創業者インタビュー | 社会課題と技術解決が合致する事業で、次世代の生活スタイルを創る|代表取締役CEO兼CTO
こんにちは。Sinumy広報担当の福島です。
当社は、「シームレスな体験で世界を幸せにする」をミッションに、独自の特許技術「Sinumy Technology」の開発を行っています。
今回は当社の代表取締役CEO兼CTOの足立さんに、事業にかける思いや研究の面白さについてお話を伺いました。
「起業」の原点は社会課題を解決したいという思い
福島:本日はよろしくお願いします。Sinumyの事業や起業秘話については何度も語って来られたと思いますが、今回は足立さんご自身の生い立ちや創業者としての思いも含めてお話を伺いたいと思います。
足立:よろしくお願いします。
福島:足立さんは学生ベンチャーも経験されていますが、「起業」を意識し始めたのはいつ頃ですか。
足立:小学校の高学年ぐらいです。4年生の時に今の生き方のベースとなる2つの出来事があり、「歳を取って過去を振り返った時に、後悔しないような生き方をしたい」と思うようになりました。
それ以来、「常に考える」ということを意識して、ボーッとする時間をなくしました。とはいえ、はじめは考えるネタがなく、算数の問題を解いたり、自作してみたりしました。常に考え続けることで時間を無駄にせずに済み、後悔が減ると思ったんです。常に考える習慣は今も続いています。
福島:足立さんの原点がその辺りにありそうですね。
足立:ちょうどその頃からニュースが面白くなり出して、学校の先生とよくニュースに関する話をしていました。気になることを先生に色々尋ねたりして。学校教育についてもよく考えて、もっとこうすれば良いのにと思ったりしていました。社会の課題について色々考えるうちに、世の中や社会を良くするためには、多額のお金が要ることに気がつきました。それができるのは、起業しかないと思ったのが始まりです。
福島:起業を目指すと言っても、その背景にある想いは人それぞれだと思います。足立さんの起業の原点はずっと昔にあって、世の中を良くしたいという思いがスタートなんですね。
研究も事業も面白い!最新技術で社会課題を解決したい!
福島:子どもの頃から社会の課題に強く意識が向いていらしたようですが、何か行動の変化はありましたか。
足立:中学生になってから、事業アイデアを考え始めました。はじめの50個はすでに身近にあるサービスでした。51個目からは自分の知らないことを思いつくようになりました。それでも調べてみると、世の中にすでに存在しているものでした。
ターニングポイントになったのは100個目のアイデアです。自分の思い付いたアイデアと類似する事業を展開する会社が現れ、革新的なサービスとして世間で話題になりました。その時に、「ようやく自分にも今までにない事業を思い付けるようになった」と思いました。
福島:中学生の頃から、「世の中の課題を探して事業のネタを考える」ということを習慣にされていたのですか!実際に、起業されたのは大学生の時ですね。
足立:在学中に2つの事業を興しました。一つは医師国家試験対策本の出版業で、もう一つは大学の研究室に向けて、IT関連の製品を製造したり納めたりするITベンチャーをやりました。当時は研究室に出入りできる業者がほとんどなく、業者は自力で製品を売れなかったからです。学生ベンチャーを経営する中で、営業や組織の運営などを実地で学びました。
福島:在学中に起業を経験したものの、卒業後は大企業に入社されたのはなぜですか。
足立:大学3年生の時にインターンで、客員研究員としてアメリカの大学に行きました。滞在はわずか2か月間だったのですが、良い成果を上げることができ、4年生の時に超音波の代表的な国際学会で発表する機会を得ました。その体験で改めて研究が面白いと思うようになりました。
学部では素粒子物理を専攻していましたが、大学院ではレーザーや光学を専攻し、そのまま研究を続けました。これまでの経験から、事業も研究のどちらにも関わりたいと考えていたので、大学院卒業後はそれが実現できそうなメーカー(パナソニック)に就職しました。
福島:その後は、外部メディアの取材でも度々取り上げられている通り、在職中に数多くの特許を生み出したというストーリーですね。ここまで伺ってきたお話で、ディープテックで世の中を便利にするSinumyは、研究と事業の両方に強い関心と深い知見を持つ、足立さんらしい起業の形だなと改めて感じました。
「ハンズフリー」はシーズとニーズの合致する珍しい技術
福島:事業のネタを考え続けてこられたので、起業のネタも選択肢があったのではないかと思います。その辺りはいかがですか。
足立:前職のパナソニックでは、先端研究をする部署にいました。部署として先端技術を事業にどう繋げるか考えることを求められていたこともあり、2週間に1回は事業のネタを書き溜めていました。そうする中で、技術をベースにして事業を興す難しさを感じていました。技術としては面白いものであっても、事業には結びつかないものも数多くありました。
福島:事業のネタを考える習慣は、社会人になってもずっと続いていたのですね。Sinumyのハンズフリーサービスの原点となるアイデアは、ご自身の通勤時の体験から生まれたものでしたね。電車の乗り継ぎのたびにICカードを出すことの不便さを感じたことがきっかけ、というお話はよく仰っています。
足立:そうですね。ハンズフリー技術は深く考えていくと、色々な場面で使える可能性があり、とにかく幅広いことがわかりました。これは非常に珍しいことです。コア技術は一般的に、可能性のある市場を3つぐらいしか思いつかないものです。それがハンズフリー技術の場合は、改札だけでなく、レジ、自宅やオフィスの鍵など、利用シーンは多岐にわたります。これほど自由に使える技術はほとんどありません。
福島:その技術を事業にしようと思って、起業されたわけですね。
足立:色々な経験から、シーズ発では成功しないことがわかっていました。シーズ(社会課題)とニーズ(技術解決)の合致するところにこだわり、自分自身で事業化することで両者の間にズレが生まれることがないようにしたいと思いました。
はじめは人版ETC(ハンズフリー)のような技術は誰かが思いついていそうなもので、世の中にすでにあるのではないかと思っていました。ところが、調べても実現したものがありません。過去の失敗の原因や不可能とされる理由も調べて理解した上で、「実現する可能性がある」と思って会社を辞めました。
福島:まだ技術ができたわけではなかったものの、実現可能性を確信したところで起業に踏み出されたのですね。
足立:過去の研究から不可能とされていたのですが、物理的背景を理解すると、可能性が見えてきました。分野違いの自分が見たので気づいたのかもしれません。とはいえ、実現までに半年かかりました。うまくいかない時は落ち込んでゲーセンに行って気晴らしすることもありました。
寝ながら解決策を考え続けては一つひとつ課題を解決して、それでも何度やってもうまくいかず、最後は思いつきでこれまでの解決策を全部同時に実施してみるとうまくいきました。筋道立てた研究だけでうまくいくわけではなく、当てずっぽうで実験したことがうまくいくこともあり、それにより大きな結果に到達できました。
ゼロから閃きで解決するのがSinumyの研究
福島:Sinumyの研究の面白さについて教えてください。
足立:ゼロから閃きだけで解決するのが、Sinumyの研究です。誰もやっていない技術であり、考え方なので、課題から(既存の)解決策を探していっても見つかりません。重ねて難しいのが、様々な思想や条件をクリアするわずかな可能性で生まれた技術はオールマイティというわけではありません。さらなる制約条件があり、またそれをクリアするために突飛な考えが必要になります。
福島:Sinumyの研究だからこそ、閃きが求められるのでしょうか。
足立:それはあります。もちろんSinumyに限りませんが、このように閃きや突飛な考え方を必要とする研究は、研究全体で見るとさほど多くありません。事業のために制約条件を一つクリアしようとすると個別最適になり、その他の大事なところを犠牲にしてしまうこともあります。そうならないように、事業と研究のバランスをとった解決策を見出すのはとても難しく、従来にないやり方や考え方を編み出すことが求められています。
福島:そうすると、ハンズフリー技術が完成したため、突飛なアイデアが必要とされる過程は終わったというわけではなく、これからの研究にも求められているわけですね。
足立:そうです。現状の課題を正しく理解することと閃きの両方が必要です。もう一つ、Sinumyの面白さとして、ハードを使ったIoTサービスだということが挙げられます。IoTというのは実は難しくて、I(Internet)ばかりやT(Things)ばかりに注目してもう一方をおざなりにするとうまくいきません。
Sinumy Technologyの場合、IがBluetoothのような「プロトコル」で、Tが「位置測定」や「電波の物理的現象」などです。この両方をきちんと理解することが重要です。幅広い興味、深掘りする力、発想力をお持ちの方が、Sinumyの研究にはぴったりだと思います。
Create Next Generation―次世代をつくる―
福島:ここまで、社会課題の解決に向けて、事業と技術の両面から取り組んでこられたお話を伺いました。どちらか一方ではなく、どちらも突き詰めてこられたからこそ、現在のSinumyがあるのだろうと思います。そんな足立さんにとって「仕事」はどのような存在ですか。
足立:仕事は次の世代や社会をつくるためのものだという思いがあります。次の世代に役立つのだという思いが、活力の源になっていますし、やりがいにもなっています。研究は楽しいよりも、結果が出ずに苦しい時間の方が多いかもしれませんが、歴史上の偉大な先人も苦しみの中で大きなことを成し遂げて現代に役立っています。成し遂げられた時の喜びは大きいですし、そういうものだと思っています。
福島:まだ世の中にない画期的なアイデアを実現しようとするだけに、産みの苦しみも大きい分、成し遂げた時に社会に与える影響も大きいわけですね。
足立:私たちは技術によって社会に貢献していきます。技術は次世代をつくる大事な要素の一つです。お客様に次世代の体験を提供し、そうした技術に関わる社員一人ひとりの生きがいにも繋がって欲しいと思っています。そのためには仕事の中で学び、成長し続けることが大切です。
福島:そのような思いが、公式サイトや名刺のロゴにも含まれる、「Create Next Generation」という言葉に繋がっているのですね。
文化として定着するまで加速度的に成長する
福島:昨年から急速に社員の数が増え、組織としての体制も整いました。変化を感じていらっしゃるでしょうか。
足立:今年4月に出展した「第33回Japan IT Week春」では、500名ほどの方にハンズフリーゲートを体験いただきました。アンケートに答えてくださった企業様の数は、およそ200社にのぼります。展示会前後でメディアにも多数取り上げられました。
これだけ多くの反響を得られたのは、準備から展示会当日まで、社員が一丸となって取り組んだ結果です。展示会後は着実にお問い合わせの数が増え、連携先との実証実験も具体的に進んでいます。展示会を契機に、今年は飛躍の年になっています。
福島:事業開発の領域も広がってきていますし、成長はまだまだ続きますね。
足立:これまでもそうでしたし、これからも成長は止まりません。SinumyはBtoBtoCのサービスで、あらゆる分野のサービス提供者とユーザーを繋ぐことができます。利用者が増えれば増えるほど、Sinumyの利便性が向上し、導入する企業様が増え、ユーザーも増えるという相乗効果が狙えます。いわゆるネットワークの外部性です。少なくとも世の中にハンズフリーが浸透して文化として定着するまでは、とどまることなく加速し続けます。
福島:ハンズフリーが当たり前の世の中になる日が楽しみです。
足立:Sinumyは、インフラを作っていく事業ともいえます。昔からこだわっていた「次世代をつくる仕事」ができていると思うので、とてもやりがいを感じています。
福島:本日はありがとうございました。最後に、これからの意気込みなど一言ください。
足立:私たちはあらゆる認証や決済をハンズフリーに変え、次世代の生活スタイルとして根付かせることを目指して、新たな挑戦に挑み続けます。加速度的に成長する当社にぜひ参画していただき、一緒に次世代をつくりましょう!