神社仏閣巡りの記 (2) --入谷鬼子母神その2--
さて、前回は殆ど鬼子母神の話も朝顔市の話もせずに終わってしまった。
朝顔市っていうのは江戸時代から入谷の鬼子母神のあたりで近所の植木屋が朝顔を育ててたのを売るようになったのが謂れらしく、下町で暑気払いで朝顔を眺めるのの風物詩になっている。
ここの朝顔もやはりプロの植木屋が作っているので、出来栄えが素晴らしく、ガキが小学校の理科の授業でいい加減に育てるようなのとは全く違う出来だ。
花の形は理科の授業で作るのよりは小ぶりだが、しっかりしていて、やっぱり花の色もくっきり鮮やかに出る。ここで買った朝顔はやはり種をつけるので、自分たちで来年も朝顔市で買ったような素晴らしい朝顔を育ててみようと春先から鉢に植えて丹念に水をやって育てたところでやはり小学生が育てたようなぼんやりしたありきたりなやつにしかならない。
だからやっぱり本物は朝顔市で色んな植木屋の鉢を物色しながらこれちょうだいってやるのがよい。
ちなみに朝顔市で買う朝顔には、「朝顔市」の札が付いてるし、どこも統一された鉢を使ってるので、俺たちみたいなクソガキが学校の帰りに朝顔市乗朝顔を見ると、お、あれは朝顔市のやつだなってわかるので、おいそれといたずらもしない。そもそもガキの下校時間には朝顔は咲いてなく、浅野桐江の時間は急いでるから、朝顔市の朝顔だなと思って通り過ぎるだけだし、わかったところでおじちゃんたちが花に水やってる最中だったりするので迂闊なことをしようなんて気にはならない。
植木屋と一緒に色んな屋台も店を出してるので、街歩きかねて露店の食い物をつまんで腹ごしらえしつつ眺めるのも一興だ。しかしながら、夏の暑くなりかけの時期にやるもんだから帽子は持ってった方がいいし、すぐにつかれちまうので、ものの一時間か二時間で退散するのがうちの常だ。
地方発送もしてくれるので、田舎にいる知り合いに夏を告げる贈り物に送ったっていい。きっと江戸というか、東京にしちゃあちったあマシなもん送ってくるじゃないかと感心されるかもしれない。
俺はものぐさなやつなので、朝顔市なんて行ったって写真なんてとりゃしないし、大して上手くもないので、インターネットで調べるとこういういい感じの写真が沢山あるし、何より現地で本物を見てほしいと思う。
朝顔市の間には鬼子母神の方ではお堂を開けて中でお経を上げたりなんかしている。
逆に言うと普段はお堂は閉まっていて静かなもので、よくよく気を付けないとそれが鬼子母神なのかよくわからないで過ぎてしまう。
たいていの神社仏閣っていうのは南側が正面入り口で、そこに山門があって、そこから本堂に向かっていきそうなものだが、こっちの鬼子母神は言問通りがわ、つまり、北側が入り口になっている。
そして、朝顔市の間は朝顔市にちなんでか、境内で朝顔のお守りをだしている。朝顔をあしらった可愛い意匠で、髪飾りになるようなのもあったりする。ここでお守りを頂くと、火打石を打ってくれる。
鬼子母神は安産のご利益があるからなのか、女性が買うのがおおいみたいだが、そもそもこういうデザインは女性受けがいいからなのかもしれない。
実際に、入谷の鬼子母神には、江戸時代のある女の人ができものだか腫れ物だかで悩んでたのを入谷の鬼子母神に願をかけたところ直ったなんていう言い伝えを聞いたことがあり、鬼子母神なんていう子供絡みの仏様であるのと類推されるように女性のそういった悩み事にご利益のあるイメージを持っている。
インターネットで調べてみたら色々とあるみたいだったが、俺はガキの頃に聞いたこの江戸時代の女性の病気が治ったっていう言い伝えは割と印象に残っている。
朝顔市のときは鬼子母神でお経をあげてるといったが、このお経がまたとても生かしていて、大変トライバルな感じがして聞き入ってしまう。お経というのは仏様の教えをお経に乗せてトリップするためにあるもんなんだなって思える。
時間があれば御祈祷に上がっても面白いかもしれない。
お前ところで食いもん屋の話が全然ないじゃないかって思われるかもしれないが、この時期の入谷とか下谷ってのは大体朝顔市で人がごった返してて、到底メシなんてありつけるもんじゃないので、俺は大体小腹を屋台の食い物で埋めている。
しかし、入谷の鬼子母神の向かいに野田屋っていう有名なうなぎ屋があり、大層ないわれがあるそうだ。美味そうなので一度は行ってみたいと思っているがなかなか機会がないものだ。
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