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ザ・ルーム・ネクスト・ドア 「死を選ぶ特権性」
ザ・ルーム・ネクスト・ドアを観ました。
女性の友情と「死」というテーマを扱った映画で、観終わった後にいろいろと思うことがあったので感想を書きました。
※以下ネタバレを含みます。
よかったところは、
・マーサへのイングリッドの心の寄せ方。
・衣装やインテリアなどのアートワークは、ファッション好きとしてはとても魅力的だった。
・小説を読んでいるような気持になるセリフ。
・戦争や環境問題への言及。
※環境問題までは本当に必要だったのかはすこし疑問。
ここからの感想は僕の主観だいぶ入ってます。
マーサは元ニューヨークタイムズの戦場ジャーナリスト。
彼女の住む部屋はとにかく洒落ている。
インテリアも洗練され、多くのアートブックが並び、部屋には花が飾られ、ニューヨークの街並みを眺めながらベランダで植物を育てていた。
身につけている服もおそらくブランドものだろう。色とりどりの服をセンスよく着こなし、同じ服を着ている描写がなかったように思える。
もとニューヨークタイムズの記者がどれだけの稼ぎがあるのか分からないが、どのシーンからもとにかく裕福ということがわかる。
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(C)El Deseo. Photo by Iglesias Mas.
だからこそ死を選べたのではないだろうか。
マーサが最期の時を過ごすと決めた部屋は自動でブラインドが開き、ここも洗練された家具に囲まれ、大きなモニターでは映画が観れる。
庭にはプールまで付いていて、外のリラックスチェアで過ごすシーンがよく映る。
![](https://assets.st-note.com/img/1739161161-28kF0oGlZiAfN3EKOqLwBX9e.jpg?width=1200)
(C)El Deseo. Photo by Iglesias Mas.
自死する場所も自由に選べた。
彼女は尊厳死を選べる特権的な人間だったのではないか。
監督は、マーサと旧友であるイングリッドとの心の通わせ合いを通してシスターフッド的な「友情」と「死」というものを描いたのかもしれない。
ただ僕には、死を選べる裕福で特権的な人間が、恵まれた環境で心安らかに、死に装束まで自らコーディネートして自死するその姿は、ウクライナへの侵攻やガザでの虐殺が続くいま、そこで亡くなる人との愕然たる差を見せつけられたような気になった。
マーサは戦場ジャーナリストとして、多くの戦場を目にした。また戦争によって精神を病んだ末に、悲惨な死に方をしたかつての恋人のフレッドがいた。
戦争に対してどのような考えを持っていたか完全に読み取れはしなかったが、そうした経験を持つ彼女だからこそ、自らの死は満たされた尊厳死というかたちを選んだのだろうか。
ここに疑問が残る。
![](https://assets.st-note.com/img/1739161139-NiPdDWVznS7UubTwgGHMyA6K.jpg?width=1200)
(C)El Deseo. Photo by Iglesias Mas.
うがった見方をすれば、監督はおしゃれで洗練されたアートワークと、女性による美しい友情の物語を描くことで、「死」というものをキレイにラッピングして、どこか現実味のない、崇高なものへと昇華しようとしているのかと思えてしまう。
ガザの人たちは死を選べなかった。
死に方すら選べず、尊厳もない。道端には人々の死体や肉片が至る所にあると聞く。
またデイミアンが語る、気候変動の影響によっていずれ起きる人類の滅亡=死も、おそらくマーサのように死を選ぶことのできない、弱い立場の人たちが出てくるし、すでにその影響による自然災害で亡くなっている人はいる。
マーサが尊厳死を選ぶことは否定しない。
尊厳死については、宗教の中には自死を選ぶことはタブーとされているなど、いまだに賛否が分かれ答えは出ていない現代的な問題のひとつでもあり、それを描くことは人々に「死」ということを考えてもらう契機になる。
もしかすると何年後かには人の権利として当たり前になる世界がくるかもしれない
マーサの尊厳死とガザの人々の死を結びつけるのは乱暴だろうか。
でも、このタイミングで公開され、「死」をひとつのテーマとしてとりあげたとき、「死」とは何か考える中で僕の中で一番に思い浮かんだのはガザのことだった。
いつの時代も、安らかに死を迎えられる人とそうでない死を迎える人がいた。
その事実は忘れてはいけないし、「死」をどこか崇高なものとして美しく描くその残忍さもあるんじゃないかと思っている。
この映画を観てどう思ったのか、もしよければコメントくださいね。