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AIの生成段階の著作物の「複製」について

(11/7 18:30追記 動画も作りました。)


コメントで質問があったので、上記の記事の「複製」関連の補足説明や蛇足など行っていきます。

令和6年度著作権セミナー AIと著作権Ⅱから引用しています。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/94097701_02.pdf

AIの生成における「複製」(または「翻案」)とは?


(改変禁止なのでマーカー入れられない…)

この図で④の部分ですね、『著作物の「複製」「翻案」等』で『既存著作物の類似物(創作的表現が共通したもの)を生成・保存(複製・翻案)』となっている部分です。

で、ここに関しては*の注釈があって、『* ④・⑤は、AI生成物に既存の著作物との類似性・依拠性がある場合のみ』となっています。

つまり、生成結果が既存著作物の類似物(類似性・依拠性がある)場合は「複製」または「翻案」となる、という感じです。

AIの仕組み上、既存著作物の類似品は生成されにくいと考えられます。
たくさんの学習データから新しい表現を作り出すので、殆どの場合は既存著作物の類似物には当たらないと思います。

なので、ここに「複製」(または「翻案」)が入るのがよくわからない、というのも理解できます。

しかし、類似物を生成することはやろうと思えばできるので、そこも考慮して考えなければいけない、ということです。

結論から先に言ってしまえば、”手段を問わず”、既存著作物の類似物を作成することは、著作権侵害になりうる、ということです。
”手段を問わず”なので、AIだろうと、コピー機だろうと、アナログ絵だろうと、です。
資料はAIについての資料なので、AI視点で書かれているだけ、ということですね。

手段を限定してしまうと、トンチキな方法で類似物を作れば「法の穴」になりかねませんから、反AIが言う、著作権ロンダリングだ!ができてしまう、逆を言えばAIで著作権ロンダリングなんてできない証明がこれです。

ちなみにですが、この生成されただけの段階では実は著作権侵害にはなりません。
というのは、まだ生成された段階では私的使用の範疇だからです。
(業務でやったらどうなるんだ?はちょっとおいておくとして。)
実際には、SNS等に公開したり、販売などを行ったあとに侵害になる可能性があります。
まあ、自分しか見れないものを誰が侵害の判断をするんだって話ですしね。

蛇足①

ここからは蛇足です。(説明したいマンなので、興味のある方はお付き合いください。)

類似物が生成される可能性はいくつか考えられます。

  • ものすごい確率でたまたま似てしまった。

  • 基礎学習で「過学習」が起こってしまっていた。

  • 追加学習で「過学習」が起こってしまっていた。

  • i2iを使用して元絵の影響度を強めすぎた。

といったことが考えられます。

最初の「ものすごい確率でたまたま似てしまった。」
これはもう裁判で白黒つけるしかないんじゃないでしょうか?
そんなもの誰も判断できません。

次に「基礎学習で「過学習」が起こってしまっていた。」ですが、これもかなり考えにくいです。
基礎学習は18億枚以上(基礎モデルによる)の画像を学習していますから、特定の著作物が過学習される、なんてことは考えにくいです。

この記事でも『論文で示された一致率もわずか0.03%であり、AIがデータセットに含まれるものと全く同じ画像を抽出する確率は非常に低いといえます。』(上記記事内より引用)

となっています。
これは、過学習もそうですが、たまたま似てしまったもかなり低い確率ということになります。
ちなみに、記事内のこの女性はデータセット内に教師画像が多い方(有名な方らしい)だそうで、その人を狙って出して0.03%だった、ということです。

次に「追加学習で「過学習」が起こってしまっていた。」ですが、これは故意に起こそうと思えば起こせます。
通称「狙い撃ちLoRA」とか呼ばれているものですね。
(ちなみに、「狙い撃ちLoRA」自体が悪いわけではありません。)
そういった物によって既存著作物の類似物が生成された場合は、その既存著作物の「複製」または「翻案」が行われた、ということになります。

次の「i2iを使用して元絵の影響度を強めすぎた。」も、上記と理屈は同じです。
類似物を生成した場合は、その既存著作物の「複製」または「翻案」が行われた、ということになります。

こういう可能性があるため、AIで生成するのは「複製」または「翻案」には当たらない、とはできないわけです。
逆に言うと、AIでの生成を「複製」または「翻案」だ、とも言ってはいません。
あくまで既存著作物の類似物を生成した場合にのみ、「複製」または「翻案」にあたる、ということです。

蛇足②

本当に蛇足ですが、実はこの著作物の「複製」は身近なところでもたくさん発生しています。

今や、生活に欠かせないインターネットですが、パソコンやスマートフォンでWebサイトを見る際にも、実は著作物の「複製」が発生しています。

詳しく説明するととんでもなく長くなるので、ざっくりとですが、WebサイトにしてもSNSにしてもインターネット上の「サーバー」というコンピューターにデータがあります。

その「サーバー」にあるデータをパソコンやスマホで見るためには、パソコンやスマホに「サーバー」にあるデータを「ダウンロード」する必要があります。
実は、Webサイトなどをみているときはパソコンやスマホが「ダウンロード」を自動的に行なっているのです。
(仕組みを知ってる人は当たり前じゃないか、と思う部分)

要は、このWebサイトを見るために必要な「ダウンロード」が、著作物の「複製」に当たるわけです。(全部じゃないです。著作物じゃないものもあります。)

では、これは著作権侵害になるのか?というと、なりません。
著作権法第30条で『私的使用のための複製』というものがあり、簡単に言うと個人が自分で使用する場合は「複製」してもいいよ、となっています。
(なお、法律の専門家じゃないので、あくまで私の理解での話です。)

じゃないと、一々Webサイトを見るために著作権者に許可を得ないといけませんからね。
それではインターネットが使い物になりません。(インターネット以外も色々問題が出る)

この「私的使用」ついては他にも色々あるのですが、あくまでインターネットでWebサイトなどを見る時の話はざっくりこんな感じになっています。

以上、長い蛇足にまでお付き合いいただいた方、ありがとうございます。

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