薄いパッケージを剥ぎ取る。凶器になりうるほど硬い筒状のフードを斧でリズミカルに叩き切っていく。指を切らないように神経を集中させつつ、力を込めて斧を振り下ろす。コツを掴むと気持ちよく割れてくれる。まるで餅つきのような流れのある共同作業になる。ワークアウトだ。汗が滲んでくる前に上着を脱ぎ、ベースレイヤー1枚で斧を振り続ける。カメラマンがこちらにきて熱心に僕らの手元を撮る。
全てのフードを叩き切り終えた時、肩で息をするほどエネルギーを使っていたことに気づく。コンロに火を入れてテント設営班を覗きにいく。
「エサの方はどうだい?」とタイラー。
「なかなか骨が折れたよ。そっちは?」
「こっちもいいトレーニングよ」ケイトがスノーシューで雪面を固めながらいう。雪が柔らかすぎてテントを張れないので、まず踏みならして整地しているようだ。
「少し置いておけば固まるはずだ。そしたらテントを張って、ペグも打てる」タイラーもペンギンのように雪の上をペタペタと踏み固めている。
犬用コンロでお湯が沸く。チョップされた冷凍フードが溢れかえるほど入ったクーラーボックスに熱湯をかけ、蓋をして蒸す。柔らかくなってきたところで混ぜてどろどろのスープ状にし、そこに普通の乾燥ドッグフードを混ぜる。犬たちは目の前に銀のボウルが置かれると、行儀良く自分のぶんが配膳されるのを待つ。
「彼らの食事しているところから分かることは沢山あるの。毎日こうしてご飯をあげながら、食べる様子や残した量を観察していると、犬たちの健康状態が手にとるように分かるわ」
僕がボウルを分け、アナが食事を取り分けながら言う。
「この犬たちはみんなアナの子たちなの?」
「そうよ。今回帯同している5人のマッシャーは皆自分のケンネルを運営してる。私もキルナで婚約者と犬ぞりツアーなどを運営しつつ、マッシャーとして犬ぞりレースに向けてトレーニングしているの」
驚いた。彼女自身のスレッドを引く六匹だけでなく、僕らチームメンバー4人の総勢二十四匹も彼女の犬なのだ。ケンネルにはもっと沢山の犬たちが留守番しているのだろう。なんと責任の重い仕事だろうか。
犬たちがご飯を平らげた後、雪の上ですでに凍結済みの彼らの食べ残しや糞尿をスコップで削り取って穴に埋める。ホッキョクギツネがすぐに食べに来るだろうけどね、とアナが笑う。就寝用ダウンコートを犬たちに着せてやると、彼らはスイッチが切れたようにすぐ丸くなり眠りにつく。エネルギー効率の塊のような生き物だな、とつくづく思う。
「今日の行程はどうだった?誰かシェアしてくれないか」
夕方のブリーフィングが始まり、ダニエルが皆の体調を確認するかのように顔を見回す。メンバーとスタッフが輪になる。各々の吐息が斜陽に輝き、まるで星のシャワーを浴びているような感覚になる。デンマーク出身のメンバーであるダーナが手を挙げる。
「このイベントは『フェールラーベン・ポラー』というより、『フェールラーベン・ポラースクール』だと思ったよ。まだ二日目だけど、すでに本当に多くのことを学んだ。改めて、こんな遠征を開催してくれたことにありがたく思ってるよ」パラパラと拍手が起こる。
「今日は極地のコンディションで火を起こすトレーニングだ」
ダニエルと共にアウトドアトレーニングを担当するハラルドが、夕日に目を細めながら説明を始める。「まずは簡易的な焚き火台を作る。雪を30センチ以上掘り下げて穴を作り、酸素の入り口としていずれかの方向に通気口を掘る」
すでに見本として雪面の一部が彫られている。4人が火を囲めるほどの広さの穴が彫られ、円周の一部が空気を通すために掘り下げられている。
「次は薪。周りに群生している白樺はまだ生きていて、燃やすには水分が多すぎる。意外かもしれないけれど、雪に埋もれてる倒木や枝のほうが乾燥しているんだ」
ハラルドが見本として薪を組んでいく。まず底に細めの薪をベッドのように並べ、その上に焚き付け用のもっと細い枝や白樺の皮を乗せる。ナイフで火花を起こして焚き付けに着火させたら、あとは細いものから太いものにかけて薪をくべていく。いつも薪ストーブでやっていることだ。
「今夜は各チームで火を起こし、それで食事にしてもらう」とダニエル。「大きなバッグに薪と漬け込まれたトナカイの肉が入っている。チームごとに持っていってくれ!」
雪に穴を掘ってスノーシューで固め、即興のファイヤピットを作る。配布された薪を広げ、斧で焚き付け材を割っていく。カナダに引っ越すまでは火の起こし方なんて何も知らなかったが、今では自信を持ってどこでも起こせる。タイラーが雪状に座れるスペースを作り、僕が薪を組んで、ケイトとガビに着火を任せる。何度かナイフが火花を散らし、白樺の薄い皮に火がつく。焚き付け材に火を移し、慎重に息を吹きかけつつ薪を足していく。火を作るのはいつでも楽しい。
パックに入ったトナカイの肉はしっかりと味付けされているようだ。
「この肉なら私も食べられるわ」とケイト。彼女は環境保護の意味でビーガンの選択肢をとっている。「伝統的なスタイルで狩猟されたジビエで、地産地消でもある。これ以上環境負荷の少ない肉もないね」
木の枝の先端を削り、トナカイの肉を刺して火にかざす。焚き火で肉を焼くのはなんとも心持ちのいい営みである。火の粉が弾けるパチパチという音、肉の表面が焼かれてジュワッと肉汁がしたたる音。狩猟採集民だったころの人類もこうして火を囲んで肉を炙っていたんだろうなと思うと、この喜びはDNAに刻まれたものなのかもしれないとの思考がよぎる。よく焼けたトナカイ肉をふかふかのフラットブレッドに挟んでいただく。低脂肪・高タンパクのその肉はあくまで柔らかく、素朴な味付けの奥に氷の中に閉じ込められたような深いコクがある。
トナカイの肉を焼き切った頃には辺りが暗くなり始めていた。クリアに晴れ渡った空は放射冷却を促し、気温がきりきりと音を立てて下がっていく。幻想的な日の暮れだ。ヘッドライトをつけ、寝る支度をする。昨晩、2枚重ねられたスリーピングマットでも少し足元が冷たく感じられたので、マットの下に防寒具を敷いて寝ることにする。カメラも挙動がおかしくなり、iPhoneも起動しなくなるほどの寒さだ。氷点下30度ほどだろう。スレッドからポーラ・パーカを引っ張り出て着る。とてつもない安心感をもたらしてくれる。
時間をかけてチームメイト全員分の水筒にお湯を詰め、寝る準備も万端。凍った歯ブラシを口の中で溶かして歯を磨いていると、上を見上げて!と誰かの声がする。北東の空を見上げると、緑のモヤのようなものが立ち上がっている。オーロラだ!初めて目の当たりにした極光は天空に美しいタペストリーを広げ、こちらに何かも物語を伝えようとしているようにも見える。カメラを取り出すが、思わず顔を顰めてしまうような寒さの中ではろくに動かなかったので諦め、じっくり目に焼き付ける。
「踊ってるみたい!こんなの初めて見たよ」ケイトが呟く。歯ブラシをふくんだまま僕も頷く。
10分ほど空を見上げていると足の指先の感覚がなくなってくる。女子チームにおやすみをいって、タイラーをテントに潜り込む。二日目の夜というのもあって、昨晩よりはスムーズに寝袋に入り込む。足元にあるお湯ボトルがじんわりと温かく、寒さで強張った下半身をほぐしてくれる。長い1日の終わりに宇宙の贈り物を目にし、心が温まるのも感じる。明日の朝は早い。朝イチで犬用コンロに火をつける、と今一度唱え、まどろみの中に沈んでいった。
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❄️『フェールラーベンポラー』って?🛷
フェールラーベンポラー(Fjällräven Polar)は、スウェーデンの老舗アウトドアブランド・フェールラーベン(Fjällräven)が毎年開催する公募の北極圏遠征イベントです。世界中から選出された二十人のメンバーとともに、最も環境負荷の少ない移動手段のひとつである犬ぞりを用いて、冬のスカンディナヴィア北極圏を旅します。
🗺️どんな行程?🧭
スウェーデン極北のポイキヤルヴィからスカンディナヴィア山脈を越え、ノルウェー最北部に近いシグナルダーレンにいたる総距離300kmほどの道のりを、五日間かけて走り抜けます。氷と雪が支配するラップランドの大地にテントを張り、火を起こし、雪を溶かし続け、犬たちと共に生き抜きます。
🧳何が必要?🏕
遠征に必要な装備は全て支給されます。極地環境で快適に生き抜くアウトドアスキルもプロフェッショナルから提供されます。道中は自分自身のみならず犬たちの世話も担うことになりますが、経験豊富なフェールラーベンのスタッフ、ドクター、そしてプロのマッシャー(犬ぞり使い)が帯同し、サポートしてくれます。英語で最低限のコミュニケーションを取ることができれば、経験やバックグラウンドを問わず誰でも参加できる遠征です。
🌱参加するには?🔥
フェールラーベン2025のメンバー募集が始まっています!
フェールラーベンのホームページで参加要項が公開されています。今年も昨年と同じく、三つの課題にインスタ上で答えるというものです。自分らしく、クリエイティブに、楽しんで応募してみてください。
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