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レガシー産業スタートアップの長い戦い
1. 高品質な日本の配送サービスが、世界に取り残されていく
日本の配送サービスは世界でも圧倒的に高品質です。配送サービスに荷物を預けて手ぶらで旅ができる国なんて僕の知る限り日本しかありません。世界でも「Yamatoに預けるとJapanは手ぶらで旅ができてAmazingだ!!!」と訪日外国人のSNS投稿が話題になるほどです。その背景には、1976年にヤマト運輸が開始した「宅急便」サービスを皮切りに、多くの物流会社の競争を経て全国をカバーするC2C配送ネットワークが確立されたことがあります。しかし現在では競争も落ち着き、全国を網羅する宅配ネットワークが数社によって寡占されており、競争を促す新規プレイヤーの参入障壁が高く、技術術革新や効率化が進みにくい構造になっています。また、日本の全国物流ネットワークは、宅急便のようなC2C配送ネットワークを起点に進化してきたため、宅配荷物の主流となっているEC物流などのB2C配送システムと構造が異なり、再配達や紙の不在票といったC2C配送をベースとした過剰サービスがEC物流において負の遺産となっています。
一方、アジア圏ではEC市場の成長に伴い、B2C物流ネットワークがスピードと利便性の観点で急速に進化を遂げ、都市部を中心に日本よりも高速で荷物を受け取れるECサービスが当たり前になっています。もちろん再配達や紙の不在票といった「負」はありません。結果として、日本はグローバルで急成長する国々に、配送の受取体験やサービスの柔軟性でどんどん追い越されている状態にあります。
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2. 構造上解決できなかった「負」—今見えてくる変革の兆し
日本の物流業界には「再配達」「多重下請け」「環境負荷」といった、長年構造的に解決できていない多くの「負」が残っています。再配達による効率の低下や二酸化炭素の排出増は、顧客体験だけでなく、社会全体への影響も大きくなっています。他の業界と比べ、配達員の労働環境は過酷であり、長時間労働が常態化し、ドライバーの離職率も高い傾向にあります。
また、今までは安請負で下請けの物流事業者が競争し合う構造によりドライバーの賃金も上がりにくい状況でした。しかし、人材不足や2024年問題を背景に、ドライバーの賃金上昇の流れが生まれつつあります。この流れを契機に、業界全体で抱える「負」を解決に向けた動きが加速することが期待されます。
国もまた、こうした様々な課題解決に向けた取り組みを強化しており、物流業界のDX推進や持続可能な労働環境の整備が求められています。207社は国土交通省のプログラムに採択され、国と足並みを揃えながら、業界における変革を一歩ずつ進めることを目指しています。
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3. 日本産業の未来を創るのは、バーティカルスタートアップ?
日本の物流業界など、レガシー産業で硬直化している分野に対してバーティカルなアプローチを実行するスタートアップが変革の鍵を握ると思っています。特に日本国内では、ホリゾンタルなスタートアップは、いずれグローバで資金力や豊富なアセットを持つ企業との競争に直面するため、領域に特化したバーティカルスタートアップが市場的にも分があると考えています。
またこのバーティカルなアプローチは、ソフトウェアの提供だけに留まらず、オペレーションや商流の上流まで積極的に関与することで、産業全体を変革するインパクトが生まれると思っています。例としては、SaaSプロダクトで構築したネットワークを活用し、実オペレーションや商流の次なる課題にアプローチすることで、より深い変革を産業に対して促進するような動きができるなどです。繰り返しになりますが、このようなバーティカルスタートアップこそが、日本の産業のアップデートを牽引する存在になり得ると考えています。
4. 207の挑戦—「バーティカル」アプローチで市場を変える
207社は、物流業界の5つの主要プレーヤー、「荷主」「元請け物流会社」「下請け物流会社」「個人配送員」「消費者」にすべてに対し、サービス提供を行うことで、物流業界全体をデジタルでつなぎ変革をにつなげていきたいと考えています。それぞれに対して、以下のような具体的なアプローチを行っています。
個人配送員向け: 2020年に提供を開始した「トドクサポーター」は、配達効率を高めるアプリで、今では6万人を超える配送員ネットワークが確立されています。宅配は7割以上が個人配送員で支えられてるため、この個人配送員セグメントのデジタル化/ネットワーク化/可視化は変革に向けた重要な要素だと考えています。
下請け物流会社向け: 2023年から提供を開始した「トドククラウドインボイス」の営業活動を通して500社を超える宅配会社とのネットワークを構築。プロダクト自体は、請求業務や配送管理の効率化をSaaSとして提供しています。
元請け物流会社向け: 元請けの大手物流企業に対しては、物流現場に関する知見とプロダクト開発の知見を生かしたモダンシステム開発サービスを提供しています。現場解像度およびプロダクト解像度が必要な複雑な要件に入り、大手物流会社とのリレーションを作りながらサービスの提供を続けています。
荷主向け: 我々が提供しているプロダクトで獲得した配送ネットワークの強みを活かし、荷主向けのサービスを今後展開予定です。ついにサプライチェーンの上流へとアプローチできるフェーズに到達しました。時間がかかりましたが、これからが楽しみで、産業全体への包括的な価値提供を行っていきたいと思っています!
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初めはニッチなセグメントに対してアプリを提供した。もちろん儲からない。とは言え、そのアプリで一定の業界認知を得た事で、次のプロダクトの提供機会が広がった。そして大きなネットワークと現場解像度の獲得ができたことで次の大きな革新に進んでいけるしマーケットも格段に拡大する。これが僕がやりたかった戦略。楽しみです。
5. 7年間の挑戦から見えたもの
創業から約7年間の挑戦を通じ、僕たちは物流業界が抱える課題の根深さを肌身を持って実感してきました。しかもそれは、業界だけではなく、日本全体の問題やマクロ経済やサプライチェーンからも大きな影響を受けることを今では実感しています。日本のこのレガシー産業の変革を狙うスタートアップは、日本のアップデートの一翼になれると思いますし、それにならなければ人生の時間を投下している意味がないと本気で思っています。だからこそ、これからの僕達207の挑戦に少しでも興味が湧いたそこの方はぜひ一度お話させてください。この人口減少でレガシー産業が硬直化して競争が生まれにくい状況であっても、必ず変革できると信じています。207社のミッションに共感し、この未来を共に形にしていける仲間を心から歓迎します。僕たちと共に、物流業界の明日を創り上げましょう。