見出し画像

「Sister Ray」だけ再生できないの何で?【The Velvet Underground】

アルバム「White Light/Wkite Heat」の概要

はい。わたくしApple Musicユーザーです。SpotifyではなくApple Musicを使っています。iPhoneユーザーとしての誇りをもってApple Musicです。でも、そろそろ乗り換えちゃおかな、って思うこともあります。それが今回の件。

「Sister Ray」というのは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)の2ndアルバムである「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート(White Light/White Heat)に収録された曲(情報量多いなァ…)。

バンドの紹介はwikipediaで。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)は、1964年に結成されたアメリカのロックバンド。ヴェルヴェッツという略称でも呼ばれる。
商業的な成功を手にすることなく解散したが、ルー・リードのポップセンスから生まれる美しいメロディライン、文学的素養から生まれた同性愛やSMなどの性におけるタブーや、ドラッグなどについての歌詞、ジョン・ケイルによる前衛的かつ実験的なサウンドを特徴とし、同世代のデヴィッド・ボウイやザ・ストゥージズ、ドアーズや、後進のパティ・スミスやテレヴィジョン、ジーザス&メリーチェインをはじめとする多くのアーティストに影響を与え、ロックの芸術性の向上に大きく貢献した。

1996年にロックの殿堂入りを果たした。

「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100組のアーティスト」において第19位。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ヴェルヴェット・アンダーグラウンド

さてヴェルヴェッツといえばアンディウォーホルが手がけた例のバナナのジャケットの1stアルバムが有名だ。その音楽自体もだし、バナナジャケット単体ならなおさらだ。

今回はその翌年にリリースされた、地味にエゲツないアルバムの話。その概要を見ていこう。


A面
1. 「White Light/White Heat」 2:47
2. 「The Gift」                            8:18
3. 「Lady Godiva’s Operation」 4:56
4. 「Here She Comes Now」 2:04

B面
1. 「I Heard Her Call My Name」 4:38
2. 「Sister Ray」                        17:28

合計時間:
40分13秒
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート

収録曲は6曲。「少ねえぞ手抜きか!?」と声を荒げる人もいるかもしれない。でも合計時間は40分越えだ!この時代(1960年代)にしては割と長いっぽい。サージェントペパーズよりちょい長いくらい。1番の原因が何と言っても、ラストの「Sister Ray」だ。17分って長えな!

「Sister Ray」とかいうなっげえ曲

これくらいの長さの曲って他にどんなのがあるだろう。ピンクフロイドとかプログレ界隈なら20分前後とか結構多そう。

僕が真っ先に思いつくのは、ソニック・ユースのThe Diamond Sea。19分とかある。1995年のアルバム「Washing Machine」のラストの曲なのだけど、こちらも(インディー期よりは洗練されているけど、さらに強烈な)ノイズロックになっている。いや、ロック的なノリからはかなり離れつつあるのかもしれないけど。この曲は歌パートとノイズパート(?)があるし、コーラス・ヴァースという区別もあるし、ノイズパートの中でも静かな部分から徐々に強烈になっていくとか、いろいろ展開が存在する。

インディーな顔してめっちゃ計算尽くめの人たちだ。「ビッチっぽいギャルだけど、実は高学歴で漢検持ってて普通に彼氏持ち」みたいな(?)(例えの構造が大失敗してそうだけど、フィーリングで…)

Sister Rayの話に戻る。一方こちらは、ひどい。「ビッチビチのビッチ」だ(??)。

単純なリフと緩やかにドカドカ進むサウンドは、プロトパンクとかオルタナの始祖とか言われる由縁の分かるスタートだ。そして音がぐっちゃぐちゃ。言葉通りLo-Fi。ローファイの始祖もヴェルヴェッツだったか…(?)

音がぐちゃぐちゃでそんなことどうでもいいと思いそうなことだけど、この曲はベースなし。ギター2台とキーボードとドラム。まあギターはだいたいわかるとして、キーボード(正確にはオルガンらしい)が無茶苦茶な音を出していて、全然それっぽく聞こえない。これは歪んだギターアンプから 音を出しているかららしい(英語版wikipedia情報)。

それにしても、まあこの曲には全然それらしき展開というものがない。アドリブでやりたい放題感が出てる。というかメンバーのエゴのぶつかり合いみたいなものだろうか。

ヴェルヴェッツ本にこのアルバムのレビューが載っていたので抜粋

とりわけ⑥の"シスター・レイ"はすさまじい。起床転結さえも逸脱し、ギターとキーボードで殴り合って血みどろになっているかのような凶暴なノイズまみれのサウンドを17分半にわたって繰り広げている。展開の予想できない混沌とした演奏の進行は、ギリギリで音楽という形を保っているものの、人間という生き物の物騒な側面を凝視してドキュメントのようでさえある。

「殴り合って血みどろになっているかのよう」という表現が面白いです。前半でボルテージ上げてますけど、後半の途中ヘッロヘロになってますからね。軽いジャブで戯れあってるみたいな。でも終盤が1番むちゃくちゃ。テンポどこ行った。どの楽器がどの音ならしてんだよって感じ。

Apple Musicどうなってんの???

こんなむちゃくちゃな曲なんだけど、僕は好んでよく聴いている。この曲がと言うよりかはアルバム全体通してだけど。
そこでようやくタイトルの件。Apple Musicで「Sister Ray」聴けなくね??っていう。

Apple Music様もアーティストページに必聴アルバムとして載せている「White Light/White Heat (45th Anniversary Edition)で「Sister Ray」をクリックすると…

「この曲は現在、この国または地域では入手できません。」という禍々しいテキストが眼前に…!

この現象は実は僕がヴェルヴェッツを聴き始めた去年(2020年)の時からそうだった。何で???って感じだったけど、下にスクロールすると見える「その他のバージョン」という欄に「Super Delax」なるものがあって、そっちでは、順番通り全部聞けていた。ただ6曲聞き終わると、収録曲の別バージョンとかアウトテイクとか、特に興味のないトラックが始まるのでちょっと嫌だな〜とは思っていたけど。

そして、おそらくここ数ヶ月の出来事だと思われるのだが、その「Super Delax」バージョンの方でも「Sister Ray」だけブロックされてしまった。何で!!???!!???

どうやらSister Rayを聴く手立ては「Gold」とかいうベスト盤みたいな編集盤しかなさそうということになって相当萎えた。やはりアルバム曲が何曲かスルーされているのだ。アルバム全体で好きだったのに。アルバムが味わえないなんて…

でも、それは思い過ごしだったようだ。「Peel Slowly and See 1965-1969」とかいうベスト盤もあって、こちらでは収録曲6曲が順番どおり並んで収録されている。アルバム全体で慣れ親しんでいるので、やはりこちらの方が気持ちがいい。

しかし、結局はこちらもまた「Sister Ray」だけブロックされてしまうのではないだろうか…?そうしたら「Gold」の方を聴こうかな…?また似たようなことが起きたら、ライブ版でも聴くかな…?(いたちごっこかな?)

アルバム「White Light/White Heat」は全体的に歌詞がヤバいみたい

というわけで意味不明な状況に僕は相当苛立ってるのだが、一つ仮説を思い付いて、取り敢えずこれで少し納得するようにしている。それが「Sister Ray」の歌詞の問題だ。

そもそもヴェルヴェッツの歌詞はかなりダークだ。当時としては掟破りと言われるほどのものだったようだ。それは同性愛について歌っているとかいわれたり、SM的世界についての歌詞だったり(「Venus in Furs」が分かりやすい)、薬物についての歌詞だったり(「Heroin」という直球の曲もある)、色々タブーに触れるようなものだったという。

そして2ndアルバムになると、サウンドとも相まってだと思われるが、暴力性が強調されたとか言われる。

最初の表題曲「White light/White Heat」からしてドラッグの感覚についての歌詞のようだし、2曲目の「The Gift」では最終的に頭をかち割られて朝日のなか血のアーチを作る男のストーリーの語りが聞こえる(むちゃくちゃ分かりにくい説明…)。

3曲目の「Lady Godiva's Operation」はどうも性転換手術の様子の歌詞らしい。最後には「By my count down, the head won't move」ですと。なんか2曲目と曲調もバッドエンドなのも似てる…

4曲目の「Here she comes now」だけはちょっと普通の落ち着いた2分くらい曲。3rdアルバムの方の雰囲気がする。「If she ever comes now」ってずっと言ってる曲。

5曲目の「I Heard Her Call My Name」は暫定1番やばい。歪みまくってるギターの音で開幕するしずっとうるさい。ゆらゆら帝国の「午前3時のファズギター」がずっと続いてる感じ。こんな昔にこんなむちゃくちゃなギターかましてるルー・リードに痺れます。憧れます。よりイカれた崩れたジミヘンみたいな?

この曲にまつわる話がヴェルヴェッツ本に載っていたので抜粋します。

68年1月発表の2枚目のアルバム『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』は、大音量のフィードバックでライヴ・ステージをカオスに変えてしまう急進的なバンドが、激しい勢いで自分たちの音楽をレコードに刻み込もうとした力作であった。が、そのレコーディング作業はメンバー同士が牽制し合い、強い自己主張をぶつける不穏な場となった。特にこの頃顕著となっていたのがリードのエゴや気難しさである。
「"アイ・ハード・コール・マイ・ネーム"はリミックスで台無しになった。ルー以外は何も聞こえないでしょ。その頃、少しばかりエゴが大きくなっていた彼がミキシングしたから、自分のやった部分ばかり強調して、あとは無視なのよ。」(タッカー)

ヴェルヴェッツの女性ドラマーである、モーリン・タッカー氏から「台無し」のお墨付きをいただきました。それほどうるさいギターですからね。普通にミキシングしてたらどうなってんいたんでしょう。気になりますね。

ところで、開幕の歌詞を調べると、「Hear she comes now」か「Here comes count down」かで分かれている。Apple Musicは後者だ。こういう時にApple Music側が正答していることはあまりないのだが、ぼくの耳でも後者に聞こえる。

全体的な歌詞を見た感じ、イカれた野郎が覚醒したみたいな?「彼女が僕の名を呼ぶのが聞こえたー!」つってますけども、「And I know that she's long dead and gone」ですからねえ。キャー‼️

そして「my mind split open」って言いながらまた鳴らし始めるギターノイズが超かっこいい。モーリン・タッカー氏に若干後ろめたさは感じつつ…

そして、目玉のラストになる6曲目が「Sister Ray」だ。この曲がブロックされてしまうのは、歌詞が不適切だと判断されたからじゃないでしょうか(バージョン違いで生存しているヤツもあるのは不可解だけど)。ちゃんと聞けばそもそも歌詞の世界が不適切だし、登場人物の挙動が不適切だし、状況が分からなくても不適切な単語があるし(ding-dong!)。

この曲の世界はなんだか乱交の様子っぽい。そしてやっぱり薬物も絡んでるみたい。「あそこをしゃぶるので忙しい」みたいなこと何回も言うし。

歌詞がかなり多いので、あまり紹介できないけど例えば「I'm searching for my mailline」ってのもドラッグの描写らしい。「mainline」ってweblioで調べたら

main line
máin líne
名詞可算名詞
1a(鉄道の)本線,幹線.
b《主に米国で用いられる》 幹線道路[ルート].
2《俗語》 (麻薬を打つ)静脈.
https://www.google.co.jp/amp/s/ejje.weblio.jp/content/amp/mainline

ちゃんと載ってた。明日使える英語フレーズ!ではないですけど、勉強になりますね。

あと中盤で、「水兵を待ってる」みたいなこと言ってたのに、いざ来たら打ち倒しちゃってます。そして語り手はカーペットが汚れることを厭っているだけです。ジャンキー怖え…

歌詞の後半、「誰がドアをノックしてんだ?警察なのか?」みたいなの出てきて逮捕オチかと思ったら、また繰り返します。暇じゃねえんだと。しゃぶられんので忙しいんだと。退廃的ぃ!

そういえば村上龍の「限りなく透明に近いブルー」もこんな乱交シーンありましたね。そんなことを思い出したのは、私が持っているヴェルヴェッツ本に村上龍とルー・リードの対談が載っているからなんですが。

あの小説は、終始ドラッグについての描写がありますし、暴力的な描写も割と多いです。中盤での米軍だかの黒人たちとのパーティー(乱交)のシーンはなんだか読んでいて嫌になるものでした。初めて読んだのは中2だか中3だかだったと思うのですが、可哀想だなーと。AVでガチレイプ感を思わせるやつを見た時のような(?)。

改めて読んでも際どいです。中学生のときの自分、こんなの読んでたのかと思って、ちょっと引きました。。。

今ちゃんと通読した方が暗い気持ちになれそうです。初読の時は比較的性的なシーンに目を取られていた気がしますが、改めて読むと、暴力シーンとかが結構生々しく感じられました。

まとめ

…本の話に脱線したところで、そろそろ終わりましょう。

Apple Musicの運営さん、どうか僕に自由な「Sister Ray」の権利をください。恵みをください。さもなくば、Spotifyに乗り換えるかもしれません。なんだかんだ4、5年ほどApple Musicを使ってるので愛着はあるんですけど…

あとこの際不満なところを吐き出すんですけど、Apple Musicの歌詞の間違い酷くないですか?この前相対性理論の「チャイナアドバイス」って曲の歌詞が、「精液を手玉にとっちゃいな」ってなってましたけど、「さあ浮世を手玉にとっちゃいな」ですよね?あれはかなり仰天しました。

運営さん大変でしょうから菓子折りの一つや二つでも持って行けたら…と思うんですけど…まあとにかく…頑張ってください…1人の音楽乞食の戯言でした…………………………




いいなと思ったら応援しよう!