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あ・いの題名の映画(全71作品 ※90%「無料記事」)『悪魔のドロドロ人間』ほか
この記事は、映画の題名が「あ」「い」ではじまる作品情報が掲載されています。基本的にストーリーの結末に触れていますので、予めご承知ください。
※この記事のみ、特別に90%「無料記事」としております。最後の7作品のみ有料となっています。気に入っていただけましたら、ぜひご購入をご検討ください。
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★印のついた作品は、本noteクリエイターのオススメ映画です。
アーノルド・シュワルツェネッガーのヘラクレス -低予算ながらコメディの良作
シュワルツェネッガーがアーノルド・ストロング名義で出演した、実質上の映画初出演作品。
オリンポス神の一人、ヘラクレスが天上界から現代のニューヨークに遊びにやってくるという奇想天外なコメディ。
ヘラクレスはもちろんシュワ。その体格を生かして、地上界でプロレスラーとして財を成すのは、お約束とはいえ笑える。彼とコンビを組む主人公が、冴えない風貌でW・アレンとリック・モラニスを足して割ったよう。
アイディアは良いが、何せ作りがチープ過ぎるため全編アラが目立つ。ところが、そのアラが奇跡的にも笑いにつながっている。珍品。
1988年10月25日 深夜放送にて鑑賞
監督 アーサー・A・シーデルマン
アーノルド・スタング(仲木隆司)/アーノルド・シュワルツェネッガー(屋良有作)/ジェームズ・カレン(村松康雄)/坂口芳貞、滝沢久美子
↓ 題名が異なりますが本作です。
アイ・オブ・ザ・タイガー ー主題曲が有名すぎて内容が見劣り?
「ロッキー3」の主題曲として大ヒットした、サバイバーの「アイ・オブ・ザ・タイガー」を、テーマ曲として使い、タイトルまで同じにしたプチ便乗映画。
無実の罪で投獄された主人公が出所してみると、町は麻薬組織と化した暴走族に支配されていた。彼らに妻を殺された主人公は、ゲリラ戦法で復讐する。
「マッドマックス」+「(スタローンの)コブラ」のような内容だが、陰惨なはずのストーリーを、カラっと明るく描きすぎて面食らう。テーマ曲も、本編では効果的に使われていない。クライマックスは、バズーカ砲やセスナ機まで登場し、それなりに金をかけているのだが、撮影がまずくて盛り上がらず。
監督は「バニシング・ポイント」の名匠リチャード・C・サラフィアンだが、以前の骨太さや反骨精神が感じられない。この4年後、映画史上最大の問題作「クライシス2050」を撮ることになるが、演出力の衰えは本作で既ににじみ出ていたようだ。
1991年6月4日 深夜放送にて鑑賞
監督 リチャード・C・サラフィアン
ゲイリー・ビューシイ(大塚明夫)/ヤフェット・コットー(玄田哲章)/シーモア・カッセル(原田一夫)/ウィリアム・スミス(飯塚昭三)
アイズ ー脇の男優が濃すぎる
ジョン・カーペンターの原案・脚本によるオカルト・サスペンス。
突然、殺人現場を幻視するようになった女性カメラマンの周りで、実際にモデルが次々の殺される。彼女が撮影する暴力的かつエロティックな写真を憎む異常者の犯行らしいのだが、最後に意外な真犯人が現れる…というストーリー。
ファッショナブルな演出には見るべきところはあるものの、脚本の組み立てが杜撰。理論的な説明も不足しているので、最後に意外な犯人が現れても、狐につままれたような取り残され感に襲われるだけ…
せっかくのアイディアを生かせなかった脚本を、一応演出で引き締めた監督A・カーシュナーの手腕は評価できる。
1991年2月7日 深夜放送にて鑑賞
監督 アーヴィン・カーシュナー
フェイ・ダナウェイ(小沢寿美恵)/トミー・リー・ジョーンズ(神谷明)/ブラッド・ドゥーリフ(田中亮一)/ルネ・オーベルジョノワ(納谷六郎)/ラウル・ジュリア(池田勝)
アイズ(EYES)-眼- ーしつこい入れ子構造を楽しめるかがキモ
母親の超能力に操られ、殺人を犯しては眼球を抉り出す男のストーリー。が、それは映画の中のことで、舞台は映画を観る人々のいる劇場へと移る。
その映画に刺激された異常者が、映画と同じ方法で観客たちを血祭りにあげる。正体のばれた犯人は少女を人質にたてこもるが、特殊部隊に射殺される。
ところが、ここまでも映画だった、という二重オチ。エンドタイトルが、劇場内のスクリーンに出る。
趣向は凝らされているが、残念なことにテンポが超ノロい。ショック描写も皆無にひとしく、めんたまくりぬきのSFXに期待するとショックを受ける。
監督は「ハモンハモン」や「ゴールデン・ボールズ」などエロティック・コメディで有名なビガス・ルナ。こんな下積み時代もあったのかと思いきや、脚本も自分だった。ホラーも好きだったのね。
レンタルビデオにて鑑賞
監督: ビガス・ルナ
ゼルダ・ルビンスタイン/マイケル・ラーナー/イザベル・ガルシア・ロルカ
愛と復讐の挽歌 -アクションがメインでノワールそっちのけ
香港版『ゴッドファーザー』的作品。但し、娯楽性を重視し、以前の部下とドンの対決をストーリーの核にしている。
1970年代初頭、暗黒街で勢力を拡大し、地位を築いた主人公と友人二人。だが、その一人がドンとなった主人公に反抗し、追放される。彼は、それを逆恨みして主人公の命を狙い始める。やがて抗争は激化し、主人公は妻子を殺される。
物語自体の展開は暗黒街ものの定石通りで新味はないが、クライマックスの決戦はバズーカとグレネードランチャーまで投入し、かつて暗黒街ものではありえなかった、超ド派手なアクションが繰り広げられる。
香港アクションの過剰なまでのサービス精神とバイタリティには感心させられるが、それ以外はとりたてて観るべきものはないのが残念。
1991年8月12日 深夜放送にて鑑賞
監督 テイラー・ウォン
チョウ・ユンファ(原康義)/アレックス・マン(大塚芳忠)
★愛の地獄 -視聴者が精神的ぶつかり稽古を求められるイヤ~ン映画
マドレーヌ(A・ジラルド)の幼い娘が何者かに誘拐される。警察に知らせるなと犯人に言われていたにもかかわらず、夫が通報してしまう。娘を殺されると思ったマドレーヌはテレビ局に突撃、公共の電波を使って犯人に訴えかける。が、娘は無残な死体となって見つかった。絶望する彼女の前で、息子ミッシェル(S・イレル)が告白する。妹を殺したのは自分だ、と。前夫との間に生まれた彼は、新しくできた妹に母親の愛情を取られてゆくのに嫉妬し、犯行に及んだのだ。マドレーヌは息子を乗せた車でトレーラーに突っ込んだ。
かなり陰惨なストーリーだが、誘拐事件に対処する家族の苦悩が非常によく描けていた。余韻の残るラストもなかなかのもの。吹替版だと、犯人のトランシーバーからの声が、息子と同じ村山明なので、途中で真犯人が分かってしまう。しかも、映画の演出自体も、息子が犯人であることを示唆しながら進む。
ショック度が薄れると思っていたが、ラストのミッシェルのブチ切れた演説が核爆弾級の衝撃。監督の意図は犯人探しではなく、息子の狂気を描くことにあったのだと納得。そう考えるとタイトル「愛の地獄」は、かなり意味深。
1985年11月17日 「日曜洋画劇場」にて鑑賞 監督 アンドレ・カイヤット アニー・ジラルド(北村昌子)/ベルナール・フレッソン(近石真介)/ハーディ・クリューガー(玄田哲章)/ステファーヌ・イレル(村山明)、小宮和枝、仲木隆司、松村彦次郎
青い誘惑 ーお色気目当てで観ると、マジなサスペンスで減点パパ
タイトルは青春エロティックものを想像させるが、その実態は、海底に沈んだ金塊をめぐって繰り広げられるハードサスペンス。タイトルとは裏腹に、内容は暗い。
金塊を積んだ沈没船の話を毎日している酔っ払いの老人。その話を聞きつけた主人公(B・シールズ)は、事実だということを知り、恋人と潜水夫、そして老人とともにサルベージのために船を出す。が、潜水夫が主人公に惚れ始め、金が見つかると同時に二人の男の仲が険悪の極みに。遂に恋人は潜水夫を殺してしまう。恋人は主人公と老人をボートで海に放り出し逃走するが、欲にくらんだことが原因で自らも命を落とす。
たいした内容ではないが、あれこれエピソードを加えて、とりあえず90分はもたせる。ちょっと「太陽がいっぱい」を思わせるところもある。
声優陣はかなり贅沢。B・メレディスは、FIXの千葉順二、真木恭介ではなく、なんと久米明。ボギーがメレディスの声もやるのかと感慨深い。
1988年9月3日 CX「ゴールデン洋画劇場」にて鑑賞
監督 ディック・ローリイ
ブルック・シールズ(岡本麻弥)/バージェス・メレディス(久米明)/トム・バード(池田秀一)/ブライアン・カーウィン(樋浦勉)、中庸助、加藤清三
アガサ・クリスティ/カリブ海殺人事件 -推理シーンは横溝正史映画を見習え
米国産のクリスティもの。カリブ海を舞台に、高級リゾートホテルで発生した殺人事件に、ミス・マープルが挑む。
H・ヘイズは、アンジェラ・ランズベリーよりマープルに合っていると個人的には思う。
安楽椅子探偵のはずのマープルが、ポワロなんかよりも動き回り、自らの脚で証拠を集めてゆくのが、メリケンの解釈らしい。クリスティらしい、観客の予想を霍乱するはぐらかしも多分に用意されていて、ミステリーとしてはそこそこの仕上がり。
ただ、ラストの推理は説明不足。複雑な犯行は、回想シーンを盛り込みつつ丁寧に説明してくれないと、盛り上がりにも欠く。
1987年6月28日 テレビ朝日「日曜洋画劇場」にて鑑賞
監督 ロバート・マイケル・ルイス
ヘレン・ヘイズ(佐々木すみ江)/バーナード・ヒューズ(永井一郎)/ジェームソン・パーカー(田中秀幸)/シーズン・ヒューブリー(高島雅羅)/モーリス・エヴァンス(宮川洋一)/ブロック・ピータース(小林脩)/スウージー・カーツ(藤田淑子)/キャシー・イエーツ(鈴木弘子)/つかせのりこ
暁の7人 ーひたすら陰鬱な気分になる異色戦争映画
第二次世界大戦下、ハインリッヒ司令官を暗殺しようとするチェコのレジスタンスを描く戦争秘話。
イギリス軍の配下にあるチェコの軍人が、ハインリッヒ暗殺を命じられる。地元のレジスタンスと協力し、なんとか暗殺に成功するが、地元の娘を愛したレジスタンスの一人が裏切り、破滅してゆく。
BGMはほとんどホラーで、全体のトーンも果てしなく暗い。クリマックスの攻防戦も、リアルかつ淡々と描かれ、不気味ですらある。これがイギリス映画ではなく、アメリカ作品というのが驚きだ。
「特捜班CI☆5」のドイルことM・ショウが出演しているが、声は野島昭生ではなく、小川真司だった。
1988年9月29日 深夜放送にて鑑賞
監督 ルイス・ギルバート
ティモシー・ボトムズ(高山栄)/マーティン・ショウ(小川真司)/ジョス・アックランド(樋浦勉)/今西正男、寺島幹夫
赤いスティングレーを追え! -「カオス」という単語はこの作品のためにある!
80年代にテレビ東京の90分枠の洋画劇場で頻繁に放送されていた迷作。
3人組の麻薬ディーラーがブツを置き忘れたスティングレーを、主人公が買ったため、ディーラーと主人公の追撃戦がはじまる。
カーチェイスが多く配置されている割には展開はダレまくり。ディーラーたちがあまりに間抜けでイライラする。
ラスト、ディーラーが仲間割れし、3人のうち2人が死ぬ。残った一人(やたら発砲したがる女ボス)が、車に乗ろうとすると、ドアに立てかけてあったショットガンが暴発し死亡。勝手に全滅…。
あまりのカオスっぷりに驚いて2度観てしまったが、3度目を観たいとは思わない。
監督: リチャード・テイラー
クリストファー・ミッチャム/シェリー・ジャクソン
あきれたあきれた大作戦 -あまり笑えず視聴者もあきれる?
名匠A・ヒラーによるコメディ。娘の夫の父親でCIA局員の男によって、国際的事件に巻き込まれた主人公が右往左往する姿を描く。
どうも、ひと昔前のコメディを復活させようという試みが伺える一本。ストーリーは意外に複雑だが、語り口のうまさですんなり理解できる。このあたりは脚本の妙。爆発的な笑いが無いのが難だが、サスペンスとしてもなかなか良くできている。ラストもハッピーエンドで、家族で楽しめる作品。
そんなユルいコメディにもかかわらず、核爆発的な爆笑ポイントが一箇所ある。南米の将軍が、手で腹話術人形を作って、それと話をするシーン。「サウスパーク」のギャリソン先生より17年早い。
このトンデモ将軍の声を内海賢二が担当していて、キレまくった大爆笑演技を披露する。「名探偵登場」のT・カポーティでもそうだが、彼は本当にコメディ演技がうまいと思う。このシーンだけで本作を観る価値はある。但し、吹き替えじゃないと意味ないから。
1985年2月24日 テレビ朝日「日曜洋画劇場」にて鑑賞
監督 アーサー・ヒラー
ピーター・フォーク(穂積隆信)/アラン・アーキン(名古屋章)/リカルド・リベルティーニ(内海賢二)/千田光男、田口昂、勝生真沙子、田中亮一、沢田敏子
アクション・ジャクソン/大都会最前線 -暴走刑事の悪党いじめ
「ダイ・ハード」のスタッフが集結して制作した、というのがウリだったB級アクション。でも「ダイ・ハード」スタッフは、製作のジョエル・シルバーのみのような…
車業界のボスになるために、次々とライバルたちを消す社長を、ルール無用の刑事が嫌がらせをしまくったあげくに処刑する。
社長の使う殺し屋が凄腕ばかりで、彼らとの対決は盛り上がるが、ラストはカラテVS喧嘩拳の肉弾戦の割りに、こじんまりとしてしまった。車ごと敵の屋敷内に突っ込むアクションは良かったのだが… 主演のK・ウェザースにカリスマ性がないのが難。
1991年2月20日 TBS「水曜ロードショー」にて鑑賞
監督: クレイグ・R・バクスリー
カール・ウェザース(内海賢二)/ヴァニティ(深見利加)/クレイグ・T・ネルソン(小林清志)/シャロン・ストーン(さとうあい)
悪のシンフォニー -豪華スターの贅沢カメオ、主役はいったい誰?
国連のバックアップにより製作された、麻薬撲滅のためのプロパガンダ映画。
アヘンの密輸ルートを調査中の諜報員が、イラン山中で姿を消す。各国から一流の捜査官が集められ、調査に向かうが、謎の一派が彼らの行く手をはばむ。
原案はイアン・フレミング、監督はT・ヤングと「007」コンビ。おかげで失笑を買うような出来にはならずにすんでいるが、国連の横槍なのか、妙に説教くさいせりふや描写が多い。
当時のスターが一同に介するキャスティングは壮観だが、スケジュールの都合か、登場してはすぐに殺されて映画から去ってしまう。アクション映画としてはテンポが悪いし、新味もない。
ただ、ボケ役だったE・G・マーシャルが、最後に突然主人公になってしまう点は、逆に新鮮だった。
中古ビデオを購入して鑑賞
監督 テレンス・ヤング
E・G・マーシャル/ユル・ブリンナー/トレヴァー・ハワード/リタ・ヘイワース/アンジー・ディキンソン/マルチェロ・マストロヤンニ/オマー・シャリフ/ハロルド坂田/イーライ・ウォラック
悪女からのラブコール ーB級ムービーの二大女優の共演に期待するも…
S・ジンバリストとJ・オニールという、映画マニアならおなじみの女優が共演したサスペンス。
ある新聞記者が、見合いの実態の記事を書くために、見合いの広告を出す。彼は連絡をしてきた女性にホテルに誘われるが、殺される。彼女は異常殺人鬼だったのだ。記者の妻は必死の捜査を行い、夫を殺した女をしだいに追い詰めてゆく。
記者の妻がジンバリスト、殺人鬼がオニールという配役はドンピシャ。だが後半、妻が警察と協力して犯人を追う展開が定石すぎて面白みがない。ここはあくまで個人的な復讐として追うほうが良かった。ラストの二人の対決も盛り上がらず残念。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 スティーヴン・ヒリヤード・スターン
ステファニー・ジンバリスト/ジェニファー・オニール
★悪魔のいけにえ -才能は総量が決まっているか?
ホラー映画史の伝説。テキサスの田舎で若者グループが、人間の皮で作ったマスクをかぶったレザーフェイスの属する狂人一家に次々と殺される。
作品自体の解説はいまさらなのでやらない。今回は、映画作家という側面から焦点を当ててみる。
結論からいえば、監督のT・フーパーは『悪魔のいけにえ』1本の人である。その後に撮った作品は、どれも本作を超えられない。というか、正直に言えば悲しい出来の作品ばかり。
映画監督というものは、歴史に残る作品を1本でも撮れれば本望だろうが、それゆえ、残りの映画作家人生が余生になってしまう場合がほとんどだ。ジョージ・A・ロメロも『ゾンビ』を超える作品は無い。スティーヴン・スピルバーグも『激突!』を超える作品は無い。
そう考えると、一人の映画監督が生み出せる作品の質は、総量が決まっているのかもしれない。総点数が100点で、いきなり90点の傑作を撮ってしまった監督は、残りの作品はどれも1点のものしか撮れないとか。平均5点の作品を撮る監督は、傑作ではないが、水準以上の作品を長く本数をこなせるのではないか。どちらが幸せかといえば、微妙なところですな。(生活という面で考えれば、やはり後者か)
余談だが、レザーフェイス役のガンナー・ハンセンを最近『ホエール・ウォッチング・マサカー』で見たが、濃い顔立ちながら、なかなかの二枚目で驚いた。
劇場にて鑑賞
監督 トビー・フーパー
マリリン・バーンズ/ガンナー・ハンセン/エド・ニール/ジム・シードウ
★悪魔のいけにえ2 -続編はコメディに全振りしたがそれで正解
伝説である前作は超えられないと悟りきったのか、今回はコメディになっている。
テキサスの殺人一家に、女性ラジオDJが狙われる。一方で、前作で死んだ若者の親戚の保安官が、私怨でレザーフェイスを追い詰めるというストーリー。
ラジオの音楽に合わせて車上でブレイクダンスをレザーフェイスが披露(死体を人形のように使う)するシーンからギャグ。前半いさましく、後半急にビビリになる保安官、前作より元気になったミイラ爺さんも笑わせる。
クライマックスは、チェーンソー暦13年のレザーフェイスVSにわか仕込みの保安官によるチェーンソー・チャンバラで大いに盛り上がる。
その後、主人公はチョップトップと対決。ラストシーンは、主人公が精神をやられて狂人になったようにも見え、映画の中で最も戦慄した。
続編が作れるラストになっていると思ったら、やっぱり出来た(笑)
劇場にて鑑賞
監督 トビー・フーパー
デニス・ホッパー/キャロライン・ウィリアムズ/ビル・ジョンソン/ジム・シードウ/ビル・モーズリイ
悪魔のくちづけ -観ながらトリックを推理できちゃうかもよ
H・G・クルーゾーの「悪魔のような女」を思わせるサスペンス。主演は同じシモーヌ・シニョレ。
大富豪の夫婦のところへやって来た女性セールスマン。彼らは仲良くなり、一緒に住むようになる。ある日、スーパーの店員をからかうつもりで、夫のほうが空砲入りの銃で撃つ。ところが発射されたのは実弾で、店員は死ぬ。夫婦は殺人をひたかくしにするが、やがて妻のほうは幻覚に悩まされる。
オチを書くと、妻以外の三人が、遺産目当てに共謀していたというもの。セールスマン役のシニョレの不自然な登場で、ほとんどの人はトリックに気付き、ラストのオチまでもが自明になっている。脚本に説得力がないのが敗因。
J・カーンの声は納谷悟朗で、ちょっと微妙。脇の堀勝之祐のほうがしっくりきたかも。S・シニョレの声は聞き取りでは分からなかった。
1990年2月16日 深夜放送にて鑑賞
監督 カーティス・ハリントン
ジェームズ・カーン(納谷悟朗)/キャサリン・ロス(武藤礼子)/ドン・ストラウド(堀勝之祐)/シモーヌ・シニョレ(?)
悪魔のシスター -ラストシーンで狐につままれる
デ・パルマによる『サイコ』を彷彿とさせるスリラー。黒人の惨殺事件を探る主人公が、ある双子の姉妹にまつわる秘密に迫る。
黒人がナイフで刺し殺されるシーンは、イタリア産と錯覚するくらいスプラッターしていて驚く。黒人の死体を隠し通すまでの前半は、サスペンスの盛り上げもなかなかで、凝った伏線もあり退屈しない。
が、ラストは心理サスペンスに傾きすぎたきらいがある。やはり、ヒッチコックのようにスパっと決めて欲しかった。一人二役のトリックも時代遅れ。まだ二人一役のほうが意外性があった。
現在までのデ・パルマ作品でしばしば存在する、「不可解なシーンによる幕切れ」は、本作でも見られる。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 ブライアン・デ・パルマ
マーゴット・キダー/ジェニファー・ソルト/チャールズ・ダーニング/ウィリアム・フィンレイ
悪魔のゾンビ天国 -ビデオ撮り映像は勘弁してください!
トロマ社による超低予算ゾンビ・ムービー。
核廃棄物が混入した酒を飲んだ人間が、汚い色のゲロを吐きまくったあげく、ゾンビ化する。それだけ。
目新しさのまるでないゾンビもの。設定は『吐きだめの悪魔』のパクリだし、展開は『悪魔の毒々ゾンビーズ/蘇る死霊伝説』。そこに毒にも薬にもならないギャグがちりばめられる。
しかし、そこまでは我慢しよう。ゾンビ映画とは、死体が生き返って、“走らず”、人肉を喰らえば、ある意味クリアである。ところがビデオ撮りだけはNGだろう。SFXの粗が目立つし、陰惨さがまるで出ない。やっすいアメリカ産テレビドラマを観ている気分…
唯一印象に残るのは、ゲイの黒人がゾンビに襲われ片腕を亡くしつつも、しぶとくゾンビ化せずに生き残るラスト。これは『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド最終版』より早かった。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 ペリクレス・レウニス
リサ・デヘイヴン/ウィリアム・E・ベンソン/ウィリアム・W・デッカー
悪魔のドロドロ人間 -君は「ねじりしんこ」を知っているか
米国では原題に“The Gate Of Hell 2”(『地獄の門2』)を持つ作品。もちろん、何の関連もない。
姉の失踪を調査する主人公が、邪教集団と彼らの呼び出した魔物と対決するまでを、ダラダラと描く。
魔物というのが人間に憑依し、取り付かれた人間はゾンビ化して相手を襲う。そういった意味では確かにゾンビ映画だが、そのゾンビがラストにしか活躍しない。しかもたった一体…。
せめてもの救いは、そのゾンビの顔が、製造途中の金太郎飴か、郷土料理の「ねじしりんこ」みたいに、皮膚がグッチャリとねじれている点。これが「ドロドロ人間」の理由。登場後、すぐに爆殺され、いいところ無し。
こんな超駄作でも日本では80年代末に劇場公開されていた。劇場で観たら、怒りのあまりスクリーンを破っちゃうよ。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 ゲイリー・D・マーカム
タマラ・ヘクスト/トム・キャンビテリ/ビリー・キャロル
★悪魔の改造人間 -改造人間には改造人間をぶつけろ!!
「ロボコップ」の亜流のようだが、実はこちらが製作年度が早い。
最新の宇宙服が、人体のサイボーグ化に二次的利用ができることを知った所長が、邪魔な所員を殺し、その脳を宇宙服に移植する。が、制御装置を失ったため、触れる者を片端から殺してしまう暴走ロボに。妻に会おうと家に戻るが、手さえ触れることができず身を引く姿に涙…
所長に雇われた女殺し屋のパム・グリアは、情け容赦なくて魅力的。
ラスト、改造人間に追い詰められた所長が、宇宙服で自ら改造人間化し正面対決。この意表をつく展開と、バイオレンスな肉弾戦は燃える。
1988年6月30日 テレビ東京「木曜洋画劇場」にて鑑賞
監督 ジャン=クロード・ロード
テリー・オースティン(横尾まり)/リチャード・コックス(青野武)/モーリー・チェイキン(阪脩)/パム・グリア(幸田直子)/デヴィッド・マキルレース(江原正士)、弥生みつき、西川幾雄
★悪魔の手ざわり-「先手必勝」 -「ミステリーゾーン」より数段ヤバいテレビシリーズ
『悪魔の手ざわり』は、80年代に放送された1話完結のテレビシリーズ。
アンソニー・クエイルがホストを務めるなど、『ミステリー・ゾーン』の亜流っぽいイメージが持たれているが、『ミステリー…』がSF的な超常現象を扱うことが多かったのに対し、本シリーズは人間のダークサイドに焦点を当てたサイコ・ホラー的エピソードが中心だった。
ただしシリーズものの宿命で、傑作・駄作の混成。キャストは豪華でハリウッド・スターもよく起用されていたが、ギャラが高いせいだろうか、作りはきわめてチープだった。
脚本も細かい設定は甘く、首をかしげるような展開も多い。しかし、ショッキングかつエスプリの効いたラストがウリで、毎回強烈な余韻を残していた。個人的には『ミステリー・ゾーン』や『ヒッチコック劇場』より好き。
シリーズ最高傑作エピソードは『2020年大統領選挙』だが、これはSFなのでまたの機会に譲るとして、人間心理をリアルに突いた『先手必勝』を取り上げる。
以下、完全ネタバレなのでご注意。
実業家で傲慢な妻を、巧妙に事故死させた男。妻の遺産で第二の人生を送ろうとした矢先、メイドが彼の犯行に気付いた。メイドは男を脅迫し、屋敷の中での立場を逆転させてゆく。
だが、男も「メイドが自分を殺そうとしている」という状況を巧妙に作り、警察にそれを信じさせる。男は庭に殺しのトラップを作り、その後、警察を外に待たせたうえで、メイドに最後の罠を仕掛ける。部屋の明かりを消し、自分が外に出て殺しのトラップにわざとかかり、警察の目の前でメイドの殺人未遂を確定させようという魂胆だった。
ところが、部屋のシャンデリアが落ちる仕掛けに驚いたメイドが悲鳴をあげ、男より先に外に逃げ出してしまった。そして殺人トラップにかかり、メイドは死ぬ。男は警察に逮捕されるのだった。
このエピソードは、一度観ただけではラストのオチが判りにくい。要は、メイドが悲鳴を上げたことと、彼女がトラップにかかったことで、警察は男の狂言を見破ったということ。
メイドが男を殺そうとしているなら悲鳴は上げないし、自分が仕掛けたトラップにもかかるはずがない、という逆説なわけである。ちょっと『刑事コロンボ』チックなラストの処理が、非常に印象的だった。
監督 エリック・フリラヴ
アンソニー・クエイル(柳生博)、糸博
悪魔の受胎 -宇宙空間で妊婦無双
「人喰いエイリアン」などで一部有名なN・J・ウォーレン監督の、唯一日本公開されたSFホラー。あまりにチープで、公開されたのは何かの間違いとしか思えないが、「死霊のはらわた」の同時上映だったような…
宇宙を航行中の船の艇内で、エイリアンの子供を宿した女性乗組員が気が狂って、仲間を殺しまくる。それだけ。
SFといいつつも、エイリアンの姿が出るのは中盤とラストのみ。あとは、女性乗組員が殺人をくりかえすという、宇宙を舞台にする必要がまったく無い展開。
本作が「ゴールデン洋画劇場」で放映されたときは、何かの間違いかと目を疑った。劇場でも観ていたが、当時テレビで見直した。が、どうにもアカン… 2時間が10時間くらいに感じた。
1987年9月19日 フジ「ゴールデン洋画劇場」にて鑑賞
監督: ノーマン・J・ウォーレン
ジュディ・ギーソン(幸田直子)/ロビン・クラーク(堀勝之祐)
悪魔の人間釣り -釣果が重くて大変そう…
トロマ社プレゼンツの異色ホラー。奇抜なアイディアは、第三者の冷静な目による判断が必要だと感じさせる一本。
ある湖で連続殺人が発生。しかもその手口は、きょだいな疑似針で「釣る」というものだった。犯人は朝鮮戦争時に頭に鉄板を埋め込まれた男。湖で若者がロックをガンガン鳴らすたびに、音楽が鉄板に共鳴し、脳に異常をきたして犯行に及んでいたのだった。
人間釣りのシーンは失笑もの。真犯人を早くバラしすぎるのも、興味をそがれるし、ラストに犯人が野放しのままなのも困る。ホラーというよりは、むしろサイコ・スリラー。殺人シーンもあっさりしているし。
一番驚いたのは、ランニングタイムが113分もあった点。このジャンルにしては、破格の長さだ。しかし、テンポはゆるゆると進み、無駄な水増しが多く、まさに時間の無駄。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 ジェームズ・マロン
マーク・ジェイコブス/リサ・トッド
★悪魔の毒々おばあちゃん -ベルギー産の超傑作ホラー、でも吹替じゃなきゃダメ!
「悪魔の毒々モンスター」などで有名なトロマ社が権利を買い取ったため、こんなタイトルになってしまったが、トロマ社は製作に関係していない、れっきとしたベルギー製のホラー・コメディ。「悪魔の毒々…」と冠がついた作品群では、この作品が最高傑作。
地方の名士である老姉妹のところへ、遺産目当てで親族が集まる。一族から追い出された男から送られた木箱を開けたとたん、老姉妹はモンスターへと変貌。親族をひとりひとり血祭りにあげる。
VHSの吹替版では、塩沢ときとロミ山田が老姉妹の声をアテていたが、これが大変上手かった。柔和な老女と、モンスター化したときの狂気の演技分けが見事。半コメディ作品なので、吹替のほうがより楽しめる。
DVDも日本で発売されたが、吹替は未収録。ビデオ用に作られた吹替なので、DVDに収録するのに転用費は発生しないし、前にホラーTVで吹替版が放送されたので、吹替用マスターテープもあるはず。非常に残念。
レンタルにて鑑賞
監督 エマニュエル・ケルヴィン
ダニー・デイヴン(塩沢とき)/アン=マリー・フォックス(ロミ山田)/カトリーヌ・エイメリー(沢田敏子)/パトリシア・ダヴィア(岡本麻弥)、横尾まり、藤夏子、秋元洋介、小関一
悪魔の毒々サーファー -意外にハードなアクションだったよ
題名からも分かるように、トロマ社によるバイオレンス・アクション。
大地震後に無法地帯と化したロスの海岸。我が物顔で暴れるサーファー集団"サーフ・ナチ"と、彼らに息子を殺された黒人の老女との対決を描く。
画面は安っぽいが、タンジェリン・ドリームのようなBGMが、なんとか映像を観れるものにしている。
ストーリーは良いのに、その運び方がダメでダレまくる。ニューシネマ・タッチの演出がなぜか多く、スローモーションを多用しすぎて、これまたダレる。
いつものトロマのようなおふざけもなく、全部シリアスに進むので、逆にリズムも面白さも生まれず… だがサーフ・ナチのボスをひたすら黒人老女が追いつめてトドメを刺すラストはかなり盛り上がる。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 ピーター・ジョージ
ゲイル・ニーリー/バリー・ブレナー/ドーン・ワイルドスミス
悪魔の毒々ゾンビーズ/蘇る死霊伝説 -ゾンビ映画の極北(悪い意味で)
80年代の第一次スプラッター・ホラー・ブームのとき、近代映画社のムック「THE HORROR MOVIES VOL.3」にて、堤夏彦氏の米国映画レポートで「ホントにゲロを吐く観客がいてゾーとなった」と報告されたゾンビ・ホラー。確かに、物凄い作品だった。この作品に比べれば『ゾンビ3』は大傑作。
密かに栽培されている麻薬を一掃する目的で、新種の農薬を散布したところ、麻薬を摘みにきていた若者グループがモロに浴びてなぜかゾンビ化。人々を襲うというストーリー。
メイクもダメ、緊迫感も恐怖感も皆無。強引なクライマックスもアホらしいの一言。見せ場を作ろうとか、観客を楽しませよう、という意志を完全放棄したストーリーに、脳が溶けた。
「悪魔の毒々」と日本のタイトルについているが、トロマ社とは関係ないようだ。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 チャールズ・マックラン
チャールズ・オースティン/ビヴァリー・シャピロ/ジョン・アンプラス
★悪魔の毒々プラトーン -トロマ作品に感動するとは思わなかった
テレビシリーズ「ロスト」の元ネタ。
謎の島に不時着した航空機。乗客で生き残ったのは、ベトナム後遺症でおかしくなった男、頭カラッポのモデル、気弱なデブ、日和見主義のホワイトトラッシュ、怪しい紳士など、この状況で役にたたなさそうな者ばかり。彼らが食料を探して島を調査すると、テロリストの軍事拠点を発見。ダメ・サバイバーVS凶悪テロ集団の、生存を賭けた一大決戦が始まる。
トロマ社映画らしく、下劣な描写やスプラッターも満載。なかなかDVD化されないが、敵側のミスター・シダというキャラが原因だと思われる。"SIDA"はエイズの逆つづり。本人がHIV感染者で、エイズを蔓延させるのを任務としているのだ。これは倫理的にアウトでしょう(※その後DVD化された)。
ラスト30分の大バトルは頑張っていて、キャノン・グループにひけをとらない爆破と銃撃戦。社会の底辺を生きてきた生存者たちが、一致団結してテロを粉砕する展開には、熱いものがこみ上げる。本家トロマが製作した映画では、これが一番面白かった。
レンタルビデオにて鑑賞
監督: マイケル・ハーツ/サミュエル・ウェイル
キャロリン・ビーチャンプ/ショーン・ボーエン/マイケル・ライダー
アシャンティ -他人に助けてもらったら感謝しようよ
スペインの小説家アルベルト・バスケス=フィゲロア原作のベストセラーを、豪華キャストで映画化。
アフリカで医療活動をするデビッド(マイケル・ケイン)の黒人の妻が、奴隷商スレイマン(ピーター・ユスティノフ)にさらわれる。デビッドはスレイマンを追うが、すんでのところで何度も逃げられてしまう。スレイマンに恨みを抱くマリクが合流し、遂にスレイマンを追い詰めて妻を救出する。
主人公の行動がいきあたりばったりで、砂漠の戦士でもあるマリクが手伝ってくれなかったら、とっくに死んでる。というわけで、後半はマリクが主役になってしまう。
ラスト、某国の王子に買われた妻を追って、王子のヨットに乗り込むデビッドとマリク。マリクは敵の銃弾に倒れるが、デビッドは妻と脱出成功。笑顔で抱擁し自分たちの世界にひたる二人に、ほんの少しでもマリクの犠牲に感謝して欲しいと思うのは、私だけだろうか…
1986年3月30日 「日曜洋画劇場」にて鑑賞
監督 リチャード・フライシャー
マイケル・ケイン(金内吉男)/ピーター・ユスティノフ(金田龍之介)/カービル・ベディ(中田浩二)/オマー・シャリフ(加藤精三)/レックス・ハリスン(池田勝)/ウィリアム・ホールデン(宮川洋一)/平野文、仲木隆司
アッティカ刑務所大暴動 -「史実を面白く描くのは難しい」の見本
1971年にニューヨーク州アッティカの刑務所で実際に起こった大規模な暴動事件を映像化したTVムービー。
黒人差別の激しいアッティカ刑務所で、看守たちの虐待に耐えかねた一部の囚人が反抗。それをきっかけに、抑圧されていた囚人たちの不満が一挙に爆発し、1000人規模の大暴動が起こる、というストーリー。
実録ものだけあって説得力はあるが、途中モタついたりする場面もあり、作品としての仕上がりは微妙なところ。
ラストで州兵による大銃撃により鎮圧されるが、多少の人命は犠牲にしても、国家のメンツは守るというアメリカイズムへの皮肉は伺える。
1983年6月19日 テレビ朝日 日曜洋画劇場にて鑑賞
監督マーヴィン・J・チョムスキー
チャールズ・ダーニング/アンソニー・ザーブ/モーガン・フリーマン
アップル -脱力ミュージカルだが米国では再評価高まる
『ロッキー・ホラー・ショー』『ファントム・オブ・ザ・パラダイス』のSF版を狙ったようなミュージカル。
ロックによって管理されている近未来で、ラブソングを広めようとする男女と、悪徳プロモーターの確執を描く。
タイトルからも判るように「アダムとイブ」の話をベースにしている。ロックはもちろん、ソウル、ハウス、カントリー、果てはクラシックまで、全編貪欲にあらゆるジャンル・ミュージックを取り込んでいるのが、ミュージカルとしては珍しい。
演出しだいでは一級のカルト・ムービーになった可能性もあるが、監督が『デルタ・フォース』のM・ゴーラン(脚本も)なので、アクションとは勝手が違い、センスの無い仕上がりになった。脚本は悪くないので、惜しい一本。
とはいえ、作品があまりにもトンデモということで、逆にアメリカでは大人気。amazon.comのDVDレビューの星満点は、なんと26人(笑)
レンタルビデオにて鑑賞
監督 メナハム・ゴーラン
キャサリン・メアリー・スチュワート/アラン・ラヴ/ジョージ・ギルモア
アトランチスの謎 -子供は喜びそう
ノーチラス号とネモ船長を現代にもってきて、その活躍を描くTVムービー。日本ほか数カ国では劇場公開された。
アメリカ海軍が発見した潜水艦ノーチラス号に、冷凍睡眠状態のネモ船長が保存されていた。海軍は彼を蘇生させ、謎の大陸アトランティスを探すことになるというストーリー。
ストーリーは大きく三つに分かれていて、オムニバス映画っぽくなっている。それがテンポを殺いでしまい、展開は早いのになぜか退屈させられる。
SFとしては魅力的な設定が多いのだが、それらを裏付ける根拠が不足しているので、全体的に幼稚な作品に見えてしまう。子供向けの海底アドベンチャーに留まったようだ。豪華なキャストの顔ぶれを楽しむ作品。
1982年8月21日 CX「ゴールデン洋画劇場」にて鑑賞
監督 アレックス・マーチ
ホセ・ファーラー(若山弦蔵)/バージェス・メレディス(千葉耕市)/ホルスト・ブッフホルツ
アドレナリン -フランス産コメディはドン引きする笑い
フランス版「モンティ・パイソン」のようなシュールかつバイオレントなギャグ・スケッチ集。
もともとフランスのお笑いは、日本のようなコッテリ系で、日本人の感覚と波長が合うものが多いのだが、本作は凝りすぎたあまり、ほとんど笑えない。半ばアートフィルム感覚で、白黒にしたり、ヘンなアングルで撮ったり、妙なBGMなどで攻めてくるが、ほとんど効果なし。
唯一笑えたのは、恐怖のトラップが大量に仕掛けられた家から脱出しようとする男の話。珍妙な仕掛けの数々と、ラストのオチが面白かった。IMDBではなぜか「ホラー」に分類されている。
監督 アニタ・アサル、ヤン・ピケーほか
ジャン・マリ・マドトゥ/アニタ・アサル
アドレナリン -出演者のギャラで予算不足→自主映画と化す
C・ランバート主演の近未来SFサスペンス。監督が迷匠A・ピュンなので、仕上がりは推して知るべし。
危険な細菌に感染した男が廃都市へ逃走。彼の確保を命じられた部隊が追うが、しだいに怪物化してゆく相手に次々と殺されてゆく、というストーリー。
とにかく低予算。主演の2人のギャラで製作費の9割を使ったようなイメージ。東欧と思われるゴーストタウンでひたすらロケし、本当に安い。おまけにストーリーは一本調子で、暗くて汚い建物の中で隊員がひとりずつ殺されてゆくだけ。
これほど退屈な映画も珍しいが、ピュンピュン丸が監督だから当然といえば当然か。最後まで観るには相当忍耐が必要。
東京国際ファンタスティック映画祭にて鑑賞
監督 アルバート・ピュン
クリストファー・ランバート/ナターシャ・ヘンストリッジ/アンドリュー・ディヴォフ
アドレナリン -怒涛の勢いだけは一見の価値あり
毒を盛られた殺し屋が、解毒剤を求めて奔走するアクション。アドレナリンを放出し続けると毒の進行が遅れるので、主人公が意図的に暴れまくるのがミソ。『都会の牙』、そのリメイクの『D.O.A.』のパクリ。
展開はスピーディだが、凝りすぎた編集やCGが逆に勢いを殺ぐ。迫力あるアクション設定も多いのに、細かすぎるカット割りで興ざめ。
本作も、『ボーン・アイデンティティ』が映画界に蔓延させた疫病に犯されている。アクション映画を手がける監督は、せめてブルース・リー映画だけでも全部観たほうがいい。特に『007/慰めの報酬』みたいな大駄作でシリーズに泥を塗った、なんとかフォスターはな!
話が逸れたが、本作はストーリーに膨らませようがないので、勢いだけで突っ走る。それが目新しくもあるが、のれるかどうかで印象が分かれるだろう。自分はのれなかった(それでも『慰めの報酬』よりは面白かったが)
いきあたりばったりのラストは、ギャグとしては面白いが、映画の結末としてはどうだろうね。
レンタルDVDにて鑑賞
監督 ネヴェルダイン/テイラー
ジェイソン・ステイサム(山路和弘)/エイミー・スマート(松本梨香)/ホセ・パブロ・カンティージョ(相沢正輝)
アドベンチャー -監督の描写力が足りず二大スターもいいとこなし
ブロンソンとトニー・カーティスが共演した、コメディタッチのアクション。
船に拾われた漂流中のアメリカ人が、下働きの男と意気投合し、トルコの助っ人兵士になりすましてトルコ軍とともに革命軍を倒しに行く。というのは表向きで、狙いは積荷の宝石。連戦のあげく、二人は革命軍に捕まり絶体絶命の危機に陥るが…。
見せ場は多いが、演出がまるっきり冴えない。監督のP・コリンソンは他の監督作でもしばしばみられるが、描写力が決定的に欠けている。つまり演出が乱暴。盛り上げるべきところで肩透かし、どうでもいいところで大仰に盛り上げる。
特に、クライマックスの大型船でのドンパチで、さあこれから大アクションが始まると思わせて、海上警備隊がやってきいて即終了には心底ガッカリ。というわけで、本作はアクションよりも主演二人の凸凹コンビぶりを楽しむべき一本。
1983年8月16日 地方局にて鑑賞
監督 ピーター・コリンソン
トニー・カーティス(広川太一郎)/チャールズ・ブロンソン(大塚周夫)
アマゾネス・地球最後の男 -タイトルに惹かれるが中身は…の典型
「マッドマックス2」以降、雨後の筍のごとく製作された、やっすい未来アクションの一本。
細菌兵器により人類が死に絶えた未来。生き残った一人の女が、最新テクノロジーで女性を増産してコロニーを作り、地上最後の男を囲って研究材料にしていた。流れ者のハンター(女性)は、男児を宿したコロニーの女性に出会う。だがお腹の子供はコロニーの指導者の命の源として、殺される運命にあった。ハンターは彼女と共に逃避行を続ける。
せりふの構成がメチャクチャで、全編において哀しい失笑を誘う。見るも無残な役柄を、嬉々として演じたP・カンバッタのみ鑑賞に値する。
深夜放送にて鑑賞
監督 ロバート・ヘイズ
パーシス・カンバッタ(火野カチ子)/キャスリーン・キンモント(弥永和子)/シーラ・ハワード(鈴木れい子)/ジェームズ・H・エメリー(屋良有作)
↓ 題名が異なりますが本作です。
★アマデウス・ミステリー/悲劇の天才 -大作『アマデウス』へのドイツからの刺客
『アマデウス』が世界的ヒットとなり、FALCOの「ロック・ミー・アマデウス」がヒットチャートを席巻していた頃に、西ドイツでひっそり製作された一本。しかもトンデモ歴史観による超異色作。正直本家『アマデウス』より楽しめた。
モーツァルトの死体を前に、集まった関係者。彼らは、それぞれモーツァルトの関係について語る。その結果、全員に彼を殺す動機があることが判明する、というストーリー。
低予算映画だが、コスチュームや雰囲気は良い。モーツァルトという題材と、アガサ・クリスティを思わせる堂々としたミステリーの組み合わせも、意外とうまくマッチしている。
問題は驚愕の真実。モーツァルトの人形で儲けていた人形細工師が、モーツァルトを毒殺して自分の人形の価値を高めようとしていたのが動機。
この現代風の、世知辛い経済理論による殺人が、奇妙な魅力を出していた。これを考えると邦題も絶妙。こんな理由で殺されちゃあ、まさに「悲劇」(笑)
レンタルビデオにて鑑賞
監督 スラヴォ・ルーター
アーミン・ミューラー=スタール/マックス・ティドフ/カタリーナ・ラーケ
↓ 題名が異なりますが本作です。
★アメリカン・ゴシック -設定満点、展開70点、描写赤点の惜しい佳作
『小さな目撃者』『ヘルハウス』の鬼才J・ハフによるサイコ・スリラー。
バカンスに出かけた6人の男女が、飛行機の故障である島へ着陸する。そこには、1920年代そのままの生活を営む殺人一家がいた。6人は、ひとりひとり殺されてゆくが、最後に残った女性が発狂。彼女はかつて赤ん坊を風呂で溺死させたトラウマを持っていた。彼女は一家の一員として迎えられるが、一家の娘がミイラ化した赤ん坊を水浴びさせようとした瞬間、トラウマが大爆発。彼女は一家を皆殺しにする、というストーリー。
後半の意外な展開は面白く、狂人VS狂人の対決も完全にイっちゃっていてワクワクさせる。
が、本来ホラー的内容の物語を、スリラー調に仕上げたかったのが裏目に出て迫力不足、しかもあっけなく終わる。テンポは良いが、ストーリー構成は粗い。もっと徹底的にスプラッター・ホラー化すれば、大傑作になっただろう。
往年の名優R・スタイガーやY・デ・カーロなどが殺人一家を演じているのには注目。俳優が老後の生計を建てることの厳しさを教えてくれる。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 ジョン・ハフ
ロッド・スタイガー/イヴォンヌ・デ・カーロ/マイケル・J・ポラード/フィオナ・ハッチソン/サラ・トルゴフ
アメリカン・パロディ・シアター -パロディは難しいと感じさせる一本
『ケンタッキー・フライド・ムービー』の流れをくむ、ショートコント集。アメリカ版「ゲバゲバ90分」といえばほめ過ぎか。但し、当時第一線で活躍するスター俳優に、ムチャなバカをやらせまくっている点はすばらしい。
とはいえ、笑いのほうはイマイチ泥臭く、洗練されていない。モンティ・パイソンやズッカー兄弟が手がけていたら…と思わずにはいられない。筆頭監督のJ・ランディスのコメディ・センスがもともと泥臭系だから、仕方がないのだろうが…。
字幕版での鑑賞ということもあって、笑いが弱かったのかもしれない。発売中のDVDには吹き替えが収録されているので、機会があればそちらも観てみたい。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 ジョン・ランディス/ジョー・ダンテほか
ロザンナ・アークエット/ラルフ・ベラミー/キャリー・フィッシャー/スティーヴ・グッテンバーグ
アメリカ万才 -国や子供たちの将来のため、少しは政治に関心を
G・ホーン主演の、ちょっと政治的な味付けのコメディ。
パブのウェイトレスが、たまたま中東某国の殿下の暗殺を阻止。英雄に祭り上げられた彼女は、外交官に抜擢される。が、その裏には、プロパガンダと政治の駆け引きに彼女を利用しようとする米政府の思惑があった。殿下に見初められた彼女は、彼の国に連れ去られるが、クーデターが発生し国際事件に発展するというストーリー。
お話しは他愛ないが、メリケンのお祭り気質を批判し、米国民にもっと政治に関して注意を払うように促すテーマが込められているのが目新しい。相変わらず老けないホーンには驚かされる。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 ハーバート・ロス
ゴールディ・ホーン/クリス・サランドン/リチャード・ロマナス
★アラクノフォビア -人間並みに賢い毒グモと想像を超える大激闘!
田舎町が毒グモでパニックに陥るさまを描いたサスペンス。
クモを題材にした映画は多々あるが、本作はコメディ仕立てにしたところが他と異なる。しかし、当然クモの犠牲者も出るので、全体的にはちょっとちぐはぐ感はぬぐえない。クモも原寸大なので、恐怖感も薄い。
が、衝撃のクライマックスはポイント高し。てっきり毒グモの退治法を編み出すと思った昆虫学者があっさりクモの餌食となり、クモ恐怖症の主人公がたった一人で女王グモと対決する。
このシーンでは、完全にクモが擬人化され、人間並みの知恵を発揮。人間VSクモの、アクション映画顔負けのスーパーバトルが展開される。ここは拍手喝采で、それまでのダメダメ感を一挙に吹っ飛ばした。
製作総指揮がスティーヴン・スピルバーグなのでヌルいお子様ランチかと思ったら、人が死にまくるパニック映画だった。この頃から、スピルバーグの残虐性が顔を見せ初め、『プライベート・ライアン』へ結実する。
1994年3月13日 テレビ放送にて鑑賞
監督 フランク・マーシャル
ジェフ・ダニエルズ(大塚芳忠)/ジョン・グッドマン(玄田哲章)
阿羅漢 -ジェット・リーの凄ワザを堪能せよ
『少林寺』シリーズの俳優を集めて製作されたマーシャル・アーツ・アクション。清朝時代を舞台に、大臣を殺して重要な地位を得た宿敵を、3人の武術家が追い詰めてゆくというストーリー。
『少林寺』と異なり、本作はストーリーを復讐劇に絞り、単純娯楽を狙っている。工夫を凝らしたアクションはみどころで、クライマックスの船の上での大合戦は目新しくて良い。但し、ストーリーの展開が他愛ないので、見終わっての感動は薄い。
そういえば、初期のリー・リンチェイ(ジェット・リー)は、水島裕だった。いつの間に池田秀一がFIXの空気ができたのだろうか。ちなみにテレビ吹き替えは2006年に発売されたDVDにも収録されている。
1987年10月7日 テレビ放送にて鑑賞
監督 リュー・チャーリァン
リー・リンチェイ(水島裕)/フー・チェンチャン(池田秀一)/ユー・チェンウェイ(坂口芳貞)/ユエ・ハイ(小林勝彦)/ホァン・チューイェン(土井美加)/小松方正、吉村よう
荒鷲の砦 -社会主義国の戦争アクションは展開モタモタ、でも爆破シーンはもんのスゲェ!
ユーゴスラビア製の戦争アクション。第二次世界大戦で活躍したユーゴの空挺部隊の活躍を描く。
捕虜の脱走、戦闘機の一騎打ちなど、東側の国が作ったにしては、映画的見せ場を意識している。が、技術の問題もあると思うが、せっかくの娯楽シーンに描写力が追いつかず、どれも迫力不足。実に惜しい。
但し、爆破シーンだけは、「冗談だろ?」と思うほどのメガトン級で、アメリカの大作戦争映画にひけをとらない。
1987年6月24日 テレビ東京「2時のロードショー」にて鑑賞
監督 ハイルディン・クルヴァヴァック
ベキム・フェーミュ(中田浩二)/ラドシュ・バイチ(津嘉山正種)、安原義人、高島雅羅、渡部猛、千葉繁、仁内建之
★アリゲーター -ワニは怖いが、原住民はもっと怖い!
巨大アリゲーターが観光客を食い散らかすパニック・ホラー。
ワニを神とあがめる原住民の土地に、白人がリゾート・ホテルを建設。その地を訪れたカメラマンは、巨大ワニの存在を確認し、ホテル関係者に忠告するが、彼らは無視して船上パーティを開催。そこへワニが現れ、人々を襲う。
イタリア作品にしては、脚本がすっきりしていて観客の混乱は招かない。最初に出てくる爆破シーンが、ラストの伏線になっているところも、(イタリアものにしては)感心できる。
が、ワニのSFXがチャチなところもあり、水中シーンではソフビ人形を動かしているようにも見える。『テンタクルズ』を思い出した。
一方で、船上パーティのパニックシーンでは、神であるワニを怒らせた白人に対し、激怒した原住民が、ワニから逃げて地上に戻った人々を殺しまくる超展開。ワニよりよっぽど恐ろしい。
ラストでワニを倒した主人公を、原住民が英雄として称えるのも、分かったようで分からない。が、ハッピーエンドなのでよしとする(笑)
1982年8月12日 TBS「月曜ロードショー」にて鑑賞
監督 セルジオ・マルチーノ
クラウディオ・カッシネリ(前田昌明)/バーバラ・バック(田島令子)/メル・ファーラー(川辺久三)/リチャード・ジョンソン(上田敏也)
↓ 題名が異なりますが本作です。
★アリス -これは眼福!人形アニメと生身の俳優が共演
ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を原作に忠実に制作した人形アニメ。原作のシュールさとアブなさ、不気味さを前面に出した結果、ディズニーの同名アニメとは対極の、傑作映画になった。
人間の出演者はアリス役のみ。少女の持つわがままや、残酷さ、好奇心も大変うまく表現できていて感心する。BGMはほとんど無く、それが「夢の中の出来事」的な雰囲気をかもしだしている。
ほとんどギーガーの予備軍的なクリーチャーの数々も、目を楽しませてる。ラストのオチもなかなか秀逸だった。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 ヤン・シュヴァンクマイエル
クリスティーナ・コホトヴァ
★アルジェント・ザ・ナイトメア/鮮血のイリュージョン -映画系ドキュメンタリーの文句なしの最高峰
日本コロムビアが「シャドー」などアルジェント作品を初VHS化した際、同時に発売されたメイキング・ドキュメンタリー。
堅苦しい淡々とした語り口ではなく、映画のような演出と細かいカットで、70分退屈せずに観ることができる。関係者の証言もたっぷり入っていて、映画のメイキング・ドキュメンタリーの見本のような作品。「デモンズ3」など劇映画畑のミケーレ・ソアヴィが監督なので、観客が退屈しないように、見せ場の配置には気を遣っているようだ。
ちなみに本作品は、日本の版権会社とイタリアの合作。AnchoBayがアルジェント作品をDVDにした際、本作を細切れにして各作品に映像特典として収録していたが、それを知ってアルジェントが激怒し、トラブルになったと聞いている。
VHSにて鑑賞
監督: ミケーレ・ソアヴィ
あるスパイの運命 -二重スパイはつらいよ
テレビものとして制作された本格スパイもの。
ソ連のスパイであるバーニンは、英国が開発したレーダー不探知の装置を盗む命を受ける。英国でソ連のスリーパーに接触し、行動を共にするが、彼は英国の二重スパイだった。バーニンが接触する人間は、次々と消され、真実を知ったバーニンは、祖国のために自殺を図るが…という、これまた絶望的なストーリー。
途中から物語が推理劇風になってしまい、スパイもののエッセンスが失われてガッカリ。
どうもアメリカが制作するスパイものは、イギリス産の同種のもと比べて完成度が低く、中途半端でイカン。「プリズナーN0.6」のロン・グレイナーによる音楽は良かった。
1990年6月4日 テレビ東京「2時のロードショー」にて鑑賞
監督 ボリス・セイガル
ローン・グリーン(早野寿郎)/アンソニー・クエイル(村越伊知郎)/ハリー・アンドリュース(納谷悟朗)
アルタード・ステーツ/未知への挑戦 -SFでもケン・ラッセルの変態性は全開
奇才ケン・ラッセルによるSFサスペンス。
生命の起源を探ろうとする主人公が、特殊な装置に身をうかべて遺伝子の記憶を夢見ることに成功するが、それによって肉体にも変化が起こってゆく、というストーリー。
着眼点は良いが、表現が力不足で、せっかくの肉体変化のSFXも効果が十分出たとはいいがたい。前衛的にも娯楽的にもなりそこねているのが惜しい。
生命の起源は「無」であり、「愛」で窮地から逃れるラストは、もうひと工夫が欲しいところ。センス・オブ・ワンダーの面からいえば、「未来惑星ザルドス」のほうが上だろう。
ただ、ケン・ラッセルの変態性を楽しむにぶんには、大いに観る価値はある。
1986年1月26日 テレビ朝日「日曜洋画劇場」にて鑑賞
監督 ケン・ラッセル
ウィリアム・ハート(野沢那智)/ブレア・ブラウン(田島令子)/ボブ・バラバン(樋浦勉)/チャールズ・ヘイド(坂口芳貞)、吉田理保子、原えりこ、野島昭生、村松康雄
ある愛の詩 -これが難病映画の元祖だ!
本作は、R・オニール=三浦友和、A・マッグロー=山口百恵という吹き替えが最初に作られたが、88年にテレビ東京の配慮により声優で収録しなおされたもの。
愛し合って結婚した夫婦の妻が白血病となり、幸福の絶頂から不幸のどん底に落ちるというストーリーはオーソドックスだが、ニューシネマタッチの軽快なテンポのおかげで、新鮮に味わえる。
特に、オープニングの10分は秀逸で、一気に二人の出会いを描ききるのが凄い。主人公と父親の関係の描きこみが不足している点は惜しい。
1988年12月31日 テレビ東京にて鑑賞
監督 アーサー・ヒラー
ライアン・オニール(池田秀一)/アリ・マッグロー(勝生真沙子)/レイ・ミランド(前沢迪雄)
アレンジメント/愛の旋律 -人生、ガマンはほどほどに
『エデンの東』のエリア・カザン監督による、前衛的ドラマ。ちょっとフェリーニの『8 1/2』を思わせる。
自分を抑えて会社のために尽くし、父親に服従してきた男が、妻と離婚できないために、生涯で一番愛した女を捨てる。その後、彼は自動車事故に遭ったのを契機に、今までの不満を爆発させ、自分の理想としている行動しかしなくなる。が、結局一切何もうまくゆかず、最後は精神病院送りとなる。
描写に新鮮なものは無く、ドラマは非常にかったるい。ダグラスの怪演とR・ブーンの名演、そして豪華な吹き替えキャストを楽しむ一本。
1985年2月22日 深夜放送にて鑑賞
監督 エリア・カザン
カーク・ダグラス(宮部昭夫)/フェイ・ダナウェイ(平井道子)/デボラ・カー(水城蘭子)/リチャード・ブーン(金井大)、上田敏也、仁内建之、麻上洋子、小林修、此島愛子
アンツ/蟻の大群大襲来 -じっとできるかが生死の境目
環境汚染のために猛毒を持つようになった蟻が、リゾート地で人々を襲う昆虫パニック。
前半は蟻による死を遂げる人々を描き、後半は塚を壊されて凶暴になった蟻の大群とホテル内の人々との攻防を描く。
十数匹の蟻に噛まれただけで死に至るという設定にもかかわらず、サスペンスが盛り上がらない。外部の人間があの手この手でホテル内の人々を救助しようとするが、どれも手詰まりになるのは少し面白い。はしご車も届かず、ヘリで救出しようとすると風圧で蟻が飛んで二次災害が起こる。
結局、蟻が去るのを待つしかなく、蟻が体の上を這ってもじっとしてやり過ごす。このシーンでは、実際に俳優が無数の蟻を体にたからせて撮影されていて、迫力はある。
が、最終的には蟻が去ってホテルから逃げるだけという、座禅の後に「お疲れさまでした」と解散するようなラストシーンでまったく盛り上がらないのが残念。
1983年9月3日 CX「ゴールデン洋画劇場」にて鑑賞
監督 ロバート・シアラー
ロバート・フォックスワース/リンダ・デイ・ジョージ/ブライアン・デネヒー
アンダー・ファイア -政情が不安定な国では人の命が軽すぎる
O・ストーンの『サルバドル』の前に製作されたニカラグアを題材にした革命ドラマ。
米人ジャーナリストがニカラグアに渡り、最初は中立を守るが、政府側の傭兵や仏人の武器商人たちの日和見的な動きをみるうちに、しだいに革命側へ肩入れしてゆくというストーリー。
堅い題材だが、適度なアクションを盛り込み、見せ場も多く退屈はしない。兵隊に殺される米人のTVキャスターの姿を捉えた写真を主人公が発表し、それがもとでニカラグア政府は壊滅する。
「ニカラグアで5万人死に、今アメリカ人が一人死に、アメリカはようやくこの国で何が起こっているかを知っただろう」という現地人のセリフが、すべてを語っている。
初回放送は深夜だったが、拡大枠での放送で正味106分ほど。
深夜放送にて鑑賞
監督 ロジャー・スポティスウッド
ニック・ノルティ(玄田哲章)/ジーン・ハックマン(石田太郎)/ジョアンナ・キャシディ(一柳みる)/エド・ハリス(若本規夫)/ジャン=ルイ・トランティニャン(池田勝)
アンダーワールド -クライブ・バーカーの大後悔
クライヴ・バーカー原作・脚本のホラー。
新種の薬品によって畸形となった人々が地下に潜んでいたが、その事実をもみ消そうと、製薬会社のオーナーであり実は裏社会のボスが、ある男を雇って地下住居に送り込む。が、男はオーナーの目論見を知り、地下住人の味方となってオーナーと対決するというストーリー。
現実か虚構か分からない異様な雰囲気が全編に漂い、雰囲気は良い。が、クライマックスがまったく盛り上がらないのと、ストーリーに説得力が無いのがつらい。
バーカーは本作および『ロウヘッド・レックス』で脚本が原型をとどめないほど書き換えられるのを目の当たりにし、『ヘルレイザー』では自ら製作・脚本・監督を兼ねることを決意したという。なるほど、本作はそれが納得できる仕上がりだった。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 ジョージ・パヴロウ
ラリー・ラム/デンホルム・エリオット/スティーヴン・バーコフ
アンツィオ大作戦 -緊迫するスナイパー戦
第二次世界大戦を背景に、イタリアのアンツィオに上陸した連合軍を描いた戦争映画。
アンツィオに上陸した連合軍は、もたもたしている間にドイツ軍に気づかれ、手痛い反撃にあう。後半は、九死に一生を得た主人公ら数人が、敵の手を逃れつつ基地へ戻るサスペンス。
テンポは良いが、内容の密度がやや薄いので、いまひとつ見応えがない。従軍記者のR・ミッチャムが、最後に怒りを爆発させて戦闘に参加するのは、人間の獣性を暴いていて興味深い。
あと一歩で基地へ到達というところで、敵の狙撃隊に囲まれる恐怖は本作の一番のみどころ。
1990年1月25日 テレビ東京「木曜洋画劇場」にて鑑賞
監督 エドワード・ドミトリク
ロバート・ミッチャム(浦野光)/ロバート・ライアン(木村幌)/ピーター・フォーク(穂積隆信)/アーサー・ケネディ(宮川洋一)/アール・ホリマン(山田康雄)/マーク・ダモン(石丸博也)/レニ・サントーニ(井上真樹夫)
★暗黒街の顔役 -必見の実録ギャング・ムービー
アメリカの暗黒街の帝王で最初に死刑になった人物・レプキの半生を描いたギャング・ムービー。
チンピラのレプキが、ボスを殺して成り上がるが、強引なやり口が仲間に嫌われ、罠にはめられて死刑になる。
随所に見られる銃撃戦は、「スローモーションのないサム・ペキンパー」といった強烈バイオレンス。後に「デルタ・フォース」を撮る監督M・ゴーランのアクション・センスは、この頃から十分開花していた。
主演のT・カーティスはミスキャストかと思ったが、迫力のあるワルを上手く演じていた。声はFIXの広川太一郎だったのも嬉しい。吹替も重厚な声で、演技も見事だった。決して「しちゃったりして、この~ちょんちょん」とは言いませんでしたよ(当たり前か)。
1991年1月25日 深夜放送にて鑑賞
監督 メナハム・ゴーラン
トニー・カーティス(広川太一郎)/アンジャネット・カマー(武藤礼子)
暗黒殺人指令 -チャック・ノリスの無駄遣い
アメリカで最も人気のある人間兵器チャック・ノリス先生が主演のスパイ・ムービー。残念ながら、ノリス先生の使い方を完全に間違った一本。
外交の裏取引のため、最初から失敗するてはずのミッションに送り込まれたCIAの工作員(ノリス)。その5年後、ミッションに参加した仲間が次々と殺されてゆく。実は、証拠隠滅のため、国務次官が裏で糸を引いていたというストーリー。
ミッション後にすぐ始末すればいいものを、5年間何を待っていたのか釈然としない。前半の救出シーンの派手さはノリス先生らしい見せ場もあるが、その後の月並みな展開は退屈の一言。
ノリス先生もほとんどアクションさせてもらえない。後に『地獄のヒーロー2』で再び手合わせをするスーン=テック・オーが、敵役を演じている点のみ注目に値する。
監督が『ダーティハリー2』のT・ポストなので期待したが、ダメダメだった。この後急激にフィルモグラフィーが無くなっていったのも納得。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 テッド・ポスト
チャック・ノリス/アン・アーチャー/ジェームズ・フランシスカス
★暗殺・サンディエゴの熱い日 -マイケル・クライトンの最高傑作はこれだ!
マイケル・クライトンが監督したテレフューチャー。原作もジョン・ラング名義で自ら執筆。
神経ガスの大量散布によりって、町の市民ごと大統領の暗殺をもくろむ対立候補と、政府の役人の対決を描く。時間をきざむ緻密な進行と、クライトンならではの、科学的知識を盛り込んだアイデアがみどころ。わずかな手がかりを積み重ねて、悪魔の計画を見破ってゆく構成も面白い。
対立候補が、あちらの世界にいっちゃった性格で、非常に不気味に描かれている。なんとかに刃物ならぬ、基地外に化学兵器。
途中で対立候補が事故で死んでしまい、仕掛けられた毒ガスの解除方法を突き止めることができなくなるという、想定外の展開で盛り上がる。主人公の決死の覚悟で装置の解除に成功するが、実は第二の仕掛けが…というたたみかけも上手い。
クライトン自身の演出作品では、この作品がベストだろう。ジェリーゴールドスミスの音楽も、映画並みの重厚さで聞き応えあり。
ちなみに日本ではビデオすら発売されず。権利元はあの「ディズニー」である。
テレビ東京 深夜放送にて鑑賞
監督: マイケル・クライトン
ベン・ギャザラ(高橋昌也)/E・G・マーシャル(富田耕生)/ジョセフ・ワイズマン(大木民夫)/マーティン・シーン(野島昭生)
暗殺者を撃て -この監督の映画の展開はどれも分かりにくい
非情なスパイの世界を、シュールな展開で描いたサスペンス。
かつてCIAで二重スパイとなった男が、CIAとKGBのデタントのため、消されることになる。殺し屋に追われた男は、イスラエルに住むかつての同僚を頼り、二人は国境を越えようとするが…というストーリー。
二転三転する内容に力を入れた点は評価できるが、脚本がまったく整理されておらず、途中から訳が分からなくなる。
重要キャラに見えたイスラエルの警官が中盤でいきなり殺される場面や、凄腕の殺し屋がサウナでマッサージ中の隙をつかれて、主人公にあっさり始末されるなど、唐突に予想を裏切る展開は少し面白かっただけに残念。
BGMが超ハデで、画面にミスマッチ。緊迫感を盛り下げる。
1985年1月27日 テレビ朝日「日曜洋画劇場」にて鑑賞
監督 ピーター・コリンソン
リチャード・ウィドマーク(大塚周夫)/オリヴァー・リード(内海賢二)/ゲイル・ハニカット(北島マヤ)/オリー・レヴィ(小林勝彦)、大塚芳忠、峰恵研、坂口芳貞」
アンダーカバー/炎の復讐 -ジャッキー型アクションとB・ニールセン
シルベスタ・スタローンの元妻のB・ニールセンが悪役を演じたマーシャル・アーツ・アクション。陰で街を牛耳る自警団に単身乗り込んだ刑事と、そのボスとの対決を描く。
それまでのアメリカ映画にはみられなかった、ワイヤー使用のアクションがバンバン出てくるのが面白い。まるで白人ばかりのジャッキー映画大会。おかげで退屈せずに最後まで観ることができる。
これまで髪をまとめたり短髪が多かったニールセンが、ロングヘアを披露していてなかなか魅力的。かつて“良く化けたオカマ”とまで言われていた汚名を、本作で返上している。
レンタルビデオにて鑑賞
監督 スティーヴ・バーネット
ジェフ・ウィンコット/カレン・シェパード/ブリジット・ニールセン
イウォーク・アドベンチャー -あまりカワイクない…
『ジェダイの復讐』に登場する惑星エンドアの種族イウォークが、思った以上に人気が出たために製作されたスピンオフ。但しお子様ランチ。
宇宙船が不時着し、親を怪物にさらわれた兄弟が、イウォークたちと協力して親を探すというストーリー。
イウォークたちは、イウォーク語しか喋らないので、せりふが極力少ないストーリー展開。
監督に力量がないので、間がもたずにかなり退屈する。劇場では子供たちが飽きて走り回る姿が想像される。
1988年10月29日放送
監督 ジョン・コーティ
エリック・ウォーカー(関俊彦)/オーブリー・ミラー(藤枝成子)、池田勝、小宮和枝、高木均
★怒りの100連発 -「冒険野郎マクガイバー」を超えるマシンガン開発秘話
マシンガンの元祖を描いたマカロニ・ウエスタン。
銃の専門家である主人公が、ある町へとやってくる。そこは非道な荒くれ者どもに支配されており、主人公は市民と協力して応戦するというストーリー。最後にカメラを改造した珍妙なマシンガンが登場、一挙に敵を殲滅する。
悪人どもの悪事がヌルいため、ラストの主人公の怒りもいまひとつなものに。ただ、主人公を演じるG・マーティンのアクションはきびきびとしていて小気味良い。
ラスト、時代が現代に移り、お手製マシンガンが展示されているところで終わるのはニヤリとさせられる。『オフサイド7』のラストは、本作をパクったか?
1988年8月15日 テレビ東京「2時のロードショー」にて鑑賞
監督 アルベルト・ムーア
ジョージ・マーティン(納谷六朗)、北浜晴子、寺島幹夫
怒りのエクスタミネーター・地獄の標的 -ダイナーでの皆殺しが最大の見せ場
一時期、テレビ東京「木曜洋画劇場」では、ロバート・ギンティが主演した安いアクションにすべて“なんとかエクスタミネーター”と冠をつけて放映していた(もちろん、各作品間に関連は皆無)。ほとんどはいまひとつの作品だったが、比較的面白かったのが、この一本。
とある町のダイナーへやってきたジョン(ギンティ)。そこで麻薬取引のトラブルが発生、銃撃戦が始まる。事態を収拾したジョンだったが、事件の罪を着せられて収監される。黒幕は、町長と保安官だったのだ。彼らはジョンに、釈放と引き換えに、対立町長候補の暗殺をもちかける。
全編アクションの連打(ただし安いアクション)なので、とりあえず飽きずに観ることができる。特に、最初のダイナーでの銃撃戦は、無関係の客を皆殺しにする、悪夢のようなバイオレンス。この作品で、もっとも価値のあるシーン。その割に、ラストがしりつぼみで残念。
悪徳保安官がしきりに「お前とは前にあったことがある」とジョンに繰り返すが、思わせぶりなだけで説明はナシ。
好意的に解釈すると、ジョンはかつて町の住人で、保安官に殺されかけた過去があり、整形して復讐に戻った、とも考えられる。もしくは、保安官に殺された人物の兄弟か。いずれにせよ、自分以外の観客は、こんなことは露ほども考えないだろうがね。
1990年11月8日 テレビ東京「木曜洋画劇場」にて鑑賞
監督 ゴードン・ヘスラー
ロバート・ギンティ(大塚明夫)/キャシー・シャワー(幸田直子)/トム・ベイダル(坂口芳貞)/シドニー・ラシック(辻村真人)
怒りの街ニューヨーク -一所懸命なら犯罪も応援される?
『死体と遊ぶな子供たち』『暗闇にベルが鳴る』などのカナダの中堅監督B・クラークによるコメディ・タッチのドラマ。
職務に忠実で負傷した消防士の兄が、市に不当な仕打ちをうけたため、怒った弟は町のいたるところに落書きで市長をバカにしまくる。市は落書きの張本人を突き止めようとやっきになるが…というストーリー。
プロットはかなり異色で、下手をしたら映画自体が落書き以下になる危険性もはらんでいるが、豪華キャストにそれぞれ生きた役割を与えてきちんと動かし、落ち着いた演出で水準以上の作品に仕上がっている。
アメリカ作品だが、スタッフはカナダ勢が多い。音楽のポール・ザザもカナダ出身で、聴きごたえのあるBGMを提供。『プロムナイト』の最悪のサントラ時代を考えると、作曲家としてはかなり成長した。
1990年10月20日 深夜放送にて鑑賞
監督 ボブ・クラーク
ティモシー・ハットン(塩沢兼人)/ロバート・カルプ(宮田光)/ピーター・ボイル(池田勝)/ロバート・ユーリック(谷口節)/ダーレン・マクギャヴィン(加藤精三)/キム・キャトラル(松本梨香)
↓ 題名が異なりますが本作です。