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先週の星占いが腑に落ちる無茶なラッキーカラーだもんな 木曜の知らない街の図書館の清い西日に炙られている 温かいうどんであろう きみの言う「おうどん」が持つ響きに思う うれしいの、あなたがあなたにやさしくて 代わりに眠ることはできない
この中に臓器一式あるのかな眠るあなたの乳毛を抜いた 臆病なわたしを置いて滑り出すそりがあなたの手前で止まる 結婚の報告を聞くでしょうから肌の透けないタイツを選ぶ 好きにすることにしました新しい手帳を船に忘れたために
境目は意識するほど溶けやすく夏至の真昼に知る花呼吸 (suiu 2024年6月21日) 「かすみそう」あなたのうでにそれはなく、ひかりをさしたつぶやきだった (毎月短歌16 テーマ詠『ひらがなだけの歌』) うつくしい記憶になってたまるかよ心に桃の産毛を生やす (第78回恋愛短歌同好会) 希死念慮、ついてくるなら潮騒が聞こえなくなるまで歩こうか (現代歌人協会主催第53回全国短歌大会) ひとよりも多くの薪をくべているあなたの火が見たくて恥ずかしい (連作『火の番』)
釉薬の薄いところを撫でながら聞いているよないないよな白湯 北風がまつ毛をめくる慣性のはたらく身にも人件費あり 路傍にてブーツの紐を固く結う幼い冬に傅くように 二時間の電車の窓はよく滲む和紙なのでしょう 既視の階調
ただいまをくれないひとと居た頃のわたしはずっと旅先だった 残されたコーヒーミルが錆びてゆき「誰か捨てて」の誰かを担う 待ち侘びた予定を食った残業に報いるためにあしたも仕事 たじろぐな 波に合わせて息をせよ 雲に合わせてまばたきをせよ
裏庭の薔薇の画像を二枚撮るひとつは彼の分だと言って モノクロの記事のあなたにノルウェイの森の表紙の赤をあてがう 納豆の蓋に名前を書いておくそこにわたしが居るかのように 向かい風に刺すまち針として金のポニーテールをキャップへ通す
陽炎にくれてやったのあずきバーあと一口が落ちてしまって 温厚な目のままなのに童貞を「捨てた」と言えるひとだったっけ 夏に手を引かれるような重たさで花火の殻の浮かぶバケツは シュー生地の潰れたものに刃を入れる誰かいますか大丈夫ですか
はしごしてまで話すことなかったな齧るナッツの仲間のなにか 電車より先に到着した風が主線をえがくこめかみの汗 許される近い言葉が見つからず「かわいい」をまた舌で溶かした 神様のようなあなたも肉があり滲む指輪の跡を見つめる この胸で眠る者から息が透けわたしの脈が際立ってゆく
隠すべき心があるが泡盛の濃い透明に怯んでしまう 誕生日おめでとう もう親ですか苦手なトマトどうしてますか 食パンの柔いところを食べさせて素描のヴィーナスに光さす 訊くことがこわい気もしている母のこどもの頃の将来の夢 表題のTwitterハッシュタグにおいて、まとめた4首です。 なお、これまでの自選まとめはnoteのマガジンにも格納しています。
ひととして至らぬ夜に虫の息ほどのラジオを枕に溢す 経験は選べたはずだあたらしいシャンプーに酔う朝方の雨 向こう見ずにだけ備わるかがやきは川面を切ってさよならもなく 我々の初夏はふたつの意味を持つファーストサマー的ニュアンスの 境目は意識するほど溶けやすく夏至の真昼に知る花呼吸
やっと手に入れた機械のからだでも雨には弱いままだ、ルーシー 世界より自分のために返り血を正義の対は正義しかない 生き急ぐことは彩度を伴って躑躅がガードレールを包む 人生のどこで貼るかもわからない薔薇のトーンの備えだけある 転調ののち繰り返すサビに沸く何の話でそうなったっけ
コーポって感じのきみの部屋いつか忘れたい日がくると知りつつ 去り際で分かる わたしは原作にいない劇場版のキャラだな 久方の酒にとろけて月面に憧れすぎているかもしれず はりぼてのはりぼてだった交際も楽しかったな今しかなくて レンタカー返すときまでふたりだよ眠くなったら眠っていいよ
横切った明治通りで見る雨の夜は地面がずっと明るい 長雨を済ませた空のあざやかに慣れないものをこわいと思う お日様のようだと百合を飾るひと花言葉など知らなくていい 満開を逃してきみは謝ったここが何処でもよかったけれど あすよりも先を思っている春のきみの海馬と仲良くしたい
陽が透ける梅の香りを吸って、吐く 冬の未練は一昨年のもの 凍星が出会った頃に重なれど二度の居留守でわかってほしい 別れ際みたいな顔のおはようだ残り三泊四日あるのに 偶数はたぶん寒色だと思う眠い夕方だから話すと 独白を歩みにのせて往く夜のロールアップの裾から桜